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第9Flower Garden











★オケラ

 オケラは本州・四国・九州に分布する
 キク科の多年草です。

 日当たりのよい林縁や草原に生育し,
 9〜10月に白やピンクの清楚な花を咲かせます。

 古い時代の呼び名はウケラといいます。

 山菜として食べられ,お正月のお屠蘇の材料になったり,
 煙で燻して着物の虫除けにしたり,
 整腸・健胃・頭痛などの漢方薬にもなります。
 
 
 万葉集の歌です。


  − 恋しけは 袖も振らむを 武蔵野の

           うけらが花の 色に出なゆめ −

  
  ( あなたがそれほどまでに思ってくださるのでしたら,
    私の方から袖を振ってお答えします。
    ですから,武蔵野のオケラの花のように,
    恋し合っていることを素振りに出さないでくださいね )
    


 オケラの花言葉は『金欠病』です。






★ススキ

 ススキは日本を代表する草原植物で,
 尾花とも呼ばれる秋の七草のひとつです。

 他の植物との光をめぐる競争に強く,
 つる性の植物にも絡まれにくいので,
 放棄された耕作地や空き地によく繁茂しています。

 また綿の代用品になったり, 
 民家のかや葺き屋根として利用されたりして,
 大変役に立つ野草でもあります。


 日本に伝わる昔話です。

  邪心を持って地上にやってきた天の探女(さぐめ)は,
  アマンジャクと呼ばれ,数々の悪事をしてきました。

  そしてとうとう民衆に捕まえられ,
  大和の国・宇陀の野末に引きずられていきました。

  手足をバラバラにされた探女は,
  野原に捨てられてしまいました。

  このときに野原に流れた一面の血で,
  ススキの根が赤く染まってしまいました。

  ススキの根元は今でも赤く染まっていて,
  出始めの花穂が赤いのも,このときの名残です。



 ススキの花言葉は『心が通じる』です。






★アズキ(小豆)

 アズキは二千年ほど前に,
 中国から渡来したと考えられている栽培種です。

 和菓子のあんや赤飯等に使われる,
 古くから誰もがおなじみのマメです。

 夏の終わりから秋にあけて,
 葉腋に黄色い花を咲かせます。
 
 
 日本各地に伝わる妖怪「小豆洗い」の話です。

  小豆洗いは別名・小豆とぎとも言われる妖怪で,
  日本各地の谷川のほとりや橋の下に出現します。

  川のほとりでショキショキと小豆をとぐような音をさせ,
  その音に誘われると川に落ちてしまいます。

  ときには歌もうたいます。

  − 小豆とごうか,人とって食おうか,ショキ,ショキ −




 アズキの花言葉は『一攫千金』です。






 ギンモクセイは中国原産の常緑小低木で,
 キンモクセイにくらべて背が低く,葉の鋸歯が明瞭です。

 また,雌雄異株で雌株が日本にないので,
 実をつけることはありません。

 そのため挿し木によって増やしています。

 10月になると,
 枝に白い小さな花をたくさん咲かせます。

 キンモクセイと比べると,
 控えめなよい香りがします。


 中国に伝わる民話です。

  昔,山奥に母親と2人の娘が住んでいました。

  ある日,化け物が母親を食べ,
  その後に化け物は老婆に化けて娘達のところへ行き,
  お母さんが用事で帰れないので自分のところに泊まるように言って,
  娘達を化け物の家まで引っ張っていきました。

  姉と妹は別々の部屋へ寝かされ,
  物音に気付いた姉が妹の部屋を覗いてみると,
  化け物が妹を食べていました。

  姉は急いで,化け物の家から逃げ出しました。

  化け物は姉を捜し回りました。

  やがて山道を走っていた姉は化け物につかまりそうになり,
  姉は夜空に輝く月の神に助けを求めました。

  娘をかわいそうに思った月の神は,
  ギンモクセイの木に銀の鎖の一方を結んで,
  もう一方を地上に下ろして姉を引き上げました。

  そして今度はわら縄を同じ様に下ろしました。

  姉を追って,化け物が縄を伝って登ってきた時,
  月の神は縄を切ったので化け物は墜落してしました。



 ギンモクセイの花言葉は『高潔』です。






★キンモクセイ

 キンモクセイは中国原産の常緑小高木樹で,
 主に庭園に植栽されています。

 10月にオレンジ色の小さな花をたくさん付け,
 強い芳香を漂わせています。

 この香りは人工的にも作られ,
 芳香剤などに利用されています。

 日本には雄株しか渡来していないので,
 種子はできないとされています。


 小学2年生の作文を紹介します。


  キンモクセイのかおり

   お母さんが
   「まどあけてみて。
   キンモクセイのかおりがするよ。」
   と言った。
   まどをあけると、
   キンモクセイの
   あまくふわふわしたかおりがした。
   にわにすわって
   かぎたくなるような気もちがした。
   お母さんが、花の本を見ると
   「そのかおりは 遠く千里先まで
   とどく。」
   と書いてあった。
   学校にもとどいているかな。



 キンモクセイの花言葉は『謙遜』です。







★イチョウ(銀杏)

 イチョウは高さ30m以上にもなる落葉高木で,
 秋には黄色く紅葉します。

 イチョウの原産地は中国南部で,
 日本には仏教の伝来と共に渡来したといわています。

 雌雄異株で花は短い枝につき,
 雌木には10月頃に黄色い実をつけます。

 臭い実の中身は銀杏(ぎんなん)といい,
 食用にされています。

 また,葉や種子は漢方薬として利用されています。


 与謝野晶子の和歌を紹介します。


    − 金色の 小さき鳥の 形して

          銀杏散るなり 夕日の丘へ −




 イチョウの花言葉は『長寿』です。






★フジバカマ

 フジバカマは秋の七草のひとつで,
 中国では香草としてよく知られています。

 中国原産のキク科の多年草で,
 高さ1メートルくらい,
 8〜11月に白色〜薄紅色の花を咲かせます。

 奈良時代に渡来したといわれ,
 今では関東以西の川岸などに見られますが,
 野外で見ることは稀で,
 ほとんどが園芸用に育てられているものです。

 
 万葉集にある山上憶良の歌です。


  − 秋の野に 咲きたる花を 指(および)をり

         かき数ふれば 七種(ななくさ)の花 −


  「秋の野に咲いている花を,指折り数えてみると,七種の花だよ。」



 フジバカマの花言葉は『あの日を思い出す』です。







★キク(菊)

 キク属は世界に200種ほどあり,
 日本でもノジギクやハマギクなどが自生してます。

 秋を彩る代表的な花で,
 「九」の数を最高とする中国では,キクを九花と呼んでいます。

 また,キクは独特の香気をもち,
 中国では不老長寿の薬草とされてきました。


 伊藤左千夫の『野菊の墓』です。

  僕は一寸脇へ物を置いて,野菊の花を一握り採った。

  民子は一町ほど先へ行ってから,気がついて振り返るや否や,
  あれツと叫んで駆け戻ってきた。

  「民さんはそんなに戻ってきないッたって僕が行くものを……」

  「まア政夫さんは何をしていたの。私びッくりして……
   まア綺麗な野菊,政夫さん,私に半分おくれッたら,
   私ほんとうに野菊が好き」

  「僕はもとから野菊がだい好き。民さんも野菊が好き……」

  「私なんでも野菊の生れ返りよ。
   野菊の花を見ると身振いの出るほど好もしいの。
   どうしてこんなかなと、自分で思う位」

  「民さんはそんなに野菊が好き……
   道理でどうやら民さんは野菊のような人だ」

  民子は分けてやった半分の野菊を顔に押しあてて嬉しがった。 



 キクの花言葉は『高貴』です。






★カキ(柿)

 カキノキの仲間はアジア,南北アメリカ,南ヨーロッパに
 約480種あまりが分布しています。

 果樹として栽培されることがあるが,
 食用にされない種も多くあります。

 日本では古くから多くの品種が栽培されているが,
 どの品種も日本に野生するヤマガキから育成されたものです。

 大きく分けると甘柿と渋柿に分かれ,
 甘柿は北国では寒さで渋が抜けきらないため栽培されない。


 広島県東広島市の長福寺を舞台にした,
 民話「西条柿の由来」です。

  それは,七百四十年もの昔のことです。
  今の西条町寺家の長福寺に良信というお坊さんがおりました。
  それは年もせまった暦仁元年(1239)十二月二十九日の夜のことでした。
  良信さんが寝ている枕元にその長福寺のご本尊である
  薬師如来がお立ちになり,
  次のようなお告げをなさいました。

  「黄金十枚をもって鎌倉の永福寺へ行き,
  その寺にどんな病気にもよく効く薬があるから買って来い」
  というものでした。

  良信さんは早速その旨を手紙に書き,
  黄金十枚をそえ弟子の信常を鎌倉にやることにしました。
  信常さんは二十二日の日時を費やして永福寺に着きました。

  すると永福寺の快雅というお坊さんが
  「いや,こっちにも不思議な霊夢があって,
  あんたの来るのを待っていたんだよ」といって,
  持って行った黄金を受け取ると仏殿に供え,最勝仁王経をとなえ,
  そのあと黄金を下げて見ますと柿の種がついておりました。

  信常さんはその黄金と柿の種をもらって長福寺に帰り,
  良信さんに渡しました。

  ところがその晩,良信さんはまたも夢で
  「その黄金と柿の種をそのまま鎮守堂の脇に埋めよ」
  というお告げを受けました。
  良信さんがお告げの通りにしましたら,その柿の種は芽を出し,
  だんだん大きくなり,七年目にはじめて十二個の実がなりました。
  そのうち一個は熟しましたので良信さんが味わい,
  残りの十一個は皮をむいで干柿にしました。

  やがて秋の陽はこの柿を渋色の美味しそうな干柿にしてくれました。
  良信さんはその内の六個を因縁のある永福寺へ献上しました。

  ちょうどそのころ,将軍藤原頼経公の若君が,
  疱瘡という病気にかかって苦しんでおられました。
  医者よ薬よと手を尽くしましたが,
  さっぱりききめはあらわれませんでした。

  そうしたとき,鎌倉に文元という有名な陰陽師がいました。
  将軍家ではその文元をよんで加持祈祷をさせましたが,
  これとて効果はありませんでした。

  しかし,その文元が,
  これもお告げによって永福寺に良薬があることを知らされ,
  その旨を言上しました。

  早速,使者が永福寺におもむきそのことを告げますと
  「芸州西条長福寺の薬師如来の霊夢によって得られた干柿が
  届いております。良薬というのはそのことでありましょうか」と,
  その干柿を渡しました。

  将軍家では早速その干柿を若君に差し上げますと,どうでしょう,
  薬や祈祷ではどうにもならなかった疱瘡の病がたちまち全快しました。

  全快された若君は,六歳で元服され,将軍になられました。
  世にいう鎌倉幕府第五代将軍藤原頼嗣がこの人であります。

  この功績によって長福寺は
  西条寺家村の中で良田八町を賜うことになりました。
  こうした因縁により柿は最上のものとされ,
  それを西条の地名をもじって「西条柿」と名付けられ,代々,
  将軍家へ献上する習わしになったということであります。



 カキの花言葉は『自然美』です。







★バラ(赤)

 バラは常緑低木ですが,その起源は明かではありません。

 花の女王・バラは各地で約1万種以上の品種がつくられ,
 世界中でもっとも多くの人に親しまれてきました。
 
 ツタンカーメン王の副葬品にバラ模様の衣装があったことから,
 歴史的に見ても古い時代から愛されていたようです。

 ローマ帝国の皇帝ネロはバラを溺愛して,
 バラを飾るために散財したことはよく知られています。


 ギリシア神話です。

  美しいエロスが開き始めたバラにキスをすると,
  中にいたハチが妬んで,その唇を刺しました。

  バラは驚いて,真っ赤になりました。

  激怒した母・アフロディテはハチたちを捕らえ,
  エロスの弓の糸に数珠つなぎにしました。

  ハチを隠していたバラも悪いといって,
  ハチの針を次々と抜き取って,バラの茎に植え込みました。

  それ以後,美しいバラは棘だらけになりました。



 赤いバラの花言葉は『愛情,熱烈な恋』です。








★ポインセチア

 ポインセチアはメキシコ原産の常緑低木で,
 メキシコ大使のアメリカ人,ジョエル・ロバーツ・ポインセットに
 ちなんで名付けられた名前です。

 クリスマスシーズンになると街のあちこちで見かけられ,
 赤い苞と緑の葉のコントラストが華やかです。

 別名 は 「猩猩木」(しょうじょうぼく)で,
 猩猩は中国の想像上の怪獣で,猿のような顔をもち,毛は紅色です。

 ポインセチアは赤い花なので,
 この猩猩にたとえられたようです。


 メキシコの「聖夜の最初の花」のお話です。

  メキシコのある町に,
  ひとりの貧しい少女と幼い弟が住んでいました。

  少女はクリスマス・イヴの日に,
  友達と同じように,
  教会でイエス様に贈り物をしたいと思っていました。

  でも,お金がないので何も買うことができませんでした。

  そこで少女は,幼い弟と一緒に,
  草で小さなブーケを作って,教会へ出かけました。

  少女の贈り物を見た友達は,
  みんな大きな声であざ笑ったりしました。

  少女は恥ずかしくて,ずっと泣きながらうつむいていました。 

  祭壇には,豪華な贈り物がどんどん積み上げられ,
  ついに少女が贈り物を祭壇に置く順番です。

  少女は弟の手をとって,
  祭壇の端に一生懸命つくった草のブーケを捧げました。

  するとブーケは一瞬のうちに姿を変え,
  美しく輝く,赤いポインセチアの花束になりました。



 ポインセチアの花言葉は『祝福する』です。







★フユイチゴ(冬苺)

 フユイチゴは東アジアに分布するバラ科の常緑の小低木で,
 国内では関東地方から西の地方にある
 雑木林やスギ・竹林で普通に見ることができます。

 名前の由来は冬に赤い実がなることからで,
 別名を「寒イチゴ」ともいいます。

 9〜10月に白い花を咲かせ,
 12月になると小さな果実が集まった集合果を熟します。

 果実はもちろん生食でき,
 砂糖と煮詰めてジャムにすると美味しく食べられます。


 林明子さんの『ふたつのいちご』です。

  お母さんがつくったクリスマスケーキには,
  子どもたち3人分の苺,3個しかのっていません。

  かすみちゃんはお母さんとお父さんの苺を探しに,
  かつて苺を見つけた森にひとりで行きました。

  でも,葉っぱだけで,苺はどこにもありません。

  かすみちゃんは森を歩くうち,
  ウサギの子どもに出会いました。

  ウサギの子どもは木の穴から,
  たくさんの果物をカゴに入れていました。
  かすみちゃんが欲しかった苺もありました。

  ウサギはたくさんの果物をカゴに入れようとしたので,   
  カゴから果物がボロボロ落ちていきます。

  「ほら,このハンカチをかしてあげる」

  かすみちゃんはウサギの子どもに
  ハンカチをかしてあげました。

  ウサギの子どもはかりたハンカチにも一杯果物を詰め込んで,
  ピョーン,ピョーンと走っていきました。
  かすみちゃんもいっしょに,ついていきました。

  森の少し奥に小さなウサギの家があり,
  ウサギのお母さん出て来ました。

  ウサギのお母さんはハンカチをかしてくれたお礼を言い,
  かすみちゃんに2個の苺をプレゼントしました。

  森から走って帰ったかすみちゃんは
  ウサギにもらった苺をお母さんに渡しました。

  お母さんは大喜び,
  お父さんや妹・弟もびっくりしました。

  そしクリスマスケーキには
  5個の苺がきれいに並んだのです。 



 フユイチゴの花言葉は『誘惑』です。







★ヤブコウジ

 ヤブコウジは山地の木陰に生える常緑低木で,
 真夏に小さな白い花を咲かせ,
 冬には真っ赤な果実を下垂させます。

 冬に赤い果実を付けす植物のうち,
 マンリョウを万両金,センリョウを千両金,
 カラタチバナを百両金といい,
 ヤブコウジは十両金と呼ばれています。

 またクリスマス・リースの飾り付けには,
 ヤブコウジの赤い果実を使うこともあります。


 万葉集にあるヤブコウジの歌です。


  − あしひきの 山橘の 色に出でよ

          語らひ継ぎて 逢ふこともあらむ −



 「 ヤブコウジの実だって,あんなにはっきりと色づくんですよ。

   私たちも人目を忍ぶのをやめましょう。  

   そうすればいつでも会えるし,話もできます。 」




 ヤブコウジの花言葉は『明日の幸福』です。







★ミカン(蜜柑)

 ミカンには多くの仲間がありますが,
 タチバナと沖縄のシークワーサーが
 日本原産の柑橘類といわれています。

 ミカンの仲間は簡単に交雑して新しい品種ができるので,
 世界中で栽培されています。

 ミカンの原種はインド東部に自生し,
 古い時代に日本に渡来して各地で多くの品種がつくられ,
 ウンシュウミカンやナツミカンも日本で生み出されました。

 ウンシュウミカンは鹿児島県原産で,
 今では暖地で広く栽培されています。


 中国の民話です。

  中国・黄岩地方には黄金色のクジャクがいました。

  ある日,村の木こりが,
  鷲に襲われた黄金色のクジャクを助けました。

  その後,木こりの世話で元気になったクジャクは,
  木こりの庭に一粒の種子を植えていきました。

  種子からは芽が出て,やがて白い花が咲き,
  橙色の美しい果実が実りました。

  木こりはこの果物を村の老人や病人に配り,
  大いに喜ばれました。

  その後,この果実はミカンだとわかり,
  やがては村中で栽培されるようになりました。

  そして黄岩地方はおいしい蜜柑の産地として,
  中国全土で有名になったのです。
     


 ミカンの花言葉は『清純』です。







★ラン(蘭)

 ラン科植物は世界中で約2万種あり,
 熱帯雨林の森には着生種が多数分布しています。

 常緑の多年草が多く,花の形や生態の多様で,
 植物の中でもっとも進化した植物のひとつとされています。

 観賞用として広く栽培され,
 また香料や工芸などにも用いられます。


 ギリシア神話の話です。

 山の精・サテュロスと妖精・ニンフの間には,
 オキリスというひとりの息子がいました。

 オキリスは酒好き,女好きで,
 酔っぱらっては妖精たちを追いかけ回していました。

 ある祝祭の夜,酔っぱらったオキリスは女司祭を犯そうとして,
 護衛官たちによって身体をバラバラにされてしまいました。

 父・サテュロスは息子の再生を神々に願い出ましたが,
 オキリスに情けをかける神はいませんでした。

 ただバラバラの身体では醜すぎるため,
 オキリスを奇妙な形をしたランの花に変えてしまいました。

 そのため今でもランの根を食べると,
 淫乱で粗暴になるといわれています。
 


 ランの花言葉は『美人』です。







★ツバキ(椿)

 ツバキは海岸近くの山野を好む常緑高木で,
 早春,枝先に大きな花をつけます。

 「葉につやのある木」ということで,
 ツバキと呼ばれるようになりました。

 自生種をヤブツバキと呼びますが,
 園芸種には花の色・形が多様な多数の品種があります。
 

 キリシタンに伝わる話です。

  島原の乱が終わった頃,
  ある老夫婦が畑で麦蒔きをしていました。

  そこにひとりの美しい少年が現れ,
  老夫婦に話しかけました。

  「もし役人達が私のことを尋ねたら,本当のことを話してください。
   麦蒔きをしている時に現れ,西の崖の方に行ったと…。」

  老夫婦は不思議に思いましたが,
  しばらくして役人がやってきたので,少年の言うとおりに話しました。

  そして老夫婦が畑を振り返ってみると,
  今まで種を蒔いていた畑は,麦の穂が伸びていました。

  「麦を蒔いている時に通ったのなら,ずいぶん前のことだな。」

  役人はそういうと,去っていきました。

  役人の去ったあと,老夫婦が崖の方を見ると,
  少年が南蛮船に乗って去っていくが見えました。

  少年は天草四郎だったのです。

  その後,天草四郎がいた崖には,
  赤いツバキの花が咲くようになりました。



 赤いツバキの花言葉は『ひかえめな美徳』です。







★バラ(黄)

 バラは常緑低木ですが,その起源は明かではありません。

 花の女王・バラは各地で約1万種以上の品種がつくられ,
 世界中でもっとも多くの人に親しまれてきました。
 
 ツタンカーメン王の副葬品にバラ模様の衣装があったことから,
 歴史的に見ても古い時代から愛されていたようです。

 ローマ帝国の皇帝ネロはバラを溺愛して,
 バラを飾るために散財したことはよく知られています。


 ギリシア神話です。

  昔,ギリシアに
  ローダンテという賢く誇り高き娘がいました。

  ある日,ローダンテは3人の若者に求愛され,
  若者たちは家まで押しかけてきました。

  すぐにローダンテは逃げ,
  若者たちは後を追いかけていきます。

  そして神殿に身を隠したローダンテを追って,
  若者たちも神殿の中に入っていきました。

  神殿に中には美しく高貴なローダンテがたたずみ,
  若者たちは口々に
  「女神をアルテミスからローダンテに変えろ」と叫びました。

  この光景を見ていたアポロンは怒り,
  ローダンテをたちまちバラの木に変えてしまいました。

  その後,バラはローダンテのように美しい花を咲かせ,
  そのトゲは求愛者を近づけなかった証しになっています。
    
  また,あのときの若者は毛虫と蜜蜂と蝶にされ,
  いまでもバラのまわりに集まってきます。
  


 黄色いバラの花言葉は『嫉妬』です。







★サイネリア(シネラリア)

 サイネリアは大西洋・カナリア諸島原産のキク科植物で,
 早春を彩る園芸植物のひとつです。

 正式にはシネラリアが正しいのですが,
 名前がよくないので,普通はサイネリアといっています。

 和名はフウキギク(富貴菊)とか
 フキザクラ(富貴桜)などともいっています。

 花びらに白い輪が蛇の目傘のように見えるので,
 雨の中を散歩する少女の姿を連想します。



 鎌倉佐弓さんの俳句です。



  − サイネリア 待つといふこと きらきらす −




 サイネリアの花言葉は『いつも快活,喜び』です。






★スイセン(黄)

 スイセンはスペインやポルトガル,地中海沿岸原産で,
 その後に世界中に広まり,
 今では日本の早春を代表する花になっています。

 平安時代の伝説では,
 愛する人との仲を裂かれた悲しみから,
 海に身を投げた女性の生まれ変わりで,
 いつも海を見つめながら咲く花といわれています。


 ギリシア神話です。

  大地の女神デメテルの娘ペルセポネは,
  草原の中で白い水仙の花冠をつけて眠ってしまいました。

  その姿があまりに可憐だったので,
  黒馬に跨った冥界の王ハディスが目をつけて,
  ペルセポネを地底にある死者の国にさらっていきました。

  草原にはペルセポネがつけていた水仙の花冠だけが残り,
  白い花の色は黄色に変わっていました。   


 黄色いスイセンの花言葉は『 気高さ』です。


  スイセンの球根は猛毒です。
  毒のある花ほど可憐で儚い花を咲かせますね。







★雪割草

 雪割草はキンポウゲ科の多年草で,
 春の雪解けとともに清楚な花を咲かせます。

 北半球の冷温帯に分散して分布し,
 日本ではオオミスミソウ,ミスミソウ,スハマソウ,
 ケスハマソウが分布しています。


 『雪割草』という歌を紹介します。

 作詞は石本美由起さん,作曲は三木たかしさん,
 唄は原田悠里さんです。


  遅い春でも 根雪は溶ける
  冬の寒さに 耐えて咲く
  雪割草は 私の花よ
  暗い谷間の せせらぎを
  聞いて咲く日を 夢にみる

  梅や桜の 派手さはないが
  そっと咲きたい 山の蔭
  雪割草は 私の願い
  秘めた愛なら あの人に
  咲いて想いを 届けたい

  春を招いて 小さな花を
  咲かす命の 愛らしさ
  雪割草は 私のこころ
  夢をささやく 花びらに
  愛の運命を たくしたい



 雪割草の花言葉は『信頼,忍耐』です。







★キンセンカ(金盞花)

 キンセンカはキク科の1年草で,
 房総,伊豆などのお花畑は早春の風物詩になっています。

 花の色とその盃上に咲く花の形から,
 金盞花(キンセンカ)と呼ばれるようになりました。

 またポットマリーゴルードとも呼ばれ,
 ハーブとして人気が高くなっています。


 中国に伝わる話です。

 かつて中国の恐ろしい病が流行し,
 多くの人が次々に死んでいきました。

 ある日,村の医者の夢に黄金の冠をつけた花の精が現れ,
 東の草原に咲く黄色い花を薬にしなさいといいました。

 村の医師は翌朝,さっそく東の草原に行き,
 そこの咲いている黄色い花を集めて薬にしました。

 この薬を飲んだ病人はみるみる回復し,
 中国に流行した恐ろしい病を克服することができました。

 この黄色い花が金盞花だったといわれています。



 キンセンカの花言葉は『別離の悲しみ,繊細な美しさ』です。







★ネコヤナギ

 ネコヤナギはカワヤナギの仲間で,
 高さは2〜3mになる枝の多い落葉低木です。

 分布は北海道から九州で,
 平地にある渓流の水辺などに自生しています。

 春まだ浅いころ,葉に先立ってふくよかでやわらかな
 銀白色の尾状の花穂(かすい)をつけます。

 ネコヤナギの名は,この花穂に密生する
 絹のような毛を猫の毛に見立てたもので,
 独特の雰囲気が好まれて,春の生け花の花材によく使われます。

 また,エノコロヤナギとも呼ばれています。


 正岡子規の俳句です。


  −  君送る えのころ柳 散る頃に  − 




 ネコヤナギの花言葉は『自由』です。







★ナノハナ(アブラナ)

 ナノハナはヨーロッパ原産の一年草または二年草で,
 変異に富み,多くの栽培植物があります。

 新鮮でつぼみの堅いものは,
 サラダやカラシあえにすると大変おいしく,
 季節になると食料品として店先に並びます。

 京都名物として,
 ナノハナを塩漬けにした「菜の花漬け」があります。
 美しい黄色の菜の花漬けは,
 その色合いから黄金菜と呼ばれます。


 高野辰之作詞,岡野貞一作曲の名曲『おぼろ月夜』です。


  菜の花畑に 入日薄れ

  見わたす山の端 霞ふかし

  春風そよ吹く 空を見れば

  夕月かかりて 匂い淡し



  里わの火影も 森の色も

  田中の小径を たどる人も

  蛙の鳴くねも 鐘の音も

  さながら霞める 朧月夜



 ナノハナの花言葉は『快活さ』です。







★クレマチス

 クレマチスは東アジアの暖帯を中心に300種ほどあり,
 ヨーロッパでは数多くの園芸品種がつくられてきました。

 クレマチス属の学名は「巻きつき登るもの」という意味で,
 クレマチスの仲間の多くがツル性の植物です。

 日本の山野に自生するカザグルマやセンニンソウも,
 クレマチスの仲間です。

 冬,たくさんの羽毛がついた種子が花のように見えるので,
 ヨーロッパのある地域では,
 「旅人の喜び」と呼んでいるそうです。

 
 ロシア・ウクライナに伝わる昔話です。

  コサック人とタタール人の戦いの中,
  恐れをなして逃げ出す部下を見たコサックの司令官は,
  激怒しました。

  そして司令官が自らの額を槍で突き刺し,
  激しい嵐を呼び起こしました。

  コサック兵とタタール兵は共に嵐に巻き上げられ,
  地面に叩き付けられて砕け散ってしまいました。

  砕け散ったコサック人の骨は敵の骨と混じったため,
  コサック人の魂は悲しみながら神に祈りました。

  − 愛するウクライナの地に
    クレマチスの花を咲かせてください。
    その花は娘たちが摘んで花輪にしてくれるでしょう −

  やがてウクライナの地にはクレマチスが咲きました。

  ウクライナでは,腰のベルトにクレマチスを下げれば,
  死んだコサック人はすべて生き返ると
  言い伝えられています。
    


 クレマチスの花言葉は『心の美,高潔』です。

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