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第8Flower Garden











★ヤナギ(柳)

 ヤナギはヤナギ属の植物の総称ですが、
 普通はシダレヤナギを指します。

 シダレヤナギは中国原産で、樹高は20m以上になり、
 長い枝を下垂させて、よく知られた樹形を形作ります。

 春に新葉によく似た地味な花を咲かせます。

 ヤナギは生命力のある植物なので、
 古くから神秘的な力を持つとされてきました。

 また日本では、シダレヤナギの木陰に
 幽霊が現れると考えられてきました。



 黒部地方に伝わる伝説です。

  ある山深い峡谷に、
  「夫婦柳」と呼ばれる大きな2本の柳がありました。

  そのうちの一本を切り倒すことになり、
  16人の木こりたちが総出で大きな柳を切り倒しました。

  ところがその直後から、木こりたちは気分が悪くなり、
  近くの山小屋で休むことにしました。

  しばらくすると一人の美女が現れ、
  笑いながら木こりたちの上を通り過ぎていきます

  その後、16人の木こりたちは狂い死んでしまいました。

  村人たちは夫婦柳の祟りだと恐れ、
  この谷を「16人谷」と呼んで、誰も近づかなくなりました。



 ヤナギの花言葉は『愛の悲しみ、わが胸の悲しみ』です。







★フキノトウ(蕗の薹)

 4月になってもまだ、雪深い奥山では、
 やっと雪が解けた辺りでフキノトウが顔を見せました。

 フキノトウはフキの花芽で、
 ほろ苦い早春に味として知られています。 

 花は雄雌異株、黄色の小さな花をたくさんつけ、
 直径3〜8センチくらいの球状をしています。

 大きくなると長い葉柄がキャラブキになります。 


 アイヌに伝わる話です。

  神の国に住む女神は、
  いつも人間に国が気になっていました。

  ある日、家族の留守を見計らって、
  正装して、人間の世界に舞い降りました。

  女神はうれしくて、山の上で舞い踊り、
  激しく振った手から大風を起こしてしまいました。

  女神の起こした大風は人間に世界を荒らし、
  女神は驚いて神の国に逃げ帰りました。

  この出来事を知った女神の兄が激怒し、
  女神を地下に国に追放しました。

  女神は厳しい冬を6年間、地下で過ごして、
  やっと地上に出たときには、
  女神の姿はフキノトウになっていました。
  


 フキノトウの花言葉は『愛嬌』です。






★カトレア

 カトレアは南アメリカ原産のランの代表種で、
 コロンビアの国花になっています。

 ランの女王ともいわれ、
 純白のウェディングドレスに身を包んだ花嫁のブーケとして
 もっともふさわしい花といわれます。


 イギリスの女流詩人の詩です。


    何百本の薔薇より

    何千本のデージーより

    何億本のカーネーションより

    わたしは欲しい

    一輪のカトレアを

    ……カトレアを胸に挿したあなたとともに

    歩むとき

    その瞬間がわたしは欲しい 

 


 カトレアの花言葉は『あなたは美しい、優美な貴婦人』です。






★ワスレナグサ

 ワスレナグサの仲間は世界に約50種ほどあり、
 4月の終わりから5月にかけて可憐な花を咲かせます。

 よく知られているのはヨーロッパ原産のTrue forget me notや、
 ユーラシア大陸に広く分布するエゾムラサキ(Wood forget me not)です。

 ワスレナグサのくるくる巻いた花穂はサソリ状花序と呼ばれ、
 ほどけながら蕾を開きます。

 蕾は赤い色をしていますが、花が開くと青色、
 そしてしぼむ頃にはまた赤くなります。   


 キリスト教に伝わる話です。

  アダムは神から、エデンの園に生きる全ての生き物に
  名前をつけるように命ぜられました。

  アダムの仕事が終わると、神はアダムとともに、
  「あなたの名前は?」と生き物たちを訪ねて回りました。

  すると生き物たちは深々とおじぎをして、
  よい名前をいただいたことを感謝しました。

  ところが隅で、青ざめて震えている花がありました。

  神が尋ねました。

  「一体何を恐れているのか?」

  青ざめた花は答えました。

  「あまり難しい名前だったので、忘れてしまったんです。」

  実はこの花はスコルピオイデス(サソリの尾)という
  名前をもらっていました。

  神は微笑みながらいいました。
  
  「あなたの名前はワスレナグサにしよう。」 




 ワスレナグサの花言葉は『私を忘れないで、真実の愛』です。







★ヤマツツジ

 ヤマツツジは北海道から九州までの山野に分布する、
 落葉または半常緑の低木です。

 ツツジといえばこのヤマツツジを指すぐらい普通に見られ、
 色も鮮やかな赤色で、遠くからでもよく目立ちます。

 また、日当たりがよければあらゆる場所に生えます。


 中国・東北地方の朝鮮族に伝わる話です。

  昔、国王は毎年一人の娘を選んで、
  天を祭る犠牲としていました。

  ある年、兄と妹2人暮らしの家に国王の白羽の矢が立ち、
  それから逃れるために、兄妹は山の中に隠れました。

  そこで一人の白髪の老人に出会い、
  無敵の白い馬と宝の剣をさずかりました。

  兄妹はそれをたずさえて国王の城に攻め込み、
  城を占拠したのですが、国王には逃げられてしまいました。

  その夜、兄妹は疲れて寝込んだ隙に、
  忍び込んできた国王の兵隊にとらえられ、
  妹はその場で殺されてしまいました。

  見せしめのため、兄は村人の前で処刑されることになり、
  山を越えて村まで連行されました。

  途中で兄の手足は傷つき、
  流れる血で山のあちこちが赤く染まりました。

  そして、兄は村に着く前に息絶えてしまったのです。

  やがて兄の流した血の後に、赤い花が咲きました。
  これが朝鮮語でチンダルレと呼ばれるヤマツツジの花です。
  


 ヤマツツジの花言葉は『燃える思い』です。






★ヤマブキ

 ヤマブキは日本や中国の産地に自生する落葉低木で、
 春の花木として親しまれています。

 明るい黄色の花を咲かせ、
 大輪や半八重、八重咲き、白花など、
 多くの園芸品種もつくられています。  


 万葉の歌です。


  − 山吹が にほえる妹(いも)が 朱華(はねず)色

             赤裳(あかも)の姿 夢に見えつつ −



  ( ヤマブキのように美しいあなたの、

      朱華色の赤い裳の姿を、幾たびも夢に見ました )       



 ヤマブキの花言葉は『気品』です。







★フジ(藤)

 フジは古くから日本人に愛されてきた花で、
 長く垂れさがる薄紫色の花房は印象的です。

 フジにはノダフジ(フジ)とヤマフジがあります。

 ノダフジは花房がときに1mを超すほど長くなり、
 蔓は左肩上がりの左巻きです。

 一方、ヤマフジは花房が短くて、
 蔓は右肩上がりの右巻きです。

 ノダフジとヤマフジは日本特産ですが、
 中国にはシナフジ、アメリカにはアメリカフジがあります。


 日本の昔話です。

  春の日、一匹の猿と美しい娘が手を取りあって、
  山道を歩いていました。

  猿は娘の父親との賭に勝ち、
  娘を花嫁にして帰るところです。

  「なあ、男が生まれたら、どういった名にしよう」

  「サル殿の子だから、猿沢とつけましょう」

  「女の子が生まれたら、どんな名にしよう」

  「フジが花盛りなので、お藤にしましょう」

  そして娘は川辺に咲いているフジの花を指さして言いました。

  「あのフジの花がほしい。いえ、もっと先の、もっと先」

  猿は枝の先の先まで進みましたが、
  背負っていた娘の重い荷物が災いし、
  ついには急流の中の落ちてしまいました。

  「猿沢や猿沢や お藤の母が泣くぞ かわいや」

  猿は辞世をよみながら、そのまま流されていきます。      

  娘はすぐに家に逃げ帰りました。


 
 フジの花言葉は『歓迎、恋に酔う』です。







★ジュンサイ

 ジュンサイは日本全国に分布するスイレン科の多年草で、
 やや貧栄養のため池に生育します。

 5月の終わり頃から夏にかけて、
 暗赤色の特徴ある花を咲かせます。

 また若芽や若葉は粘液を分泌しているので、
 「潤菜」と呼ばれるようになりました。

 粘液に覆われた若葉はツルリとした食感があり、
 食材として利用されています。


 群馬県榛名湖に伝わる伝説です。

  ひとりの男が榛名湖で釣りをしていると、
  湖の中から美しい娘が姿を現し、
  一本の釣り糸を男に差し出しました。

   − 私はジュンサイの精です。この湖には大きな鯉がすみ、
     水の中にあるジュンサイを食べ尽くしています。

     この糸は先祖から伝わる強い糸なので、
     きっとあの鯉も釣り上げることができます。

     どうかあの鯉を釣って、私たちを助けてください。 −
     
  男はジュンサイの精に鯉を釣ることを誓い、
  その糸をつけた釣り竿で釣りをはじめました。

  すると巨大な鯉が針にかかりました。

  鯉が暴れても糸は切れなかったのですが、
  鯉の尾が男の乗った小船にあたり、
  小船は男もろとも沈んでしまいました。

  それ以来、榛名湖には
  ジュンサイが生えなくなったといわれています。

  
 
 ジュンサイの花言葉は『清浄』です。






★シラン(紫欄)

 シランは日本から中国大陸にかけて分布し、
 当たりの良い原野の湿原や草地に自生するランです。

 丈夫で手軽に育てられるため、
 庭などのよく植えられています。

 シランの地下茎は漢方薬の「白及(びゃくきゅう))になり、
 止血や解毒、腫れ物の治療などに使われます。



 私の好きな高浜虚子の歌です。


   − 吾知るや雑葉園に紫蘭あり −

  
 
 シランの花言葉は『お互いを忘れないように』です。

 





★トケイソウ(時計草)

 トケイソウは南米ブラジル原産の多年草で,
 花の形が時計の文字盤,
 雌しべが長針・短針・秒針の3本の針に見えるので,
 「時計草」という名前がつきました。

 聖職者や病人などが,不思議な力を持つ花として,
 探し求めていたといわれています。

 南米のジャングルで,スペインの宣教者がこの花を見た時,
 雌しべが十字架に張り付けられたキリストに見えたことから,
 「パッション(キリスト受難)フラワー」と呼ばれています。


 作家・澁澤龍彦さんの『フローラ逍遥』からです。


  − トケイソウの裂けた葉は刑吏の槍に,
    のびた巻きひげは鞭に見えてきた。

    花の中心にそそり立つ子房の柱は十字架に,
    三本の花柱は,
    キリストの両手足に打ちこんだ三本の釘にそっくりであった。

    五つの葯はキリストの五つの傷痕,雄蘂はかなづち,
    副冠は茨の冠,萼は円光,花の白い部分は純潔,
    そして青い部分は天国にほかならなかった。

    五枚の萼片と五枚の花弁とを合わせた花の周辺の十枚は,
    ペテロとユダをのぞく十人の使徒を思わせた。      −


 
 トケイソウの花言葉は『聖なる愛』です。






★スズラン

 スズランは北海道,本州,九州に生えるユリ科の多年草で,
 花茎の高さは15〜25センチ,
 4〜6月に香りのよい白い鈴のような花を咲かせます。

 スズランは幸福を運ぶ花として,
 世界中から愛されています。 

 また,茎や根には毒性があり,
 イギリスでは心臓に効く薬草として用いられてきました。

 フランスでは「聖母の涙」と呼ばれて,
 5月1日に贈ると,
 相手に幸福が訪れるといわれています。

 ドイツでは花が階段のように咲くので「天国の階段」といい,
 日本では君影草(きみかげそう)と呼ばれています。

 
 アイヌに伝わる話です。

 昔,北海道にある海辺の村に,
 一隻の小さな船が漂着しました。

 船の中には一人の美しい娘が倒れていました。

 村人たちは倒れていた娘を助け出し,
 村で介抱しました。

 やがて娘は元気になり,
 自らの身の上を話し始めました。

 娘は遠く離れた山にある小さな村の娘で,
 不義を働いたために海に流されたということです。

 やがて村の若者達は,
 娘の美しさに魅せられ,誰もが娘に夢中になりました。

 若者達に振り向かれなくなった村の女達は,
 娘を恨み,やがて集団で娘を襲って殺し,
 川に投げ捨ててしまいました。
 
 その時に娘が流した涙が,
 やがて美しいスズランの花になりました。



 スズランの花言葉は『純愛』『幸せを取り戻す』です。






★クリ(栗)

 クリは日本各地の山野に自生し,
 果樹としても広く栽培されています。

 野生種のシバグリ,栽培用のタンバグリなど,
 多くの品種があります。

 6月頃,淡黄色で独特の匂いがある花穂をつけます。


 万葉集の歌です。

  
  − 三栗の 那賀に向へる 曝井(さらしゐ)の

            絶えず通はん そこに妻もが − 



  ( 那賀の方に向かって流れる曝井の泉が絶えることがないように,

    私も通い続けます。きっと佳い人がいるから…… )



 クリの花言葉は『公平に判断せよ』です。






★ベニバナ(紅花)

 ベニバナのアラビア原産のキク科植物で,
 日本へは6世紀半ばに渡来しました。

 花は2,3日で咲き,
 花が終わる頃には濃い朱色に色変わりします。

 花からとった紅は
 古くから女性の口紅に使われてきました。

 また,平安時代には衣装を染める染料に,
古代エジプトではミイラの防腐用にも使われました。

 種子からは良質の油がとれるので,
 近年では食用油としての需要が多くなっています。

 
 万葉集の歌です。


  − 外(よそ)のみに  見せつつ恋せん  くれなゐの


       末摘花(すゑつむはな)の  色に出(い)でずとも − 




 ( 遠くから見て恋い慕っているだけで,幸せです。

   紅の花のように,色に出したり,顔に表さなくてもいいのです。 ) 



 ベニバナの花言葉は『特別な人』です。







★ジギタリス

 ジギタリスは人の背丈ほどもあり,
 ピンク,白,クリーム色などのベルのような花を
 縦にいくつも咲かせます。

 花弁の内側には細かな点があり,
 独特のあかぬけた雰囲気を持つ花です。

 葉にはジギトキシンという成分が含まれ,
 ジギタリンという心臓病薬の原料になります。

 古くから薬用として栽培されてきましたが,
 誤って使用すると心臓麻痺を起こす毒草でもあります。

 
 アイルランドのお話です。

  いたずらばかりして,
  みんなを困らせる妖精がいました。

  誰も妖精の相手をしないので,
  妖精は一層いたずらを繰り返します。

  見かねた神様が,
  妖精をジギタリスに変えてしまいました。

  やがてジギタリスは美しい花を咲かせましたが,
  その花は毒を持っていました。  
    


 ジギタリスの花言葉は『不誠実』『熱愛』です。






★イワタバコ

 山野の沢筋などの湿り気のあるところに自生し,
 夏に紫色で星形の花を咲かせる多年草です。

 岩壁に生え,葉が大きくてタバコの葉に似ていることから,
 イワタバコという名前がつきました。

 若葉は食用になります。


 万葉の歌人・柿本人麻呂の歌です。



  − 山ぢさの 白露しげみ うらぶるる
    
               心も深く あが恋止まず −



  「 ヤマヂサが白露の重みでうなだれていますが,

    私の心も同じです。それでもあなたが恋しいのです。 」



 イワタバコの花言葉は『涼しげ』です。







★ユリ(百合)

 ユリの仲間は北半球に100種ほどあり,
 日本には13種類が自生しています。

 日本のユリは鑑賞価値の高い原種が多く,
 古くから切り花や薬用,食用として珍重されてきました。

 近年では,日本産のユリがヨーロッパで改良されて,
 多くの美しい園芸品種を生み出しています。


 聖書の話です。

  アダムの妻・イブは,
  蛇にだまされて禁断の果実を食べてしまいました。

  そしてエデンの園を追放されたのです。

  その時にイブが流した涙が,
  地上に落ちて百合の花になりました。
  


 ユリの花言葉は『威厳』『純潔』です。






★アザミ

 日本の野山を彩るアザミは,
 古くから日本人に親しまれてきた植物です。

 アザミは日本全土に広く分布し,
 海岸から高山まで多様な環境に適応しています。

 日本には100種以上のアザミがあり,
 そのうち95種以上が日本の特産種です。

 まさに日本は「アザミ王国」といえます。


 『あざみの歌』を紹介します。 

 この歌は昭和20年に復員してきた横井弘さんが,
 アザミの花に理想の女性像を重ねて,
 疎開先の霧ヶ峰八島高原で詩をつくりました。

 八島高原にはこの歌の歌碑が建っています。
 

   山には山の 愁いあり
   海には海の かなしみや
   ましてこころの 花園に
   咲きしあざみの 花ならば

   高嶺(たかね)の百合の  それよりも
   秘めたる夢を ひとすじに
   くれない燃ゆる その姿
   あざみに深き わが想い

   いとしき花よ 汝(な)はあざみ
   こころの花よ 汝はあざみ
   さだめの径(みち)は 果てなくも
   香れよせめて わが胸に



 アザミの花言葉は『独立』『厳格』です。






★ハス(蓮)

 ハスは古い時代に中国から渡来した水草で,
 原産地はインドといわれています。

 ハスという名前は蜂巣の略で,
 果実の入った花床が蜂の巣に似ていることによります。

 仏教では,泥の中から清らかな花を咲かせるので,
 肉欲や物欲などを超越した純粋性を持つ,
 極楽浄土の象徴といわれています。


 ヒンドゥー教のお話です。

  ヴィシュヌ神の妃・ラクシュミは
  シヴァ神を祭るために,
  千の蓮の花を捧げてきました。

  ところが蓮の花が2つ,無くなっていました。

  困ったヴィシュヌ神は
  ラクシュミを見ながらいいました。

  「あなたの乳房は蓮のように美しいのに。」

  するとラクシュミは自らの乳房を刃物で切り取り,
  蓮の花の代わりに捧げました。

  ラクシュミの献身的な行動に感動したシヴァ神は,
  切り取られた乳房が地面につくことがないよう,
  聖なる木に実るようにしました。
 


 ハスの花言葉は『救ってください』です。






★ヒシ

 ヒシは日本全国の池や沼で,
 普通に見ることができる一年草の水生植物です。

 花は6月頃から次々と晩夏まで咲き続け,
 花後には水中に沈んで実をつけます。

 若い実はそのまま食べられ,
 成熟した実は湯がくと食べられます。


 旅先で夫を想う女心を歌った
 柿本人麻呂の歌です。


  − 君がため 浮沼の池の 菱摘むと

         我が染めし袖 濡れにけるかも −



  ( あなたにあげるために,泥深い沼で菱の実をとろうとして

     私の色染めにした着物の袖は濡れてしまいました )
 


 ヒシの花言葉は『秘めた思い』です。






★トリカブト(鳥兜)

 トリカブトの仲間は北半球の寒帯や暖帯に約300種が分布し,
 日本には30種ほどが自生しています。

 花は鳥の頭や兜のような形をしていますが,
 この形は特定のハチだけに蜜を吸わせ,
 花粉を運ばせるために進化したものといわれています。

 また,トリカブトは毒草としても有名です。
 根にはアコニチンなどのアルカロイドを含み,
 これは植物の中ではもっとも強い毒です。

 トリカブトの毒が体内にはいると,
 けいれんや幻覚,呼吸麻痺を起こしますが,
 一方では漢方薬としても使われています。


 ギリシア神話です。

  冥界の番犬・ケルベロスは,50もの頭を持つ恐ろしい犬で,
  3つの頭には背筋から尾にかけて蛇が生えています。

  冥界の王ハデスのお気に入りのペットで,
  ステュクス河の冥界側に鎖でつながれています。

  それは生者がハデスの地に入ってくれない様に,
  また死者が冥界から逃げ出さないように見張るためです。

  そして捕まった者はケルベロスに食べられてしまいます。

  ある時,英雄・ヘラクレスはケルベロスと戦い,
  ケルベロスを素手でつかんだまま地上に連れ出しました。

  まぶしい太陽の光に驚いたケルベロスは,
  太陽に向かってほえ続けました。

  その時に落ちたケルベロスの唾液が,
  猛毒を持つ妖花・トリカブトになりました。



 トリカブトの花言葉は『復讐』です。





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★サボテン

 サボテンは北米大陸のカナダ南部を北限に,
 アメリカ・メキシコ・中米・南米大陸にまたがる
 南北アメリカ大陸に自生しています。

 サボテン科に属する植物は2500もの種類があり,
 砂漠などの乾燥地帯に自生しています。

 乾燥に耐えるように葉・茎・根などが厚くなり,
 そこに水分や養分をたくわえる植物です。



 『サボテンの花』(財津和夫作詞・作曲)です。

 
  ほんの小さな出来事に 愛は傷ついて
  君は部屋をとびだした 真冬の空の下に
  編みかけていた手袋と 洗いかけの洗濯物
  シャボンの泡がゆれていた 君の香りがゆれてた

  たえまなくふりそそぐこの雪のように
  君を愛せばよかった
  窓に降りそそぐこの雪のように
  二人の愛は流れた

  思い出つまったこの部屋を 僕もでてゆこう
  ドアに鍵をおろした時 なぜか涙がこぼれた
  君が育てたサボテンは 小さな花をつくった
  春はもうすぐそこまで 恋は今終わった

  この長い冬が終わるまでに
  何かをみつけて生きていこう
  何かを信じて生きてゆこう
  この冬が終わるまで

  この長い冬が終わるまでに
  何かをみつけて生きていこう
  何かを信じて生きてゆこう
  この冬が終わるまで

  ラララララ・・・



 サボテンの花言葉は『枯れない愛』です。





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★キキョウ(桔梗)

 キキョウは東アジア原産の多年草で,
 美しい紫色で,星形の端正な花冠の花を咲かせます。

 秋の七草のひとつに数えられていますが,
 実際には,夏の盛りから花を咲かせます。

 梅雨時に咲く五月雨桔梗があり,
 4月の誕生花のひとつにもなるなど,
 春から秋にかけて,長い期間親しまれる花です。


 桔梗御前にまつわる伝説です。

 平将門の愛妾であった桔梗御前は,
 夫を裏切ってしまいました。

 敵である藤原秀郷に,
 将門の隠れ場所を教えてしまったのです。

 ついに将門は討たれてしまい,
 将門を裏切った桔梗御前も口封じのために,
 秀郷に殺害されてしまいました。

 桔梗御前が殺害された土地には,
 御前の恨みがいつまでも残り,
 キキョウを植えても
 決して花が咲くことはありませんでした。

 その場所は,今でも
 桔梗塚や桔梗ヶ原という名で残っています。


 キキョウの花言葉は『誠実』です。






★ナンバンギセル(南蛮煙管)

 ナンバンギセルはハマウツボ科の一年草で,
 ススキやサトウキビの根などに寄生する寄生植物です。

 秋になると,葉のわきから十数センチの花柄を直立し,
 その咲きに淡紫色の花をつけます。

 ナンバンギセルという和名は,
 オランダ人のくわえたパイプから名付けられたそうです。

 万葉人はススキのそばで,小首をかしげて咲く姿から,
 「おもいぐさ」と名付けました。


 万葉集でただ一首だけ詠まれている,
 ナンバンギセル(おもいぐさ)の歌です。


  − 道の辺の 尾花が下の 思ひ草

            今更々に 何をか思はむ −



  「 道の辺の尾花の下の思い草のように,

    今さら,更に私が何を思いましょうか。(心は決まっています)」             



 ナンバンギセルの花言葉は『ひたむき』です。







★カラスウリの仲間

 カラスウリの仲間は黄色や赤色の実がよく知られていますが,
 花の美しさは意外と知られていません。

 小さな蕾の中から,
 純白のレース編みのような花を咲かせます。

 ただ花は日が暮れて咲くため,朝には萎んでしまい,
 ここから花言葉が付けられました。

 秋の終わりには,実の中に
 カマキリの頭のような種子ができます。

 打ち出の小槌に似た形のものを「大黒様」といい,
 財布に入れておくとお金に不自由しないそうです。


 宮沢賢治『銀河鉄道の夜』の一節です。


  − 今夜はみんなで 

    烏瓜(からすうり)のあかりを 川に流しに行くんだって −  



 カラスウリの花言葉は『男嫌い』です。






★ハギ

 ハギは秋の七草のひとつで,多くの自生種があり,
 観賞用として庭などによく植えられます。

 生え芽(はえぎ)が転じて,
 ハギという名前になったといわれ,
 冬には全部刈り取っても春には芽を出し,
 秋にはたくさんの花を咲かせます。

 ハギは万葉集で最も多く歌われている花で,
 141首もあります。 
 

  − 秋萩の 咲き散る野辺の 夕露に

        濡れつつ来ませ 夜は更けぬとも −


  「秋の萩が咲き,野辺の夕露に濡れながら会いにいらして。

   夜は更けてしまったとしても……」      



 ハギの花言葉は『前向きな恋い』です。






★ソバ(蕎麦)

 ソバの仲間は野生種を含めて十数種類あり,
 天災で畑の作物が育たないときや,
 痩せた山の荒れ地などでも立派に育つ力強い植物です。

 ソバは中国西部〜中央アジア原産の1年草で,
 古くから栽培されています。

 焼き畑で栽培していた作物の1つで,
 2〜3ヶ月という短期間で生長し結実するため,
 飢饉時にもよく栽培されてきました。

 
 蕎麦好きのバイブルといわれる
 杉浦日向子とソ連『ソバ屋で憩う』のあとがきです。


  「ソバ大好きなんですよ!」というひとには二種類あります。

  うまいソバのためには、いかなる悪条件をも乗り越えて、
  ひたすら邁進する求道者型。

  又は、食後に、
  湯上りのようなリラクゼーションを堪能する悦楽主義者型。

  つまり、前者が「ソバ好き」、
  後者が「ソバ屋好き」となります。
  


 ソバの花言葉は『あなたを救う』です。
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