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第3Flower Garden











★アネモネ(アネモネ・コロナリア)

 アネモネは地中海原産の美しい花で,
 ギリシア神話にも登場し,色とりどりの可憐な花を咲かせる
 人気の草花です。

 ローマではアフロディテの花といわれて,
 ほかのどんな花よりもヴィーナスの神殿に多く捧げられ,
 花冠や花壇に用いられていたようです。


 キリスト教に伝わる話です。

  司教ウンベルトは,
  聖地パレスチナを目指して船出する十字軍の兵士を
  「自分も聖地を踏みしめたい」と思いながら見送っていました。

  そしてある日,兵士を降ろした船に
  聖地の土を積んで帰ることを思いつきました。
 
  司教の願いはかない,
  さっそく運ばれてきた聖地の土を庭に蒔くと,
  そこから深紅のアネモネの花が咲き始めました。

  殉教者の血を想わせるアネモネの花は奇跡の花と評判になり,
  その種が殉教者によって各地の修道院に伝えられ,
  やがてヨーロッパ中に広がりました。






★ニオイスミレ

 ニオイスミレはヨーロッパ〜西アジア原産で,
 花に強い芳香があり,香料の原料やコサージュに用いるため
 古くから栽培されてきました。

 香りのとりこだった古代ギリシアの人々は
 このスミレの香りを最も愛しました。

 スミレが早春の野に花を咲かせるため,
 よみがえる大地のシンボルとして,
 町に飾られ,詩人の歌われ,結婚式の花冠に編まれました。


  フランスの皇帝ナポレオンは,大変スミレがお気に入りでした。
  
  若い頃にはスミレ伍長とまで呼ばれていました。

  ナポレオンがエルバ島に流されるとき,
  「スミレの花が咲く頃に必ず戻る」と宣言し,
  その言葉どおり,翌春パリに戻ってきました。

  ナポレオンは復活のシンボルとしていつもスミレを身につけ,
  支持者たちもスミレの標章をつけていました。

 
 スミレの花言葉は『誠実』『ひかえめ』です。






★ツルニチニチソウ

 南ヨーロッパ,小アジア原産の常緑半低木で,
 株もとから茎をツルのように伸ばして,株をつくっています。
 
 花は2〜4月にかけてつぎつぎと咲き,
 いっせいに咲くことはありません。  

 ツルとツルが絡み合い,毎日花を咲かせることから
 「ツル日々草」と名前がつきました。

 月の満ちる夜にこの花を採ると,
 病魔を避け,狂気を治すといわれていました。

 イタリアでは死んだ子供をこの花で飾ることから,
 「死の花」ともいわれています。


  思想家のジャン・ジャック・ルソーの話です。

  花好きなルソーが野原を散歩していたとき,
  足もとに咲いたツルニチニチソウの花を見つけました。   

  ツルニチニチソウの葉は,男と女がふたりきりで食べると,
  突然,愛が生まれるといわれています。

  ルソーもまた,30年前の哀しい恋の相手,ド・ワレンと
  野原を散歩した楽しい日々がよみがえってきました。
 

 ツルニチニチソウの花言葉は『楽しい思い出』です。 






★キキョウ(桔梗)

 キキョウは東アジア原産の多年草で,
 美しい紫色で,星形の端正な花冠の花を咲かせます。

 秋の七草のひとつに数えられていますが,
 実際には,夏の盛りから花を咲かせます。

 梅雨時に咲く五月雨桔梗があり,
 4月の誕生花のひとつにもなるなど,
 春から秋にかけて,長い期間親しまれる花でもあります。

 万葉の時代には桔梗は「朝顔」といわれていました。


 万葉時代の歌を紹介します。

 身もだえして,恋の苦しさに死ぬようなことがあるとしても,
 顔になど出すものですか。
 朝顔の花のようには………。


   こいまろび 恋ひは死ぬとも 

         いちしろく 色には出でじ 朝顔の花


 キキョウは,くっきりとした花の姿や鮮明な色合いから,
 心の中を見透かされないようにと思うとき, 
 逆に思い出されていた花でした。






★ヒナゲシ(ナガミヒナゲシ)

 ヒナゲシはヨーロッパ原産の一年草で,
 小麦と共に広がり,ヨーロッパでは小麦畑の雑草として有名です。

 野生のヒナゲシは赤一色なのですが,
 園芸品種には白,ピンク,紅色など色彩が豊富です。

 ナガミヒナゲシは,最近,都市の空き地などで,
 急に見られるようになった帰化植物です。

 同じ仲間のケシは未熟な実から阿片がとれますが,
 葉や茎に毛があるヒナゲシは麻薬成分を全く含んでいません。


  中国の戦国時代,漢と楚(そ)が争っていたときの話です。

  楚の武将・項羽(こうう)は,漢の劉邦(りゅうほう)の
  大軍に囲まれて,落城寸前でした。

  項羽は自分の愛する虞美人(ぐびじん)には生き延びて欲しいと願い,
  虞美人に城を抜け出すようにすすめました。

  しかし,虞美人は「項羽のいない世の中では生きていけない」と答え,
  短剣で自らの胸を刺して,命を絶ったのです。

  その後,虞美人を埋めた塚には一輪の花が咲きました。

  この花がヒナゲシで,虞美人草と呼ばれるようになりました。


 ヒナゲシの花言葉は『慰め』です。










★ソメイヨシノ(桜)

 ソメイヨシノの桜前線が北上中です。

 ソメイヨシノはオオシマザクラとエドヒガンの雑種で,
 花が美しいことから,観賞用として広く植栽されています。

 江戸時代末期に,江戸駒込の染井村の植木商から広まったので,
 ソメイヨシノと名付けられました。

 日本人は大昔から桜の花の美しさを愛でながら,
 一方では何か不気味なものを感じ恐れていました。

 あまりに華やかな,無限に続くような限りない美しさに,
 この世にはない風景を感じていたのです。



 風の文学者・坂口安吾は美しすぎる桜の恐怖を題材にして,
 『桜の森の満開の下で』という物語をつくりました。

 人の首を欲しがる桜の化身のような女と,
 女のために,毎晩人の首をかる盗賊の物語です。

 人の首をかる盗賊さえも,
 桜の花に,得体の知れない不気味さを感じていました。


  花の下では風がないのに
  ゴウゴウと風が鳴っているような気がしました。

  自分の姿と足音ばかりで,      
  花びらがぽそぽそ散るように魂が散って
  いのちがだんだん衰えていくように思われます。






★ムスカリ

 ムスカリはユリ科の球根植物で,
 ヨーロッパ中部からコーカサス地方が原産地です。

 ヒヤシンスの仲間で,3〜4月頃にブドウのような
 コバルトブルーの美しい花を咲かせています。

 ひとつの花穂には,小さなツボを逆さまにしたような花が15〜20個,
 密にびっしりとくっついています。

 英名のグレープ・ヒヤシンスは,ブドウのようなその形状と
 色からきているようです。

 花言葉は『失望』『失意』です。






★エニシダ

 エニシダはマメ科の落葉低木で,地中海沿岸が原産地です。

 日本では園芸植物として知られていますが,
 ヨーロッパでは道端や山野に繁る身近な木です。

 樹皮で網を作ったり,料理に使ったり,
 ビールに苦みをつけたりと,さまざまに利用されてきました。

 花言葉は『謙虚』『卑下』『謙遜』です。


 キリスト教に伝わる話です。

  ユダヤのヘロデ王は,予言で自分を超える王が誕生したことを知り,
  「ベツレヘムにいる幼児を皆殺しにせよ!」と命令しました。

  聖母マリアと夫ヨセフは天使の知らせで危機を知り,
  幼いキリストを抱いて,エジプトへ向けて脱出しました。

  真っ暗な荒野を急いでいると,道端のエニシダの莢(さや)が
  パチパチと大きな音を立ててはじけ,
  追手に3人の居所を知らせました。

  近くにあったネズの枝葉がかくまってくれなかったら,
  3人はきっと捕まっていたでしょう。

  この事件以来,エニシダは,罰として,
  細い枝を集めてほうきにされ,掃除の仕事をさせられています。






★ナガバノタチツボスミレ(スミレ)

 春の花のなかでも,
 スミレは多くの人に親しまれ愛されてきました。 

 スミレという名は,花を横から見たところが,
 大工道具の墨入れに似ているところから名付けられました。

 日本で見られる野生のスミレは90種類あまりです。

 タチツボスミレ類は,地上茎のあるスミレを代表するグループです。

 そのうち,ナガバノタチツボスミレは
 名前のとおり葉が長くなるのが特徴で,西日本に分布しています。


 万葉集にある山部赤人(やまべのあかひと)の歌です。 

  春の野にスミレを摘もうとやってきたのに,
  なつかしさのあまり,野で一晩寝てしまいました。   


   野の春に すみれ摘みにと 来しわれそ

           野を懐しみ 一夜寝にける 






★モモ(桃)

 モモは中国の原産で,生長が早く,たくさん実をつけるので,
 中国では霊力があって,悪鬼や邪気を払う木とされてきました。

 また,中国では,モモは長寿と繁栄にシンボルとされ,
 絵画や陶磁器などの工芸品の図柄としてよく使われています。

 日本にはずいぶん古くに伝わったらしく,
 弥生時代の出土品の中からモモの種子が見つかっています。

 ヨーロッパにはペルシャから入ってきたために
 「ペルシャのリンゴ」と呼ばれています。

  
 古事記に書かれたモモの話です。

  イザナギノミコトは,
  難産で死んだ妻のイザナミノミコトが忘れられず,
  死者の住む黄泉(よみ)の国を訪ねました。

  そこで,イザナギノミコトは,
 「決して開けてはいけない」といわれていた扉を開けてしまったのです。  

  そこには,腐りかけてウジがわいた妻を取り囲んで,
  恐ろしい雷神たちがうずくまっていました。  

  イザナギノミコトは驚いて逃げましたが,
  雷神や多数の黄泉醜女(よもつしこめ)が追いかけてきました。

  追いつかれそうになったとき,
  道端にあったモモの木についている実を3個投げると,
  黄泉からの追っ手はたちまち逃げ去ってしまいました。

  イザナギノミコトはモモに感謝して,
  「これからも苦しんでいる人々を助けておくれ」といいました。

  これ以来,モモは魔よけに使われるようになったのです。


 モモの花言葉は,『私はあなたのとりこ』です。






★ヒトリシズカ(一人静)

 草原でひっそりと咲いているヒトリシズカに出会いました。

 ヒトリシズカは北海道,本州,四国,九州の分布する多年草です。
 山地の林下や,日の当たる草地の生えています。

 春さきに10センチほどの茎を伸ばし,
 その先に4枚の葉をほぼ輪生状につけています。 
 この十字形の葉の真ん中から,花穂を一本立てています。

 ヒトリシズカは,鎌倉時代の悲運の名将・源義経と結ばれた
 舞いの名手・静御前の美しさにたとえて名づけられました。


  源頼朝の命により,壇ノ浦で平家を滅ぼした義経は
  京都の凱旋した後,後白河法皇に接近しました。

  このことで頼朝の怒りをかった義経は,
  逆賊として追われる身となりました。

  義経の吉野の逃避行に従った静御前は,
  義経と別れた後に,頼朝に捕まってしまいました。

  その後,静御前が産んだ義経の子どもは,
  頼朝によって海に投げ捨てられてしまいました。

  釈放された静御前は,奥州平泉に身を寄せている義経を追って,
  侍女と共に平泉に向かいました。

  苦労の末に奥州路までやって来た静御前は,
  旅人から,先月義経が平泉で討ち死にしたことを知り,
  精根尽きて,生きる望みを失いました。

  その後,静御前は剃髪して尼となりました。
  そして義経が死んでわずか3か月後に,
  義経の名を最後に,この世を去りました。
   
  静御前の墓には,誰が建てたのか,義経の碑が並んでいます。
 

 ヒトリシズカの花言葉は『隠れた美』です。






★レンゲソウ(ゲンゲ)

 レンゲソウはマメ科ゲンゲ属の越年草で,
 もともとは中国原産の栽培植物です。

 畑の肥料として植えられていたのですが,
 化学肥料の普及によって畑が減って,
 野生のレンゲソウが少なくなりました。

 イギリスでは,この草を牛が食べるとミルクをだす量が増えるので,
 ミルク・ベッチ(ミルクのスズメノエンドウ)と呼ばれています。


 レンゲソウのまつわるギリシア神話です。

  野原に,祭壇に飾る花を摘みに出かけた少女は,
  美しく咲いているレンゲソウを見つけました。

  少女がレンゲソウを摘むと,
  折った茎から血が流れました。

  レンゲソウはいやな男から逃げるために,
  ニンフ(妖精)が姿を変えたものだったのです。

  「花はみな女神が姿を変えたものだから摘まないで」
  少女はそういい残して,
  レンゲソウに姿を変えてしまいました。
 

 レンゲソウの花言葉は『私の苦しみをやわらげる』です。









★ゲッケイジュ(月桂樹)

 ゲッケイジュはクスノキ科の常緑小高木で地中海沿岸地方原産,
 庭園樹,特に記念樹として植えられています。

 葉や花はシネオールなどの精油を含むため芳香があり,
 古代ギリシアやローマでは厄よけや雷よけとして,
 また浄化の力を持つ木として家の周りに植えられてきました。

 乾燥させた葉はローリエまたはベイリーフと呼ばれ,
 煮込み料理やピクルスの香りづけなどに使われます。

 ゲッケイジュの小枝で作った冠は,
 古代ギリシアで競技勝利者に与えられてきました。

 
 ギリシア神話です。

  太陽神アポロンは,恋の神エロスのことを,
  「子どもが武器をおもちゃにするのはやめろ」とからかいました。

  怒ったエロスは弓を引いて,金の矢でアポロンの胸を,
  鉛の矢で近くにいた妖精ダフネの胸を射抜きました。

  金の矢は最初に見たものを恋する矢,
  鉛の矢は追ってくるものが嫌いになる矢です。

  すぐに恋したアポロンはダフネを追いかけ始めました。

  アポロンに追いつかれそうになったダフネは,
  川の神に「私の姿を隠して」と願ったところ,
  ダフネは一本のゲッケイジュになったのです。

  アポロンはゲッケイジュになってもダフネを愛し,
  競技の勝利者に贈る冠をゲッケイジュの枝で作るようになりました。  
 

 ゲッケイジュの花言葉は『栄光』『勝利』です。






★イチリンソウ(一輪草)

 イチリンソウは,一茎に一輪咲くことから名づけられました。

 花期は4〜5月,日本特産の野草です。

 薄暗い林の中で見るイチリンソウは気高く,
 その美しさに思わずそばによって見入ってしまいます。

 アネモネの仲間なので花びらはなく,
 白い花びらのように見えるのは萼片(がくへん)です。

 この萼の裏側は赤紫色を帯びることがあるので,
 「ウラベニイチゲ」とも呼ばれています。


 中国に伝わる話です。

  幼い子どもを亡くしたある夫婦は,
  その面影を想いだしては嘆き悲しんでいました。

  ある日,夢の中に亡くなった子どもが姿を見せました。

  − 私は今,天で暮らしています。

    短い命は運命ですが,
    ご恩に報いる間がなかったことが心残りでした。

    幸い天帝が両親をなぐさめるようにと,
    この花をくださいました。 

    私と思って大切にしてください。 −

  といって,一輪の花を差し出しました。

  不思議に思って子どもの墓に行ってみると,
  夢の中で渡されたイチリンソウが咲いていました。

  その花は白い中にうっすらと紅がさし,
  まるで幼子がほほえんでいるようでした。 


 イチリンソウの花言葉は『追憶』です。






★ミヤコワスレ(都忘れ)

 ミヤコワスレはキク科の多年草で,草茎は10〜70センチです。

 ミヤコワスレの本当の名前はミヤマヨメナです。

 ミヤコワスレは日本に山野に自生するミヤマヨメナを
 観賞用に栽培したものです。


 ミヤコワスレの物語です。

  承久の乱(1221年)で
  王政復古をめざして敗れた後鳥羽上皇は隠岐に流され,
  第三皇子の順徳天皇は佐渡島に流されました。

  都の優雅な暮らしに慣れた順徳天皇は,
  佐渡島のわびしい暮らしに心まですさんでいました。

  ある日,庭の片隅に一輪の花を見つけました。

  天皇はしばらくこのほっそりとした花に見入り,

   − この気品のある花を見ていると心が落ち着く。    
 
     しばらくの間でも都を忘れることができる。 −
  
  といわれました。
 
  これ以来,この花はミヤコワスレと呼ばれるようになりました。


 ミヤコワスレの花言葉は『別れ』『しばしの憩い』です。






★ヤマブキ(山吹)

 ヤマブキはバラ科ヤマブキ属の落葉低木で,丈は1〜2mです。
 日本から中国にかけてが原産地で,英名はジャパニーズローズといいます。

 花は4〜5月にかけて咲きます。

 ヤマブキの語源は「山黄春」が略されたもの,「山振」の意味からきたもの,
 花の色が蕗(ふき)の花に似ているからなど,諸説があります。

 美しい黄金色をしていることから,谷底に落とした金貨が,
 ヤマブキの花になったという伝説もあります。

 
 日本に古くから伝わる話です。

  ある愛し合う男女がいましたが,
  世間の義理にしばられて,
  お互いにあきらめなければならなくなりました。

  ふたりはそれぞれの面影を鏡に映して,
  鏡に「面影よ,永遠であれ」という祈りを託して
  土に埋めて,ふたりは別れてしまいました。

  しばらくすると,鏡を埋めたところから
  黄金色の花が咲き始めました。

  この花がヤマブキです。


 ヤマブキの花言葉は『気品』『旺盛』です。







★ジャスミン

 ジャスミンはモクセイ科ソケイ属の仲間で,
 旧世界の熱帯から暖帯にかけて,200種以上が知られています。

 インドでは,恋人からジャスミンを贈られると,
 髪に編み込み,変わらない愛のしるしとします。
 このため,ジャスミンは「愛の花」とよばれています。

 ヨーロッパでは,
 「ジャスミンの花冠をかぶるにふさわしい娘は,夫も果報をもたらす」と
 言い伝えられています。

 香りのいいジャスミンティーは,
 ウーロン茶にジャスミンの花をひたしたものです。
  

 イタリアに伝わる話です。

  トスカーナの大公爵は素晴らしいジャスミンを手に入れ,
  誰の手にも渡さないことを心に誓いました。

  大公爵は,若い庭師に対して,
 「このジャスミンは小枝一本でも持ち出してはならない。」と命じました。

  しかし,この庭師はジャスミンの花のあまりのかぐわしさに惑わされ,
  美しい恋人の誕生日に,密かにこのジャスミンの花を恋人に贈りました。

  恋人がジャスミンの花が咲いた小枝を庭に挿したところ,
  立派に根づきました。

  そして,この挿し穂を育てて売り,
  貧しかったふたりは,やっと結婚することができました。

  トスカーナの娘たちが婚礼の日にジャスミンの花冠をかぶるのは,
  このふたりにあやかるためです。


 ジャスミンの花言葉は『愛らしさ』です。    






★ヤグルマギク(矢車菊)

 ヤグルマギクはキク科ケンタウレア属の一年草で,
 原産地は地中海沿岸のヨーロッパ東南部から小アジアです。

 属名のケンタウレアはギリシア神話の半身半馬の伝説上の動物で,
 ヤグルマギクがケンタウロス族の賢人ケイロンの
 足の傷を治したという伝説から名づけられました。

 花の色はピンクや紫,紅,白などもありますが,
 目が覚めるような青紫色が一般的です。

 エジプトの少年王・ツタンカーメンの棺には,
 1本のヤグルマギクが置かれていました。 

 当時,ミイラの棺に生花を入れることは禁じられていましたが,
 幼い王妃がこっそりと入れたものではないかといわれています。
 王妃のツタンカーメン王を慕う気持ちが偲ばれます。

 
 ドイツに伝わるエピソードです。

  ナポレオンがプロシアに攻め入ろうとしたとき,
  ルイーズ皇后は子どもたちをつれて麦畑に逃げ込みました。

  そして王子たちの気持ちを静めるために,
  皇后はヤグルマソウの王冠をつくってあげました。

  その後,王子の一人がウィルヘルム皇帝となり,
  ナポレオン3世をうち破りました。

  そして皇室の紋章をヤグルマソウに決めたのです。


 ヤグルマソウの花言葉は『愉快』『幸福』『独身生活』です。








★スイレン(水蓮)

 スイレンはスイレン科スイレン属の多年生の水草で,
 英名はウォーター・リリーといいます。

 古代エジプトでは,
 スイレンは太陽のシンボルとして神聖視されています。

 スイレンの花からは,日の出の神・ホルスが立ち上がるとされ,
 復活のシンボルとされてきました。


 ドイツの言い伝えです。

  人気のない静まりかえった気味の悪い沼には,
  水の魔物に守られた水の妖精がすんでいます。

  水の妖精は,人が近づくとスイレンに化け,
  通り過ぎるともとの妖精の姿に戻ります。 
 
  スイレンを折って持ち去ろうとする者は,
  水の魔物によって溺死させられるか,
  長い茎に惑わされて水の中に引き込まれてしまいます。

  また,スイレンを見た人は浮気心が静まり,
  こっそり媚薬を盛られても効かなくなります。


 スイセンの花言葉は『清純』『心の純潔』です。