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第1Flower Garden







★スイセン(水仙)

 真冬でもけなげに咲いている清楚な花です。
 雪の中でも咲いているので,″雪中花″とも呼ばれています。

 ヨーロッパの地中海付近が水仙のふるさとで,
 日本には江戸時代に渡ってきたようです。

 ギリシアの詩人ホメロスは,春に命がよみがえるシンボルにしていました。

  スイセンは驚くべき花だ。
  不老不死の神々にも,今世の中を生きている全ての人にも,
  あざやかに輝く高貴な姿を見せてくれる






★ツバキ(椿)

 日本の太平洋沿岸が原産地で,
 17世紀にヨーロッパに渡っていった花木です。

 小説『椿姫』の主人公は,1か月のうちで25日間は白いツバキ,
 5日間は赤いツバキで身を飾っていた社交界の貴婦人でした。

 『私の運命はあなたの手に』という花言葉は,椿姫をたとえたものです。

 赤いツバキには『ひかえめな美徳』,
 白いツバキには『最高の愛らしさ』という花言葉もあります。

 この花言葉は,ツバキに香りがないことからつけられました。








★ナズナ(ペンペン草)

 早春から花を咲かせるナズナは,春の七草のひとつです。
 日本全国で広く見ることができ,道ばたなどにたくさん生えています。
 
 三角形の実のところを少し引っ張って,
 くるくる回すとペンペンと音がすることや,
 実の形が三味線のバチに似ていることから,
 ぺんぺん草という名前が付けられています。

 ヨーロッパでは,実の形が財布に似ていることから,
 「羊飼いの財布」と呼ばれています。
 
 花言葉の『あなたにすべておまかせします』というのは,
 財布を預けることからきているようです。







★パンジー

 パンジーは,スミレの仲間では花が最も大きく,
 イギリスやベルギー,フランスなどで積極的に品種改良が行われ,
 たくさんの品種がつくられています。
 
 寒さに強く,秋から初夏までの公園や花壇には欠かせない花です。

 花の色には3色あり,別の呼び名はサンシキスミレ(三色スミレ)です。
 パンジーが3色になったのは,
 天使がこの花に3度キスをしたためといわれています。

 パンジーには,ほとんど香りがありません。
 昔はパンジーにも,スミレと同じよい香りがあったのですが,
 多くの人がその香りを楽しむためにパンジーを摘んだため,
 神様に「私の香りをなくしてください」と祈ったところ,
 よい香りがなくなったという話があります。

 花言葉は『私を思ってください』です。







★ハルノノゲシ(ノゲシ)

 日本各地の畑や道ばたなどに普通に見られる野草で,
 早春から,黄色い可憐な花を咲かせています。
 暖かい地方ではほぼ一年中花を見ることができます。

 葉が白っぽくて,切ると乳液が出るところがケシに似ているので,
 ノゲシという名前が付いています。

 都会の空き地や舗装道路のそばなど,どこにでも生えているので,
 いつもこの花を見るたびに,
 「雑草のようにたくましく」という言葉は,
 この花のためにあると思っています。

 雑草とは,人がつくり出した人工的な環境にいち早く適応して,
 逆に,そうした環境を利用して繁栄している草花です。







★金のなる木(花月)

 南アフリカのケープ州やナタール州が原産の多肉植物です。
 高さは1〜3メートルくらいの低木で,
 冬から早春にかけて星形の花を咲かせます。

 日本では観賞用の植物として重宝され,
 「金のなる木」とか「成金草」といわれています。

 小さい若葉に5円玉をくぐらせて葉柄にはめると,
 やがて葉が育って抜けなくなります。
 花月の葉は,数年間落ちないので,
 これを次々に繰り返えせば,
 まるでたくさんの5円玉が木になっているように見えます。
 
 こうして花月は,「金のなる木」として日本各地に広がりました。

 花月は寒さに弱く,なかなか野外で花を咲かせることができません。







★ホトケノザ

 早春に,畑の畦や道ばたで普通に見られるシソの仲間です。
 世界に広く分布し,日本でも北海道を除く各地で見られます。

 茎を取り巻くように付いた葉の形が,
 まるで仏様が座る蓮華座(れんげざ)のように見えるので
 「仏の座」という名前が付きました。

 春の七草のひとつに数えられるホトケノザは,
 コオニタビラコというキクの仲間でのことです。
 本当のホトケノザは,とてもまずくて食べられないそうです。

 これほど可憐なホトケノザですが,なぜか花言葉が見つかりません。
 花の形が,ムーミンに出てくるニョロニョロに似ているという人もいます。

 ホトケノザの花に,私は次のような言葉を想いました。
 − ともに生きる喜びを知る − 






★ハコベ

 早春,真っ先に咲き始めるのが春の七草のひとつ,ハコベです。
 1〜2センチの丸く小さな葉の中に,5ミリの小さな白い花が咲きます。

 葉や茎はとても柔らかく,小鳥たちが好んで食べます。
 西洋では,「ヒヨコの草」とか「小鳥たちのハコベ」といわれています。

 植物には珍しくタンパク質が多く,ビタミンB,Cも豊富です。
 小鳥たちも,ハコベがおいしくて栄養があることをよく知っているのでしょう。

 花言葉は『ランデブー』です。
 ヒヨコが,ハコベによく集まってくることからつけられたようです。

 正岡子規も,次のように歌いました。

 − カナリヤの餌に束ねたるハコベかな −







★フキ(フキノトウ)

 頭をもたげていたフキのつぼみがふくらみ始めました。 
 
 フキの茎は地下にあり,花と葉だけが地上に出てきます。
 フキノトウは,フキの地上に出た若い花芽のことです。

 フキの語源は,実はよくわかっていません。
 「汚れを拭くのに使った」とか,「果実が風で吹雪のように散る」と
 いった説もあります。

 フキは,日本原産の古来からある野菜です。
 山野に自生する野生の草で,千年以上も前から栽培されてきました。
 
 花言葉は『私を認めて』です。
 「フキを花として認めて欲しい」という意味でつけられたのでしょう。

 小林一茶の句をひとつ。

  − 草の戸に 春は来にけり 蕗の薹(ふきのとう) −







★サクラソウ(ケショウザクラ)

 サクラソウの仲間は,世界各地に500種以上,日本にも20数種が
 分布する草丈の低い多年草です。

 今回紹介するサクラソウは,プリムラ・マラコイデスです。
 中国雲南省や四川省の原産で,19世紀末から20世紀初めにかけて
 ヨーロッパに渡って品種改良され,現在多くの品種が育成されています。

 早春に咲くサクラソウとして,人気が高い種です。

 ギリシア神話では,
 サクラソウは,花の女神・フローラの息子パラリソスをさします。
 美しい若者であるパラリソスは恋人のニンフに失恋し,
 意気消沈して,ついには死んでしまいます。
 フローラはそんな息子を可哀想に思って,パラリソスの姿を
 春一番に咲くサクラソウの花に変えたといわれています。

 サクラソウの花言葉である『青春の始まりと悲しみ』は,
 こうした物語からつけられたものでしょう。







★ナノハナ(アブラナ)

 ナノハナはヨーロッパ原産の一年草または二年草で,
 変異に富み,多くの栽培植物があります。

 新鮮でつぼみの堅いものは,サラダやカラシあえにすると大変おいしく,
 季節になると食料品として店先に並びます。

 京都名物として,ナノハナを塩漬けにした「菜の花漬け」があります。
 美しい黄色の菜の花漬けは,その色合いから黄金菜と呼ばれます。

 ナノハナは早春に咲き,春を連れてくるような感じから
 花言葉は『快活さ』とつけられています。

 与謝蕪村は,ナノハナをつぎのように詠みました。

  − 菜の花や 月は東に 日は西に −






★ウメ(紅梅)

 ウメは中国原産で,万葉の時代に日本に入ってきました。

 万葉の時代には花といえばウメのことで,
 松竹梅として長寿の象徴にもなっていました。

 『太平記』には,次のような話が書かれています。

 菅原道真の屋敷は,都でも屈指の美しい紅梅があったことから,
 「紅梅殿」とよばれていました。
 
 しかし政争に敗れた道真は,九州・太宰府に流されることになり,
 愛着のあるウメとの別れを惜しんで,

  ‐ 東風(こち)吹かば にほひおこせよ 梅の花
    あるじなしとて 春な忘れそ         ‐
 
 と詠みました。

 すると,梅の一枝が道真を慕って空を飛び,
 太宰府にある住居の庭に根をおろしました。

 花言葉の『忠実』は,この故事から生まれました。







★ウメ(白梅)

 白梅には,つぎのような話があります。

 京の東北院を訪れた僧が,白い梅に見入っていると,
 家人が出てきて話しました。

 ‐ これは和泉式部が愛した白梅です。ここが御所だった頃に,
   式部が自ら植えたものです。 ‐

 その夜,院内の一室で法華経をよんでいる僧の前に,
 式部の霊が現れ,供養のお礼をいった。

 ‐ 私は生前,恋多き女として奔放な生活を送っていましたが,
   極楽では歌舞の菩薩となり,穏やかな時を過ごしています ‐

 しみじみと語った式部は,夜明けとともに消えていきました。
 ひときわ高い白梅の香りを残して……








★サザンカ(山茶花)

 真冬のあまり花のない時期に咲く可憐な花です。

 姫椿という別名があるように,ツバキによく似ています。

 ツバキの花は枯れると,花の首ごとポトリと落ちますが,
 サザンカは花びらが一枚ずつ,ヒラリヒラリと散っていきます。

 漢名を山茶(さんさ)といい,
 山茶花(さんさか)からサザンカになったといわれています。

 香りはほのかで,どこかひかえめな感じがあることから,
 『謙遜』という花言葉が生まれました。

 冬に咲くサザンカといえば,想い出す歌があります。

 ‐ サザンカ サザンカ 咲いたみち 

        焚き火だ 焚き火だ 落ち葉焚き ‐ 
 







★キンセンカ

 キンセンカは「金の盃」ともいわれる美しい花です。
 南ヨーロッパ原産で,数多くの園芸種があります。

 いくつかあるギリシア神話のひとつを紹介します。

 水の妖精,ニンフのクリスティは太陽神アポロンに恋をしました。
 しかしアポロンには,レウトコエという恋人がいます。

 アポロンとレウトコエの仲をねたんだクリスティは,
 レウトコエの父である王に告げ口をしました。

 怒った王は,娘のレウトコエを生き埋めにしてしまいました。
  
 自分の告げ口を恥じたクリスティは
 アポロンを見続けて9日間,地面に座り続けていると,
 クリスティはキンセンカに変わってしまいました。
 
 キンセンカの花言葉は,『別離の悲しみ』『悲嘆』です。