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★アヤメ
アヤメは日本をはじめとした東アジア原産で,
高貴な色合いから,園芸用としても広く愛されています。
垂れ下がった紫の花びらの内側に,
黄,黒,白のあざやかな編み目模様があるのが特徴です。
「太平記」になかに,
アヤメという女官を好きになった源三位頼政の話が書かれています。
天皇が頼政の心を試すため,たくさんの女官を集めて,
遠くにいる頼政に,女官のなかからアヤメを見つけるようにといいました。
困った頼政はしばらく考えた後,
大声でアヤメの花の歌を詠みはじめました。
するとただ一人,ポッと頬を赤らめた女官がいました。
この女官こそアヤメでした。
こうして頼政は,大勢の女官からアヤメを見つけることができ,
その後アヤメと幸せに暮らしました。
アヤメの花言葉は『信じるものの幸福』です。
★ジンチョウゲ(沈丁花)
庭や公園にあるジンチョウゲの花が咲き始めました。
ジンチョウゲは中国原産の1m以下の小木です。
花の香りは素晴らしく,千里のかなたまで香りが届くという意味で,
「千里花」ともいわれています。
室町時代に薬用として中国から日本に渡来しましたが,
その香りから,庭の花木として広く楽しまれるようになりました。
花言葉の『栄光』や『甘い生活』は,
香りの素晴らしさから付けられたようです。
ジンチョウゲの英名,ウインター・ダフネとは,
キューピットに愛の矢を射られた太陽神アポロンから,
強引に求愛されたニンフのダフネを指しています。
アポロンのしつこい求愛に困惑しているダフネを見た全能の神ゼウスは,
恋に目がくらんだアポロンを遠ざけるために,
ダフネの姿をジンチョウゲに変えてしまったという伝説があります。
★ヒナギク(デージー)
ヨーロッパ西部原産で,芝生や牧草地によく生えています。
原種は白い花ですが,園芸品種には濃赤色もあります。
有名な古代エジプトのツタンカーメン王も,
首飾りにヒナギクを使っていました。
出血を止める薬効があるため,傷薬としても使われてきました。
イギリスのケルト伝説では,ヒナギクは新生児の花とされています。
牧場にはたくさんのヒナギクが咲いています。
このヒナギクは,死産でこの世の光を見られなかった赤ん坊たちが,
両親をなぐさめるために,霧の夜にそっと種をまき散らしたものです。
ヒナギクの花言葉は『平和』,『希望』です。
★クロッカス
クロッカスはヨーロッパ原産で,世界に75種類ほどあります。
花の季節は早春と秋に分かれ,
春咲きをクロッカス,秋咲きをサフランと呼んでいます。
香りが高く,香料としても有名で,
アラビアでは金持ちの女性の眉染めやマニキュアに使われ,
粉は黄金と同じ価値で取り引きされていました。
ギリシア神話には,つぎのような話があります。
神々の血を引く美青年クロッカスは,ある未亡人の病を治したことで,
未亡人の娘リーズと恋仲になりました。
しかしリーズにはすでに婚約者がいたので,二人の仲に反対した未亡人は
リーズを連れて遠くに行ってしまいました。
絶望したクロッカスのため,
美と愛の女神アプロディテは,リーズに使者のハトを送りました。
しかしハトは未亡人の弓矢で撃ち落とされ,
同時に,ハトを撃った弓矢は近くにいたリーズの命を奪いました。
後を追ってきたクロッカスも,リーズの婚約者に殺されてしまいました。
二人の死を知った美と愛の女神アプロディテは
クロッカスをその名の花に,リーズを青いアサガオに変えました。
クロッカスの花言葉は『あなたを待っています』です。
★ラッパスイセン
スペインやポルトガル,地中海沿岸原産のスイセンは世界各地に広がり,
日本でも早春を代表する花になっています。
スイセンの園芸種・ラッパスイセンは,そのあざやかさで目を引き
『尊敬』という花言葉もつけられています。
有名なギシリア神話です。
ギリシアの美青年ナルキッソスは,多くの乙女の心を虜にしましたが
決して自分から人を愛そうとしませんでした。
森のニンフ・エコーからの愛も受けいれることはありません。
怒った復讐の女神・メネシスは,
池の水面に映った自分自身に恋をするように
ナルキッソスに呪いをかけてしまいました。
たちまちナルキッソスは水面に映る自分自身に恋をし,
実ることのない恋の苦しみにやつれて,
ついには一本のスイセンになったといわれています。
スイセンの花言葉は『うぬぼれ』『自己愛』です。
★カタバミ
カタバミは,世界の温帯から熱帯に広く分布し,
日本でも道端や都会の空き地などで普通に見ることができる花です。
クローバーがヨーロッパに普及する前の中世時代,三つ葉草と呼ばれて
幸運のシンボルとされていたのはカタバミでした。
西洋では蛇などの毒を持つ動物から身を守るお守りになっていて,
魔女も手が出せなかったといわれています。
直径3ミリほどの花は,日があたると開き,夜は閉じます。
葉はハート形の三枚の小葉からなっています。
若山喜志子の歌があります。
− 三つよりて仲むつまじきかたばみの
かたちくずさずあり経むものを −
カタバミには
『私はあなたと生をともにする』という花言葉がつけられています。
★タンポポ
枯れ草の中で咲いているセイヨウタンポポを見つけました。
セイヨウタンポポが日本に渡来したのは20世紀初めですが,
今やタンポポといえばセイヨウタンポポをさすようです。
また,葉の形がライオンに似ていることから,
英名はダンデライオン(Dandelion)といいます。
タンポポには,北米インディアンに伝わる有名な話があります。
ある春の日,なまけものの南風は
野原で,美しい黄色い髪の少女に出会いました。
そして,その少女に恋をしました。
毎日,南風は胸をときめかせて,黄色い髪の少女を見つめました。
しかし,しばらくすると,美しい少女は白髪の老女になりました。
南風は悲しみのあまり大きなため息をつき,
白髪の老女もそのため息に飛ばされてしまいました。
あの少女はタンポポだったのです。
タンポポの花言葉は『別離』です。
★ヒマラヤユキノシタ
今日は雪の降る一日でした。
雪の舞う中,ヒマラヤユキノシタが咲いていました。
ヒマラヤユキノシタは,その名前のとおりヒマラヤが原産地で,
早春に,ウメに似た美しいピンクの花を咲かせます。
常緑の葉は,寒さにあうと紫紅色を帯びるので,
冬でも美しい紅葉で親しまれています。
花言葉は『情愛』です。
雪の舞う中で咲いているヒマラヤユキノシタを見て,
ホイットマンの詩を想い出しました。
寒さにふるえたものほど,
太陽の温かさを感じる。
人生の悩みをくぐったものほど,
生命の愛しさを感じる。
★オオイヌノフグリ
里山では,今が盛りとオオイヌノフグリが咲いています。
オオイヌノフグリは明治初期にヨーロッパから渡来して,
帰化した野の花で,全国いたるところで見られます。
ヨーロッパでは「聖女ヴェロニカの草」と呼ばれて,
画家や写真家の守護聖人としてあがめられてきました。
キリスト教では,次のような話があります。
ゴルゴダへの道を歩くイエス・キリストは,
十字架の重みに絶えかねて道に倒れ込んでしまいました。
すぐに老婦人が駆けよって,茨の冠からしたたる汗と血を拭うために
真っ白いハンカチをキリストの顔にあてました。
すぐに,兵士が現れ,老婦人をキリストから引き離して,
そのままキリストを刑場へ連れて行ってしまいました。
しかし白いハンカチにはキリストの面影が残り,
これを見ると病気が治るなどの数々の奇跡が起こりました。
そのため,老婦人は聖女ヴェロニカと呼ばれるようになりました。
また,キリストの足元に咲いていた小さな青い花にも血が一滴したったので,
この花には今でもキリストの面影が印されています。
この小さな青い花がオオイヌノフグリです。
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★シクラメン
シクラメンはサクラソウ科の多年性球根植物で,
原産地はヨーロッパや地中海沿岸です。
ギリシア・シチリア島の野豚は,好んでシクラメンの地下茎を食べるので,
英語では「豚のパン」と呼ばれています。
日本に伝わったのは明治時代で,パンという言葉に馴染みがなかったため,
「ブタノマンジュウ」と呼ばれていました。
シクラメンの地下茎は,
古代ローマではヘビの噛み傷を治す力があるといわれ,
お守りとして各家庭の庭に植えられていたそうです。
花言葉は『嫉妬』『内気』です。
シクラメンを贈るときには,贈る相手をよく考えてください。
★プリムラ(セイヨウサクラソウ)
プリムラはサクラソウの学名 Primula で,「最初」という意味です。
春一番に咲くサクラソウにちなんで名付けられました。
ヨーロッパのサクラソウからは,たくさんの園芸種がつくられました。
今回のサクラソウは,カラフルなプリムラ・ポリアンサです。
プリムラの花言葉は『神秘な心』です。
ドイツに伝わる話を紹介します。
主キリストに天国の鍵を任された聖ペテロは,
天国の番人になりました。
ところが天国にやって来るのは善人ばかりで,
ペテロはいつも,ぼんやりと天国の門の前に立っているばかりです。
ある日,裏門から押し入ろうとした者を見つけたペテロは,
驚いて,腰につけた天国の鍵を落としてしまいました。
地上に落ちた鍵は,牧場に咲くプリムラになりました。
★ヒヤシンス
ヒヤシンスは球根植物で,2〜3月に美しい花を咲かせます。
地中海沿岸が原産地で,園芸品種の数も比較的少なく,
生産量も多くないのですが,
欧米では大変人気のある花です。
ヒヤシンスという名の由来となったギリシア神話を紹介します。
太陽神アポロンは,美少年ヒアキントスを大変可愛がっていました。
ある日,二人は鉄の円盤を投げて遊んでいました。
それを見た西風神ゼフィルスは,
かねてからヒアキントスに心を寄せていたので,
アポロンとヒアキントスの親しげな様子に嫉妬しました。
そして,アポロンの投げた鉄の円盤に強い西風を吹き付け,
ヒアキントスの額にぶつけたのです。
その場に倒れたヒアキントスは,そのまま息を引き取りました。
アポロンは,ヒアキントスを抱きかかえて嘆き悲しんだところ,
血に染まった草の中から
一本の美しい紫のヒヤシンスが咲きました。
ヒヤシンスはヒアキントスの生まれかわりなのです。
紫色のヒヤシンスの花言葉は『嫉妬』『私は悲しい』です。
★アセビ(馬酔木)
アセビの花が満開の季節になりました。
アセビは本州,四国,九州の山に生える高さ約2mの低木で,
つやのある厚い葉と,垂れ下がる白い花の穂との調和の美しさが,
庭木としても愛されてきました。
馬がアセビの葉を食べると苦しむので,
馬酔木(アシビ)とも呼ばれています。
万葉時代の歌を紹介します。
大津皇子(おおつのみこ)が謀略によって刑死したとき,
姉の大来皇女(おおくのひめみこ)は人望が厚かった弟を偲び,
深い悲しみの中で歌を詠みました。
岸辺に咲いている馬酔木の花を手折って見せようと思うけれど,
まず見せたいあなたはもういない……。
磯の上に生ふる馬酔木を手折らめど
見せるべき君がありと言はなくに
★サクラ
早咲きのサクラが咲き始めました。
サクラは,万葉の時代から日本人が最も愛してきた花のひとつで,
多くの種は日本が原産地となっています。
英名はチェリーブロッサムといいます。
サクラの花言葉は『精神美』『優れた美人』です。
昔,サクラは復讐の木といわれていました。
男に裏切られて復讐に燃えた女は,
火のついたロウソクを頭に立てて,
真夜中に神社に出かけます。
そして,神社の一番大きなサクラの幹に,
憎い男の命を絶って欲しいと願いながら
クギでわら人形を打ちつけます。
神様にとっても神社の大きなサクラは大切です。
そこで,これ以上サクラを傷つけられないために,
女の願いをかなえるようにしました。
★ユキヤナギ(雪柳)
ユキヤナギは好んで岩のあるところに生えるので,
日本や中国では岩柳とも呼ばれていました。
公園などにある遊歩道の縁取りや庭木としても,よく植えられています。
葉が柳のようにしなって,雪白色の小花が無数に咲くことから,
ユキヤナギと名付けられました。
『大和本草』には,ユキヤナギが「えくぼ花」の名で出ています。
花の頭部が少しへこんでいるため付けられた名前です。
花言葉は『愛らしさ』です。
大坪静子の和歌を紹介します。
− 雪柳 雪より白く野を埋めて 里の真昼は物音もせぬ −