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★ワレモコウ(吾亦紅)
ワレモコウは日本各地の山野の生える多年草で,
秋の高原を代表する花でもあります。
ある秋の日,さだまさしさんが鳥取県・大山山麓にある
香取村の名和小学校「香取分校」を訪れ,
分校の子供たちと交流しました。
そして分校の先生と生徒をテーマに
「吾亦紅(われもこう)」という曲をつくりました。
「小さな分校の教師をしながら,
教師として一人一人の生徒と向かい合う友人を,
小さいながらも赤く咲く吾亦紅にみたてた歌です。」
吾亦紅 (作詩・作曲:さだまさし)
二本目の徳利を傾け乍ら 奴はふと思い出すように言った
明日の朝小さな山の分校の 子供たちに会いに来ないか
今奴は分校の校長先生 可愛い可愛い子供たちの
笑顔をおまえに見せてやりたい どうだ明日来ないか
折から秋の雨も上がって
かすかに 鈴虫鳴く
今俺は子供たちを野球できたえてる いつか本校に勝たせたくて
幾度も挑んで 幾度も敗れたが
そこはそれ 衆寡敵せず
山あいの分校は傾いていたが 子供たちは裸足で駆け廻ってた
四十いくつもの瞳に囲まれて 奴は先生らしく笑ってた
このすばらしい分校の子供たちは どんなすてきな大人になるだろう
はじける笑顔や瞳の輝きを どうすれば守ってやれるだろう
折から朝の霧も晴れて
まぢかに 大山見ゆ
手作りの野球場に歓声響く 僕はふと脇の草むらに
桑の実によく似た 紅い花をみつけた
子供が教えてくれた 吾亦紅
奴からふいに手紙が届いた
ついに本校に勝ったぞと
手紙を読み乍ら 子供たちの瞳と雄大な山を思い出してた
奴の得意気な顔と 色あざやかに
小さく咲いた 吾もまた紅なり
人あざやかに 色あざやかに
小さく咲いた 吾もまた紅なり
ワレモコウの花言葉は『感謝』です。
★ママコナ(飯子菜)
ママコナの仲間は全国に広く分布する
ゴマノハグサ科の野草です。
花の下唇にある白い2つの隆起が米粒に似ているため,
ママコナという名がつけられました。
イネ科やカヤツリグサ科の植物の根に寄生して,
その養分を横取りていますが,
寄生しなくても株を維持することができるので,
半寄生植物と呼ばれています。
壱岐島に伝わる昔話です。
ある村に大変意地の悪い継母がいて,
いつも継子に満足な食事もさせていませんでした。
ある日,継子が隠れて米を食べているところを,
継母に見つかってしまいました。
継母はひどく怒って,
「あんたは米を盗み食いした。」と叱りました。
継子は泣きながら答えました。
「ごめんなさい。米を二粒,舌の上に乗せました。」
今でも,ママコナの花の下唇には
米粒のようなふくらみが2つあります。
ママコナの花言葉は『援助』です。
★ミント
ミントはハーブの代表のひとつで,
セイヨウハッカ(ペパーミント)やミドリハッカ(スペアミント),
日本に自生するハッカがあります。
ミントはメントールなどの発揮性の油(精油)を含み,
それが清涼感のある香りを生み出します。
またミントの種類によって精油の成分比率が違うので,
味や香りの独特の特徴があり,
それぞれ違った楽しみ方ができます。
ギリシア神話です。
冥界の王・ハディスは黒馬に引かせた黒塗りの馬車で,
地上を疾風のように見回っています。
ある日,野原を見回っているとき
美しいニンフ(妖精)のミントを見つけました。
これを見た王妃・ペルセポネは嫉妬にかられ,
ミントを追いかけるハディスに声をかけて気をそらして,
ミントを草に変えて繁みの中に隠しました。
今でもミントは爽やかな香りを放って
愛する人たちに自分の居場所を知らせています。
ミントの花言葉は『もう一度愛して』です。
★サルビア
サルビアは世界の温帯から熱帯に広く分布し,
園芸用として多くの品種がつくられています。
普通,サルビアと呼ばれるのはスプレンデンスで,
唇形の真っ赤な花を咲かせます。
夏から秋にかけて花壇の赤色を代表する花で,
子どもの頃には花弁を抜いて蜜を吸っていました。
昭和47年に『サルビアの花』という名曲が生まれました。
作詞は相沢靖子さん,作曲・早川よしおさん,
3人の女子大生グループ「もとまろ」が歌っていました。
今でも心にも残っている『サルビアの花』です。
いつもいつも思ってた サルビアの花を
あなたの部屋の中に 投げ入れたくて
そして君のベッドに
サルビアの紅い花 しきつめて
僕は君を死ぬまで 抱きしめていようと
なのになのに どうして他の人のところへ
僕の愛の方が すてきなのに
泣きながら 君のあとを追いかけて
花ふぶき舞う道を
教会の鐘の音は なんてうそっぱちなのさ
とびらを開けて出てきた君は 偽りの花嫁.
ほほをこわばらせ 僕をチラッと見た
泣きながら 君のあとを追いかけて
花ふぶき舞う道を
ころげながら ころげながら
走りつづけたのさ
サルビアの花言葉は『燃える想い』です。
★ケイトウ(鶏頭)
ケイトウは熱帯アジア原産の植物ですが,
日本の高温多湿の気候に合うので古くから栽培されてきました。
日本にはかなり古い時代に,
中国から朝鮮半島を経て伝わったといわれています。
花がニワトリの鶏冠(とさか)に見えることから,
鶏頭という名前がつきました。
また中国ではケイトウのことを
鶏冠花と呼んでいます。
中国に伝わる昔話です。
ある村にひとりの青年が住んでいました。
青年は1羽の雄鳥を大切に育てていました。
ある日,山はずれの道で泣いている少女に出会い,
とりあえず少女を自宅に連れて帰りました。
すると雄鳥は大声で鳴き,少女を威嚇します。
その夜,青年は寝込んでしまうと,
少女は鬼女になって青年に襲いかかりました。
すぐに雄鳥が鬼女に立ち向かい,
一晩中,死闘が続きました。
明け方,ついに雄鳥は鬼女を倒しましたが,
雄鳥も力尽きて死んでしまいました。
青年は涙を流しながら,
雄鳥を丁寧に地面に埋めて葬りました。
しばらくして,雄鳥を埋めたところから芽が出て,
雄鳥の鶏冠によく似た花が咲きました。
村人たちは勇敢な雄鳥の生まれ変わりだと信じ,
その花を「鶏冠花」と呼ぶようになりました。
ケイトウの花言葉は『情愛,おしゃれ』です。
★ダチュラ
ダチョラは別名・チョウセンアサガオといい,
世界に約20種ほどが分布しています。
英名ではエンジェル・トランペットといいます。
花が上向きに咲くタイプはアルカロイドを含んでいるため,
華岡清州が日本で初めて乳ガンの手術をしたとき,
この花からつくった麻酔を使ったことで有名です。
北米インディアンに伝わる話です。
ある村で遊んでいたふたりの子どもが,
森の中で開かれていた神々の会議を見てしまいました。
神々はふたりの子どもたちを見つけ,
このことは絶対誰にも話さないように誓わせました。
しかし子どもたちは家に帰ると,
すぐ家族に神々の会議のことを話しました。
怒った神々はふたりの子どもに罰を与えました。
子どもをダチュラという花に変えてしまったのです。
それ以来,ダチュラの種を食べた人は,
幻覚を起こして見たことをすべて話すようになりました。
ダチュラの花言葉は『偽りの魅力』です。
★カキ(柿)
カキノキの仲間はアジア,南北アメリカ,南ヨーロッパに
約480種あまりが分布しています。
果樹として栽培されることがあるが,
食用にされない種も多い。
日本では古くから多くの品種が栽培されているが,
どの品種も日本に野生するヤマガキから育成されたものです。
大きく分けると甘柿と渋柿に分かれ,
甘柿は北国では寒さで渋が抜けきらないため栽培されない。
中国に伝わる民話です。
昔,ある村に父親と四子という息子が住んでいました。
母親と3人の兄はすでに病気で亡くなっています。
ある日,村の若者たちが遊び半分で,
四子の家の前にすむ火鳥を,石を投げて打ち落としました。
四子は火鳥の傷の手当てをして,
傷が治るまで根気強く火鳥の世話をしました。
火鳥は四子に深く感謝をして,
自分の巣から一本の果樹の枝を持ってきました。
「これは花果山にある甘くて赤い実がなる木です。」
火鳥はやがて火晶という名の娘に姿を変え,
四子の家に住んで果樹を育てはじめました。
果樹は三年目に赤い実をつけました。
父親は四子と火晶の結婚式の日にこの実を配り,
村人たちにたいそう喜ばれました。
カキの花言葉は『自然美』です。
★コスモス
コスモスの原種は高山植物のひとつで,
メキシコ中央高原の標高2500m位に生えています。
日本には明治時代に渡来して,
今では日本中どこでも見られる秋の風物詩になりました。
花の形がサクラに似ているので,
秋桜ともいわれています。
中原淳一の「花詩集(はなことば集)」からです。
丘の上にいっぱいのコスモスが咲いていました。
そのコスモスの中にうずもれるように一軒の黄色い壁の家がありました。
そしてその黄色い壁の家には一人の女の子がいたのです。
少女はこんな寂しい丘の上のコスモスに囲まれた生活なんて
ほんとにつまらないと思いました。
もっともっと賑やかな美しい生活がどこかにあるに違いない。
自分はそれを探しに行こうと決心したのです。
ある日,コスモスの花に別れを告げると,
少女は人々の憧れる都へ参りました。
しかし,そこで見た幾年かの生活は
決して美しいものでも楽しいものでもなかったのです。
少女はある日,町のはずれに,
ふと見かけたコスモスの一輪を見ると
もうたまらなくあの丘の上の黄色い壁の家がなつかしくなったのです。
少女は都を出るとまっすぐにあの丘の上へと帰りました。
しかし,そこにはコスモスはなく,小さな家がたくさん建ち並んで
あの美しかった黄色い壁もすっかりみすぼらしくなっているのです。
少女は,一度すてた日の夢を
再びすてることがどんなに悲しいか初めて知りました。
そして,また,黄色い壁の家を捨てると,
コスモスの花を抱いて,長い長い旅へと上ったのです。
コスモスの花言葉は『乙女の真心』です。
★ノコギリソウ(鋸草)
急に寒くなりましたが,
まだ近くの野原ではノコギリソウが花をつけています。
ギザギザの葉からノコギリソウという名がつきましたが,
小さな花が集まっておしゃべりをしているような可愛い花です。
奈良・平安時代には,
霊山に生えているノコギリソウを50本選び,
占いに使っていたといわれています。
また消炎や健胃作用があるとされ,
歯痛や外傷の治療に使われていました。
ノコギリソウにまつわるギリシア神話です。
トロイア戦争の英雄アキレウスは,
「今日はトロイの兵隊100人を討ち取ります」と神に誓いました。
アキレウスは誓いどおり勇敢に戦い,
最後に倒した100人目の敵の兜を剥ぎ取りました。
そして倒した100人目の敵が
金髪で色白の美しい女性であることを知って驚きました。
その女性はアマゾン国の女王ペンテシレイヤだったのです。
アキレウスは美しいアマゾン国の女王を倒したことを悔やみ,
「アマゾン国の女王の魂を花に宿らせたまえ。」
と神に祈りました。
アキレウスの願いはかなえられ,
ペンテシレイヤはノコギリソウの花に変わりました。
ノコギリソウの花言葉は『戦い』です。
★リンドウ(竜胆)
リンドウは日本原産の多年草で,
本州,四国,九州に分布する秋を代表する花です。
薬用としてもよく知られ,
中国や日本で用いられる苦味健胃薬「竜胆」は
リンドウの根茎や根を乾燥させたものです。
花は陽が当たっている時に開き,
曇りや夜間になると閉じてしまいます。
源氏の家紋「笹竜胆紋」にまつわる話です。
源頼朝は12歳の時に平治の乱に敗れ,
伊豆の蛭ガ小島に流されました。
島に流されて十数年がたった今でも北条時政等に監視され,
狩りに出たときだけが唯一,頼朝の自由な時間でした。
ある秋の日,頼朝は狩りに出ていた原野で,
ひとりの乙女と出会いました。
乙女は手に一輪の美しいリンドウを持っています。
頼朝が「その花は何という花ですか?」と聞くと,
乙女は万葉集の古歌になぞらえて歌を詠み,
「思ひ草と申します」と答えました。
この乙女がのちの北条政子です。
やがて政子は父の反対の中,雨の夜に家を飛び出し,
伊豆山権現の境内で待つ頼朝のもとに駆けつけました。
その後,頼朝と政子に縁のあるリンドウ(竜胆)が,
源氏の家紋「笹竜胆紋」になったといわれています。
リンドウの花言葉は『悲しんでいるあなたを愛す』です。
★プラタナス
プラタナスはスズカケノキ科の落葉樹で,
スズカケノキ,アメリカスズカケノキ,
モミジバスズカケノキがあります。
このうち日本で最も多く街路樹などに植えられているのが,
モミジバスズカケノキです。
葉がすべて落葉した後でも集合果がつり下がっているので,
「鈴懸の木」とも呼ばれています。
樹皮が大きくはがれるのも特徴のひとつです。
懐かしい名曲,北山修作詞・端田宣彦作曲の
シューベルツ・『風』です。
人は誰も ただ一人旅に出て
人は誰も ふるさとを振りかえる
ちょっぴり淋しくて 振りかえっても
そこにはただ風が 吹いているだけ
人は誰も 人生につまずいて
人は誰も 夢破れ振りかえる
プラタナスの 枯葉舞う冬の道で
プラタナスの 散る音に振りかえる
帰っておいでよと 振りかえっても
そこにはただ風が 吹いているだけ
人は誰も 恋をした切なさに
人は誰も 耐え切れず振りかえる
何かをもとめて 振りかえっても
そこにはただ 風が吹いているだけ
振りかえらず ただ一人 一歩ずつ
振りかえらず 泣かないで歩くんだ
何かをもとめて 振りかえっても
そこにはただ 風が吹いているだけ
吹いているだけ
吹いているだけ
プラタナスの花言葉は『天才,天賦の才能』です。
★シャコバサボテン(クリスマス・カクタス)
ブラジル原産の着生型のサボテンで,
12月頃に咲くのでクリスマス・カクタスともいいます。
また,デンマークで改良が進んだので
デンマーク・カクタスとも呼ばれています。
サボテンとはいっても刺はなく,
葉(本当は多肉質な茎)にギザギザがあるところが
シャコに似ているからこの名前が付きました。
花の形は華麗で,
大空を翔る鳳凰のような印象を受けます。
大阪の詩と童謡誌『ぎんなん』に掲載された
中島和子さんの「シャコバサボテン」という詩です。
シャコバサボテンが
しだれ花火のように咲いている
おばあちゃんは
パクリとごはんをひと口
シャコバサボテンの鉢をながめる
----まあ きれいなお花
そうして
また パクリとひと口
----まあ きれいなお花
はじめて花を見るみたいに
はなやいだ声で 何度もくり返す
いつものことだから
父さんも 母さんも
何も言わない
----まあ きれいなお花
私はたまらなくなって
言ってしまった
----何回 おんなじこと言うの!
おばあちゃんは すまして答えた
----そやかて 何回見ても きれいやもん
父さんと母さんが
プッと ふきだした
私も アハハと笑った
おばあちゃんは きょとんとして
それから ほっほっと笑った
つぎの日
おばあちゃんが 死んだ
今年も
シャコバサボテンが
しだれ花火のように咲いている
シャコバサボテンの花言葉は『愛される喜び』です。
★イチョウ(銀杏)
イチョウは高さ30m以上にもなる落葉高木で,
秋には黄色く紅葉します。
雌雄異株で花は短い枝につき,
雌木には10月頃に黄色い実をつけます。
臭い実の中身は銀杏(ぎんなん)といい,
食用にされています。
中国原産で中世に日本に渡来したといわれ,
病虫害がなく公園や街路樹として植栽される代表植物のひとつです。
また,材は将棋盤や碁盤に用いられます。
土佐に伝わる伝説です。
ある村に,年貢の取り立てが厳しい
服部五右衛門という強欲な庄屋がいました。
ある凶作の年,村人を代表して平六という男が,
五右衛門に年貢の猶予して欲しいと願いでました。
怒り狂った五右衛門は平六をイチョウの大木に逆さ吊りにして,
松葉いぶしにかけてしまいました。
平六は「7代まで祟ってやる。」と叫びながら,
そのまま命を落としました。
その後,五右衛門は乱心してイチョウの木で首を吊り,
服部の家も7代で絶えてしまいました。
ある夜,このイチョウの大木がものすごく大きな声で笑い,
村人は震え上がってしまいました。
この声を聞いた人は熱を出して寝込んだため,
村人はイチョウの根元に小さな祠をつくり,
平六の霊をていねいに祀りました。
イチョウの花言葉は『長寿』です。
★フユイチゴ(冬苺)
フユイチゴは東アジアに分布するバラ科の常緑の小低木で,
国内では関東地方から西の地方にある
雑木林やスギ・竹林で普通に見ることができます。
名前の由来は冬に赤い実がなることからで,
別名を「寒イチゴ」ともいいます。
9〜10月に白い花を咲かせ,
12月になると小さな果実が集まった集合果を熟します。
果実はもちろん生食でき,
砂糖と煮詰めてジャムにすると美味しく食べられます。
北風の吹く冬枯れの雑木林を歩きながら,
フユイチゴを探すのが冬一番の楽しみです。
北欧に伝わる神話です。
女神・フリガは神々の王・オーディンの妻で,
どんな女神よりも美しく,深い愛情を持っていました。
フリガは空と雲,青春と愛,死を司り,
鷹の翼を持って天空を飛びまわり,
猫の引く二輪車で地上を駆けています。
フリガはイチゴのこの上なく愛していました。
幼い子が死ぬと,イチゴでおおって,
ひそかに天に運んでいました。
やがて地上のイチゴは赤い実をつけますが,
その実には子どもの魂が宿っています。
フユイチゴの花言葉は『誘惑』です。
★ビワ(枇杷)
ビワは果実が楽器のビワに似てることから,
その名前がつけられたといわれてます。
本州西部から四国,九州に分布する常緑高木ですが,
日本の在来種かどうかはよくわかっていません。
冬期には少し地味ですが,
淡黄色の花が円錐状にたくさん咲きます。
日本では古くから栽培され,
弥生時代の遺跡からビワの種子が出土しています。
その実は甘く,葉にはクエン酸や
ビタミンB17,タンニンなどが多く含まれ,
中国では健康維持・増進の健康食品として古くから利用されています。
葉や種子は咳止めの効用があるといわれています。
詩人・室生犀星の「枇杷の花」の一節です。
蒼白い枇杷の花が咲いてゐる
褐色の くたびれ過ぎた垣根に添うて
幽(かす)かで
遠慮ぶかく
いつもわたしどもの華麗な風景から
ひっそりとぬけ出して
糀(こうじ)のやうに寂しく咲いてゐる
ビワの花言葉は『温和』です。
★チャノキ(チャ)
チャノキは中国原産のツバキの仲間で,
日本では1191年に渡来して,
緑茶用として各地で栽培されるようになりました。
通常は刈り込まれていますが,
放置すると10m近くの大きな木になります。
冬のはじめには,
白く清楚な花を下向きに咲かせます。
お茶の起源にまつわる中国の伝説です。
昔,人々はあらゆる植物を食べていたため,
植物の毒にあたって多くの人々が苦しみました。
農耕の神・神農は自らあらゆる植物を食べ,
その植物が食べられるかどうかを
人々に教えるようになりました。
毒を持つ植物を食べると腹が黒くなり,
効能のある植物を食べると腹が光ります。
ある日毒草を食べ,腹を黒くして苦しんでいた神農は,
そばにある白い花を咲かせた木の若葉を食べるました。
その若葉は神農の腹の中を移動しながら,
腹にたまった毒を次々に消していきました。
すると神農の腹の黒色が消えて,
それまでの苦しみもウソのようになくなりました。
それ以後,神農はその植物を「査(チャ)」と呼び,
毒消しとして多くの人々に教えました。
この白い花を咲かせる植物が,
今のお茶(チャノキ)だといわれています。
チャノキの花言葉は『追憶』です。
★パンジー(三色スミレ)
パンジーはスミレ科の仲間で花が一番大きく,
花色が三色散りばめられています。
物思いに沈んだ人の顔のように見えるので,
フランス語のパンセ(物思い)から
パンジーと名付けられました。
日本でもかつて人面草と呼ばれていました。
パンジーにまつわる伝説です。
春風がサワサワと吹き,
その風に乗って愛の使者・エンゼルが
地上に舞い下りました。
エンゼルはそばで咲いているパンジーを見つけ,
そっと近づいてささやきました。
「美しく,そして気高く咲き誇り,
この世に愛と希望を広げなさい。」
このときからパンジーは天使の面影を宿し,
優美で可愛らしく咲くようになりました。
パンジーの花言葉は『純愛』です。
★ロウバイ(蝋梅)
ロウバイは中国原産で落葉低木で,
日本には1600年頃に朝鮮半島を経由して渡来しました。
花の少ない厳寒期に,
黄色の香りよい花を咲かせます。
花弁がロウ細工のように油を含んで半透明色であることから,
臘梅(ロウバイ)と呼ばれたといわれています。
中国の湖北省・神農架に伝わる話です。
昔,この地方に小さな国があり,
国王が花園に様々な草木を集めて楽しんでいました。
国王はとりわけロウバイを愛好していましたが,
ロウバイに香りがないことを残念に思っていました。
国王は庭師たちに対して,
次の冬までに香りのあるロウバイをつくるように命じ,
これができなければ庭師たちを処刑するといいました。
しかし次の冬,ロウバイが蕾をつけるころになっても,
庭師たちには打つ手がありませんでした。
ある日,一人の老人が強い臭いのする梅の枝を持ち,
むりやり花園に入ろうとしました。
門番に押し返されている老人を見た庭師たちは
老人を自らの家に招き,丁重に接待しました。
やがて老人は持っていた梅の枝を庭師たちに渡し,
「この枝はロウバイと深い縁がある」と言い残して去りました。
庭師たちはさっそくこの枝をロウバイに挿し木すると,
やがて強い香りのするロウバイの花が咲きました。
国王はことのほか喜びました。
それ以来,この地のロウバイは,
よい香りのする花として有名になったのです。
ロウバイの花言葉は『慈愛』です。
★フクジュソウ(福寿草)2
フクジュソウの紹介は2度目になります。
フクジュソウは日本各地の山野に自生しますが,
やや寒冷な地を好むため,北日本でよく見られます。
福と寿をつらねた縁起の良い文字づかいのため,
正月のお飾りに欠かせませんが,
実際の花期は2〜4月です。
旧暦の正月ころに花が咲くので,
元旦草ともいいます。
中国吉林省に伝わる民話です。
いつも出没する山賊に
大変困っている村がありました。
ある日,ひとりの村の娘が山賊の後をつけ,
とうとう山賊が隠れる山奥の洞窟を見つけました。
しかし山賊に見つかってしまい,
追いつめられて断崖から身を投げました。
途中で木に枝に引っかかった娘は,
裂いた着物の切れ端に,血で洞窟の場所を書き残し,
雪に埋もれたまま息絶えました。
やがて春が来て雪が溶けると,
娘の遺体と書き置きが見つかりました。
そして書き置きを手がかりにして,
村人たちは山賊を退治しました。
その後,娘の墓のまわりには,
早春になるとフクジュソウの花が咲くようになり,
村人は娘の生まれ変わりとして大切にしました。
フクジュソウの花言葉は『幸福を招く』です。
★シクラメン
今年の冬はたくさんのシクラメンを育てています。
シクラメンは地中海原産のサクラソウの仲間で,
シチリア島の野豚がこの花の地下茎を掘って食べるので,
「豚のパン」とも呼ばれています。
日本には明治時代に渡来し,
「ブタノマンジュウ」と呼ばれていたそうです。
古代ローマでは蛇のかみ傷を治す力があるとされ,
お守りとして庭に植えられていました。
小椋佳・作詞作曲の『シクラメンのかほり』です。
綿色したシクラメンほど
すがしいものはない
出会いの時の君のようです
ためらいがちにかけた言葉に
驚いたようにふりむく君に
季節が頬をそめて過ぎてゆきました
薄紅色のシクラメンほど
まぶしいものはない
恋する時の君のようです
木もれ陽あびた君を抱けば
淋しささえもおきざりにして
愛がいつのまにか歩き始めました
疲れを知らない子供のように
時が二人を追い越してゆく
呼び戻すことができるなら
僕は何を惜しむだろう
薄紫のシクラメンほど
淋しいものはない
後ろ姿の君のようです
暮れまどう街の別れ道には
シクラメンのかほりむなしくゆれて
季節が知らん顔して過ぎてゆきました
シクラメンの花言葉は『思いやり』です。
★マツ(松)
マツは世界に約9属,200種ほどあり,
主に北半球に分布しています。
ほとんどが常緑高木ですが,
まれに落葉するものや低木があります。
日本ではアカマツとクロマツがよく知られていますが,
高山に生えるハイマツや山地のゴヨウマツ・カラマツなど,
多数のマツの仲間が見られます。
キリスト教に伝わる話です。
幼いイエス・キリストを抱いた聖母マリアは
エジプトに逃げる途中でした。
疲れたふたりがマツの木の下で休んでいるとき,
すぐそばまで追跡してきた兵士たちが迫っていました。
すると,マツの木が枝を地面まで伸ばし,
マリアとイエス・キリストをすっぽりと隠してしまい,
多数いた追っ手の兵士から救いました。
イエス・キリストはマツの木の優しさに感謝し,
それを喜んだマツの木は,
マツの実を幼いイエス・キリストの握りこぶしの形にしました。
マツの花言葉は『勇敢』です。
★ウメ(梅)
厳しい寒波が来た日,
近くにあるウメに白い花が咲いていました。
ウメは中国原産で,
奈良時代にが中国から渡来したといわれています。
当時ははサクラより愛でられていましたが,
平安時代からはサクラに関心が移っていきました。
「万葉集」の頃は白梅,
平安時代になると紅梅が人気がありました。
紀女郎(きのいらつめ)の歌です。
闇夜(やみ)ならば 宜(うべ)も来まさじ 梅の花
咲ける月夜(つくよ)に 出(い)でまさじとや
− 闇夜ならおいでにならないのもごもっともです。
梅の花がこんなにきれいな月夜に,
まさかお出かけにならないとでも……? −
ウメ(白)の花言葉は『高潔,上品』です。
★アイスランドポピー(シベリアヒナゲシ)
アイスランドポピーは別名・シベリアヒナゲシ,
北アメリカやユーラシアの亜北極圏原産で,
日本で栽培されるポピー類の一種です。
早春から春にかけて咲き,
オレンジや黄色,白,ピンクなど花色が豊富で,
色鮮やかな大輪の4弁花はとてもきれいです。
ギリシア神話です。
穀物の女神・デメテルには
ペルセフォネというひとり息子がいました。
ところがある日,ペルセフォネは突然姿を消し,
その後全く消息が分からなくなりました。
嘆き悲しんだデメテルは生きていく気力を失い,
大地の穀物はすべて枯れ果ててしまいました。
デメテルを哀れに思った眠りの神は,
デメテルのためにポピーという花をつくりました。
その鮮やかな美しさを見たデメテルは,
再び元気を取り戻し,
大地にも穀物が豊かに実るようになりました。
アイスランドポピーの花言葉は『慰め』です。
★ラナンキュラス(ハナキンポウゲ)
ラナンキュラスは中近東やヨーロッパ東部の原産で,
カラフルで豪華な花は,
早春の花の中でもひときわ目を引きます。
別名ハナキンポウゲ(花金鳳花)と呼ばれるように,
キンポウゲ(金鳳花)の仲間です。
学名は「小さなカエル」という意味ですが,
この花が水辺や湿地に生えることからつけられたそうです。
ギリシア神話です。
平凡な青年・ラナンキュラスは,
美青年のピグマリオンと大の親友でした。
ある日,ふたりは,山の村にすむ娘・コリンヌに出会い,
同時にコリンヌに恋心を抱きました。
しかしコリンヌがピグマリオンを慕っていたため,
ピグマリオンは友・ラナンキュラスの恋心を知らないまま,
コリンヌと恋に落ちて,結婚しました。
一方,ラナンキュラスは失恋の痛手からシシリー島に渡り,
やがて儚い一生を終えました。
友が突然に姿を消し,
その身を案じて探し回っていたピグマリオンは,
ついにシシリー島で友の墓の前に立ちました。
墓のそばには一輪の美しい花が咲いていました。
やがてその可憐な花は,
ラナンキュラスと呼ばれるようになりました。
ラナンキュラスの花言葉は『華やかな魅力』です。
★ツクシ(土筆)
「ツクシだれの子 スギナの子」と歌われるように,
ツクシとスギナの胞子体です。
早春に田畑やあぜ道などから伸びてくるツクシは,
繁殖のため頭に胞(ほう)子をつくり,
胞子を飛び散らすとすぐ枯れます。
そのあとに,緑色の枝であるスギナが出てきます。
ツクシは古くからオシタシとか佃煮にして食べられ,
スギナも江戸時代から食用に使われていました。
漢字では「土筆」と書いて,
「つくづくし」とも呼びます。
正岡子規の歌を紹介します。
− 赤羽根の 包みに生ふる つくづくし
伸びにけらしに 摘む人なしに −
ツクシの花言葉は『驚き,向上心』です。
★デージー(ヒナギク)
デージーは西ヨーロッパ原産のキク科1年草で,
丈夫で花姿が美しく,
次々と花が咲くことから,春の花の定番になっています。
太陽の光で花を開き,
曇りの日や夜には花を閉じることから,
「デイズ アイ(太陽の目)」と呼ばれ,
そこからデージーという名がつけられたそうです。
ヒナギクという別名もあります。
ギリシア神話です。
美しい森のニンフ・ベリジスには,
恋人エフィジウスがいました。
ある日,ふたりが楽しそうに遊んでいると,
そばを果樹園の神・ベルタムナスが通りかかりました。
ベルタムナスは,美しいベリジスが一目で気に入り,
ベジリスを追いかけ回すようになりました。
ベリジスは逃げ続けていましたが,
やがてこのままでは逃げられないと決心し,
デージーの花に姿を変えてしまいました。
そしてデージーのそばには
いつまでもエフィジウスがたたずんでいました。
デージーの花言葉は『平和,希望』です。
★タンポポ(ニホンタンポポ)
野原に咲くタンポポは,
早春の野原を彩る花のひとつです。
山地や野原,荒地,田畑,あぜ道などのいたるところに生え,
最も身近な山野草として親しまれています。
タンポポは大きく分けて,
春に花をつける在来の「ニホンタンポポ」と,
年中花をつける「セイヨウタンポポ」に分けられます。
ニホンタンポポは花の下の総苞片が直立し,
セイヨウタンポポは反対に反り返っています。
また,タンポポは蕾の形が鼓に似ているため,
「鼓草(つづみぐさ)」とも言われていました。
西行法師にまつわるお話です。
西行法師が若い頃,歌の修行をしながら
日本全国を旅していた時のことです。
ある日,摂津の国の山にある「鼓の滝」を訪ねました。
一輪のタンポポが滝のしぶきに濡れ咲いているのを見て
歌を詠みました。
− 津の国の 鼓の滝を 来てみれば
岸辺に咲ける タンポポの花 −
それを聞いていた草刈の少年が,
西行の歌を直しました。
− 津の国の 鼓の滝を 打ち見れば
岸辺に咲ける タンポポの花 −
和歌の神が少年に姿を変えて歌を教えてくれたと思って,
西行はあらためて滝を拝みました。
タンポポの花言葉は『愛の神託,思わせぶり』です。
★ハコベ
ハコベは世界の各地に分布し,
ほとんど一年中,どこかで咲いている身近な野草です。
ハコベという名は,茎が長く連なり,はびこるところから
つけられたといわれています。
英名ではチックウィード(鳥の餌)と呼ばれます。
大正時代に武者小路実篤や志賀直哉らとともに
『白樺』の創刊に参加した木下利玄の歌です。
− わが顔を 雨後の地面に近づけて
ほしいままに はこべを愛す −
ハコベの花言葉は『愛らしい』です。
★ヤマザクラ(山桜)
ヤマザクラは本州,四国,九州に分布する落葉高木で,
サクラの仲間では巨樹になります。
奈良県の吉野山は昔からヤマザクラの名所として有名です。
春,葉が伸びると同時に花を咲かせ,
葉桜になります。
出っ歯のことを山桜といいますが,
これは「歯と鼻が同時に出る」からきています。
万葉集の歌です。
− 見渡せば 春日の野辺に 霞立ち
咲きにほへるのは 桜花かも −
「 見渡すと春日の野辺に霞が立って,
輝くほどに咲き誇っているのは… あれは桜の花だろうか 」
ヤマザクラの花言葉は『あなたに微笑む』です。