内臓の状態は顔に表れる この号では、更に細かい部位の変化について紹介していきたいと思います。 ただ、下記で紹介する変化が現れたからといって、必ずその病気だというわ けではありません。 その病気になるとあらわれやすい変化(症状)ということですので、参考に してみてください。 気になる症状があった場合は専門医の診断を仰がれることをお勧めします。 NO:003でお話しましたように、病院はご自身が体の変化に気づき診察に いくまでは何もしてはくれません。ですから、自分が自分の名医になるよう 養生学で「体の火の用心」をするということです。 【 顔の各部位の変化 と 疑われる病気 】 部位 変化 疑われる病気 <目> 白目部分が青っぽい・・・・・・・ 貧血の現象 白目部分に緑色の斑点・・・・・ 腸に問題 白目が黄色く濁っている・・・・・ 肝臓障害を伴う黄疸 妊娠中毒 白目に出血が見られる・・・・・・ 動脈硬化(特に脳の動脈) 白目に赤い斑点が現れる・・・・ 糖尿病の現象 充血 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 細菌の感染、不眠症 心臓機能不全 片目だけ異常が見られる・・・・ 性病感染 青、灰、黒などの斑点・・・・・・・ 腸に寄生虫 <瞳> 左右の瞳の大きさが違う・・・・・ 脳溢血、脳血栓、脳腫瘍 瞳孔縮小・・・・・・・・・・・・・・・・・・ アルコール中毒、糖尿病、 睡眠薬中毒、有機リン系中毒 瞳孔拡大・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 白内障、重度の近視、 糖尿病による合併症 瞳孔が青色かかっている・・・・・ 緑内障 <まぶた> まぶたが黒っぽい・・・・・・・・・・ 腎臓が弱い、性行為過多、 新陳代謝異常 上まぶたがむくんでいる・・・・・ 心臓病、腎炎 まぶたが閉まらない・・・・・・・・ 神経麻痺、胃腸機能低下 まぶたの上に黄色い粒・・・・・ 血中脂肪、心臓疾患 <鼻> 鼻柱が固くなる・・・・・・・・・・・ 動脈硬化、高コレステロール、 心臓に脂肪がついている 鼻が白い・・・・・・・・・・・・・・・・ 貧血 鼻が黄色い・・・・・・・・・・・・・・ 胃腸障害 鼻筋に黒、茶色の斑点・・・・・ 肝機能障害 <唇> 唇が白い・・・・・・・・・・・・・・・ 胃腸障害、貧血、大量出血 上唇が白く、下唇が青い・・・ 大腸に障害 唇が真っ赤・・・・・・・・・・・・・・ 肺、心臓欠陥 唇が真っ青・・・・・・・・・・・・・・ 脳貧血、血管性疾患 <舌> 舌の周囲に歯形のような跡・・ 栄養失調 舌が大きい・・・・・・・・・・・・・・・・ 甲状腺機能低下 舌の裏が白い・・・・・・・・・・・・・ 貧血、腎炎、内分泌不足 舌の周辺が赤い・・・・・・・・・・・ 高血圧、高熱 下の先端が赤い・・・・・・・・・・・ 疲労、不眠、 ビタミンと栄養のバランス低下 紫色・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ ガン(両側が青紫模様や黒い まだら模様は肝臓ガン) <耳> 耳の外側上四分の一の部分 が固くなる・・・・・・・・・・・・・・・・・ 肝硬変 耳たぶに横線状のしわが出る・ 心臓病 耳の表に血管が浮き出る・・・・ 気管支炎、心臓病、高血圧 耳たぶが濃い茶色・・・・・・・・・・ 腎臓病、糖尿病 耳の外周が黒くなる・・・・・・・・・ 腎機能低下 耳の裏が赤い・・・・・・・・・・・・・・ 糖尿病 耳全体が白い・・・・・・・・・・・・・・ 皮膚病 中医の専門家が特に重視しているのが舌です。 紹介した特徴以外にも舌の表面の状態や、舌の裏側の水分なども 観察します。 未病は舌で診るとも言われるほどたくさんのメッセージが含まれて いますので、自己診断をする際は特に念入りにチェックしてみて下さい。 体調が良いときのご自分の舌の色や状態を覚えておいて、毎日鏡の 前で比較するのもよいでしょう。 健康を示す舌の状態は、全体的にピンク色で白い苔が薄くつき、ひび割れ が少なく、厚みもしっかりしています。 ★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★ 幻の味覚で身体の状態を知りましょう)^o^( ひとは味覚が悪くなると食欲が変化するだけでなく、味覚も変わってき ます。いつも食べている料理の味が変わったと思ったときは、未病(生 命力が弱っている状態)のメッセージが出ている可能性があります。内 臓の異変が味覚の回路を損ない、本来の味を変化させてしまうわけで す。今日は味覚の変化によって、身体の状態、臓器の様子を判断す る方法をご案内します。 ●口の中が苦いという感覚がある時 体内で急性の炎症を起こしている可能性があります。特に肝臓の病気 に注意が必要でしょう。苦い唾液が出てくるとガンの疑いもあります。ガ ン患者は甘味に対する感覚を失いますが、苦さには敏感になる傾向が あるようです。漢方では苦さがある場合、陰陽のバランスから考えて肝 臓と胆のうに異変が起きるとされています。 ●甘さを強く感じる時 ただの水を飲んでも甘さを感じるというときは、だいたい消化器系統の 不調や糖尿病の傾向があります。血糖値が高くなり、唾液の中にまで 糖分が増えているケースです。漢方では、口の中に甘さが出るのは、胃 の異常を疑います。 ● 口の中にしょっぱさがひろがる時 塩を食べているような感覚があれば、慢性腎炎や神経症の可能性が 高いでしょう。耳鳴りやめまいもあるときは腎臓の検査をおすすめしま す。 ● 酸っぱさが強調される時 酸味を感じるのは、胃炎や十二指腸潰瘍の恐れがあります。胃腸が 弱くなり、胃酸による胸焼けがひどいときには口の中にも酸っぱさがあ らわれます。更に肋骨が痛かったり、吐き気をともなうときは胃がおかし いと思って下さい。 ● 辛い時 胡椒などのようなピリピリとした辛さを訴える人は高血圧、神経過敏症 更年期障害の疑いがあります。辛いという感覚はしょっぱさと熱と痛み の総合感覚です。口の中が辛いと感じる人は、口の中の温度が高く 舌の粘膜が痛んでいるケースがあります。 ● 何も味がしない時 身体の中で炎症を起こした初期段階や炎症が治りかけているときは、 味覚を感じないという人が多いです。腸炎や下痢の患者さんに多く見 受けられる症状です。大きな手術の後や、栄養不良、ビタミン類の欠 乏によっても味覚が失われることがあります。注意したいのは、味覚が なくなった時は、ガンの疑いもあることです。中年以上の方が突然原因 不明の味覚障害を起こしたときは是非検査して見てください。 ● 口の中が渋く感じる時 神経が興奮しすぎたり不眠症になったりしているときに起こります。普 通は少し休めば解消できますが、ガンの末期にもこの症状が出ること があります。 ● 口の中に香りを感じる時 果物のような香りを感じるという人はほとんど糖尿病の方です。突然こ の味覚を感じたら早めに対処する必要があります。 **************************************************************** ☆ 爪と健康の関係 顔と同様も健康のバロメーターとなっているのが、爪です。 特に手の爪(左右どちらでもかまいません)の変化は、いろいろな異変を 示しています。 養生学では5本の指のそれぞれが体の部分に対応しているとしています。 そしてまず見るのが「色」の変化です。また爪の形や爪に現れる筋状の 線にも意味があります。 【 爪の色の変化と疑われる病気 】 変化 疑われる病気 白っぽい、艶がない・・・・・・・・ 気血の不足、貧血、動脈硬化 黒くなる・・・・・・・・・・・・・・・・・・ うっ血、腎臓機能障害、長期間の慢性病を 患っている場合は危険な前兆、 放射線治療後の後遺症 黄色い・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 黄疸、肝機能障害 赤い・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 発熱、熱証の病気発生 赤白まだらで外側は赤茶色・・ 脳梗塞、肝機能障害 青い・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 寒証の病気発生、肝臓病の兆候、薬品中毒、 長期病気の場合機器段階になる 緑色・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 甲状腺機能障害、細菌の感染、気管支炎、 肋膜炎 【 爪の形状の変化と疑われる病気 】 変化 疑われる病気 小爪(三日月)と平行に二本白い横線が現れる ・・・・・・・・ 腎炎、腎臓機能の低下、低タンパク症 不規則な白い線が、縦横に現れる ・・・・・・・・ 肝硬変、栄養不良、心筋梗塞、 気血虚弱、全身性の病気 黒(灰色)の縦線が現れる・・・ 慢性腎炎、腎機能の低下、 放射線治療後遺症 横や縦に不規則な線が現れる ・・・・・・・・ 外傷、栄養不足、心筋梗塞 先端が茶色っぽく、中心部が透明になる ・・・・・・・・ 肝硬変、肝機能障害 爪が平べったい(縦より横のほうが長く赤っぽい) ・・・・・・・・ 高血圧、不妊症 爪が短い(正方形の形)・・・・・ 脳溢血、脳血栓、動脈硬化 指の大きさに較べて爪が不自然に大きい ・・・・・・・・ 肺機能低下、気管支炎、咽喉病 爪が横方向に反ってくる・・・・・ 虚血などの肝臓異常 爪が内側に曲がってくる(両端へ曲がり鷹の爪状態) ・・・・・・・・ 中風、慢性の炎症、関節炎、抹消血管障害、 甲状腺機能減退 爪が薄くなる・・・・・・・・・・・・・・・ 気血虚弱、ビタミン不足、胃の手術経験あり 爪が割れやすくなる・・・・・・・・・ 内分泌低下、肝機能障害 爪が硬くなる・・・・・・・・・・・・・・・ 慢性胃腸炎、皮膚病、心臓・肺・肝臓の障害 爪が段々小さくなる・・・・・・・・・ 肝臓・心臓・腎臓虚弱、内分泌低下 部分的に白くなる・・・・・・・・・・・ 栄養障害、潰瘍、急性肝硬変、発熱性の病気 白い斑点が出る・・・・・・・・・・・・ 寄生虫 顔は鏡を見なければ判断できませんが、爪ならばいつでも状態を観察でき ます。 爪の大きさや形が変化する?と驚かれるかもしれませんが、手相と同じよう に爪の大きさも日々変わっています。 毎日注意深くごらんになれば、その変化がおわかりになると思います。 **************************************************************** ★☆ 漢方の原理と処方の大切さ 食事は健康に欠かせない養生手段の一つです。その延長線上に 薬があります。もともと食べ物と薬との境界線はあいまいで、 「医食同源」「薬食同源」という言葉があるくらいです。 それだけ食事が健康維持に欠かせないという意味でもあり ます。太古の時代、人類は健康のためではなく、生きていくた め、生命を維持するために食べ物を求めたと思います。さまざ まなものを口にしていった経験から、これは身体の異常現象を 引き起こすものであるとか、逆にこれを食べれば具合がよくな るという効能や性質を知識として身につけていったのではない でしょうか。あるときは偶然に、あるときは量や時間などを調 節することにより身体に変化があることもわかっていきました。 このように、食べ物に対する認識が健康管理に結びついたとき が漢方薬の発祥です。 漢方薬は、長い経験の積み重ねから病気や治療に効果のあるも のが選び抜かれて、生薬として発展していきました。その種類 は多岐にわたり、野草、果実、樹皮、動物や鉱物まで、ありと あらゆる自然の素材が薬として扱われています。これは自然の 力を利用した技術といえます。抗生物質などのように西洋医学 で処方される薬品と異なり、すべてが天然のものを応用して処 方されるため、副作用の心配が少なく、一人一人の体質や症状 に合った薬を配合できるため、より細かな治療が可能となります。 もちろん漢方薬も万能ではありませんし、薬によっては陰陽体質 と状況に合った処方をしないと大変危険な場合もあります。 陰陽体質については今度詳しく紹介しますが、簡単にいえば たとえば陽体質の人が陽亢陰虚(体内の陽気が多くなり、陰が 足りない)の場合、臓器の働きを活発にするに作用がある熱性の 高麗人参を服用するのは、注意が必要ということです。 ところで以外に思われるかもしれませんが、実は中国には漢方 という言葉はありません。いわゆる漢方医学は中医、漢方薬は 中薬と表現します。中医とは、中国伝統の診断・治療方法のことであり、 その治療に使われるのが中薬です。ちなみにチベットの伝統的医学は 蔵医学といいます。中国でいちばん人口比率が高いのが漢民族です から、日本へ渡来した彼らが利用していた薬を漢方薬と呼ぶように なったのかもしれません。中薬は漢民族に伝わるものだけではなく、 回族、モンゴル族、朝鮮族、満族など数十以上の民族・部族で継承 されてきた薬の集大成なのです。 また日本でも漢方薬の効果が高いことを知っている方は多いのですが、 処方が漢方の命だという事実をご存知の方はあまりいません。 同じ材料、製造方法であっても、処方の違いにより効果はまったく 違ってきます。たとえば肝臓の機能を高める漢方薬として有名な 「片仔コウ」があります。片仔コウ主成分は、田七という人参類の根が 85%を占めていますから、高価な片仔コウではなくもっと安く手に入る 田七だけを飲めばいいだろうという方がいます。 けれども田七だけを飲んでも効果はそれほど現れません。漢方薬の よさは、原材料20%、製造方法20%、残りの60%は処方にあると いわれています。処方とは、他の薬との組み合わせの技術です。 「医者がさじを投げる」という言葉のさじとは、処方をするときに使用する さじのことなのです。 この原理は、生活の中でもよく目にすることがあります。 銘酒とたとえられる日本酒は原料となるお米の品質が大切なのはいう までもありませんが、それよりも杜氏の腕が出来を左右するといいます。 料理も同じく、高級品の食材ばかりをそろえても組み合わせが悪ければ まずいし、料理人の腕が悪ければ食べられたものではありません。 漢方薬も、原料の構成比率によって効能・効果が変わってきます。 片仔コウには麝香、牛黄などの漢方薬が含まれています。これらは 田七の効能を素早く肝臓に送り届け、浸透させる役目を負っている のです。もし田七だけを飲むなら、東京から大阪へ歩いて行くようなもの だと思ってください。他の成分の助けがあるからこそ田七のパワーが早く、 確実に伝わるのです。 漢方薬の成分比率は門外不出とされるものが多く、今でも土地に よっては「伝長男不伝次男」(処方は一族の財産と同じで、長男しか 継げないとか「伝男不伝女」(息子には教えても、娘は将来ほかの家に 嫁ぐから教えてはいけない)という習慣がのこっているほどです。 また「喰穿一世」(処方一枚あれば、一生生活には困らない)という 言葉もあります。 処方と組み合わせの理解が広まれば、漢方薬ももっと見直されるはず です。漢方のよさは何よりも自然の素材を応用しているところにあります から、体内に侵入した菌が薬に対する抵抗力を身につけパワーアップ するおそれは極めて少ないのです。 いずれにせよ、生命力にとって脅威の存在となる抗生物質万能の時代は もはや過去のものだということを、もっとたくさんの関係者が深刻に受け 止めないと破滅は確実です。そして病気から身を守る手段として、 生命力のメカニズムを探ることに解決の糸口があると確信しています。 ★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★ 始皇帝もとり入れた養生学 西洋医学は今、大きな壁に直面しています。その壁を乗り越え るには、これまでの科学一辺倒の考え方だけではなく、別な種 類のパワーが必要なのではないでしょうか。 別のパワー − 私はそれが養生学だと思っています。 中国養生学の歴史は古く、古代文明の文献にも「養生之道」と いう表記が確認できます。「養生之道」が唱えているのは、健 康維持・生命力強化・不老長寿の三つで、具体的には先に述 べた「衣食住行思」(着る物、食べ物、住まい、行動、考え方) の改善方法を細かくアドバイスしています。陰陽五行説を基本 に、人間と自然とのかかわり、臓器と病気、意識と臓器との関 係などを分析した結果、「衣食住行思」が健康と大きく関連して いることが古くから実証されていたのです。 逆にいうならば、もし現在病気であるとするなら「衣食住行思」 が主な原因であり、それを改善すれば健康な状態に戻ることが できるというわけです。 養生学には漢方の知識なども含まれているのですが、 西洋医学とのいちばんの違いは、養生学は直接的な治療行為で はなく、ふだんの生活の中でできる健康法や予防を主な手段と していることです。 仮にもあなたが風邪をひいてしまったとします。病院へ行けば、 「どこかでウィルスをうつされたのでしょう」と診断されるこ とと思いますが、養生学では、それ以外に「薄着をしていなか ったか、身体を冷やす料理を食べなかったか、寒い戸外に何時 間もいなかったか」と、「衣食住行思」の面から原因を探りま す。さらに病院では、注射を打ったり咳止めの薬を処方して くれるでしょうが、養生学ではまずあなたの体質を調べてから、 身体を温めるショウガ湯を飲ませたり、部屋を暖かくしたりと、 やはり「衣食住行思」を改善して風邪を治そうとします。 また、鍼やお灸も、内臓とつながっているツボを刺激します。 これらの方法は、注射一本で熱を下げてくれる西洋医学に較べ れば、もどかしい感じがするかもしれません。 しかし、「欲速則不達」(急がば回れ)ということわざがある ように、すぐにウィルスに感染するほど弱っていた身体を土台 から改善する養生学は、長い目でみれば健康への近道です。 また中国では「尊釈尊道」(時の皇帝が仏教を尊重したり、道 教を尊重したりと時代によって政策・文化・宗教が変わる)を 繰り返してきましたが、その動きに合せて養生学の内容も変化 してきました。仏教の隆盛期には不老長寿を目的とした養生之 道が主流となり、道教が力をつけると仙人術のようなものがも てはやされました。歴代皇帝の中で初めて養生学を重視したのが、 秦の始皇帝です。 広大な土地と人民を支配し、絶大なる富や名声を手にした始皇 帝でさえ、老い死への恐怖に怯え不老不死薬を手に入れようと したことはよく知られています。実は、始皇帝が不老不死に興 味を持ったのは、養生学がきっかけだったといわれています。 晩年の始皇帝は体調を崩しがちでしたが、民間養生学の研究者を 集めて健康指導にあたらせています。 このとき、重視されたのは始皇帝の体内を流れる気と血のバラ ンスです。ここで中国医学・養生学での人体のとらえ方を簡単 に説明すると、人体は「気」「血」「津液(水)」という三つ の要素で構成しているとしています。津液とは血液以外の身体 の中を流れる液体のことです。 血液が血管の中を流れているのと同じく、「気」も全身を循環 している大変重要な要素だと考えられてきました。「気」には 生まれながらに備わっている「先天の気」と食べ物や呼吸から 得られる「後天の気」があり、それぞれが作用しあって生命活 動が営まれているのです。「気」の通り道は「経絡」と呼び、 全身を流れている主な「経路」は督脈と任脈の身体じゅうに網 の目を張り巡らせています。そして、それらが交差している箇 所などにあるのがツボです。主なツボは全身に360ヶ所もある のです。 たとえば風邪をひいて熱があるとき、咳が止まらないときは、 弱った部位だけを問題とするのではなく、肺に関連する「経絡」 に障害が発生していると考えます。肺臓の「気」は、吸った空 気を下へ送りますから、「気」が弱まると空気が下へ送られず 上へ上へとあがってきます。これが咳です。咳がよく出る、声 が小さくなった、よく風邪をひくといった現象があるときは 肺臓の「気」の不足と判断するのです。 また、激しい咳には吐き気がともなうこともありますが、これは 咳で上に引っ張られた肺臓の「気」が、胃腸の「気」までつり 上げてしまうとしています。 では、始皇帝を悩ませた老化とは何か考えてみましょう。老化 現象は、ある日突然発生するのではなく、小さな変化が徐々に 積もりながら、そのほころびが現れてくるのです。現象として いちばんわかりやすいのは、身体が柔軟な状態から硬くなって いくことでしょう。たとえば、足がむくむ、冷たくなる。踵が 痛くなる。関節や腰が硬くなる。手足の指先がしびれ冷たくな る。行動反応が遅くなる、などです。老化は心臓から遠いとこ ろから始まるといいますが、これらは心臓からの供血不足が原 因となっているだけではなく、生命を運営する「気」が足りな くなっている現象です。 次に眼底血管が破れ出血する。軽くぶつかって皮下出血した部 分の回復が遅い。毛細血管の硬化現象が発生し、食欲がだんだ ん減退する。体力・精力も衰えてくる。これは体内の新陳代謝 の速度が鈍る現象です。 心身が疲れやすい。行動と反応の意識が遅い。新鮮な変化に対 して興味や情熱が薄れていく。無関心で冷静、淡白になる。こ れは心身衰弱の現れです。その他、毛髪が抜ける、白髪になる。 歯が抜ける。性欲が減退する。感情に起伏がなくなり、ものの 見方が固くなる。視力聴力が弱ってくる。皮膚が乾燥してくる。 しわが増える。これらは肺気と腎気が弱くなった現象です。 そして今あげたすべてが、老化現象の初期段階となります。 中国では老化現象についての学説が数百種類もありますが、そ の中に「気血の調和状態は寿命のもと」という観点があります。 体内に流れている「気」や血のバランスがいかに大切であるか、 中国明代の薬学書『本草綱目』の著者、李時珍によれば、健康 な人は必ず「気」が育つ。「気」を育てるのが上手な人は長寿 になると記しています。 始皇帝は、養生学の研究者の指示に従って気血の循環をコント ロールするだけで、老いからくる衰えを防止することに成功し ました。老いには勝てないと諦めかけていたときに出会った養 生学のお陰で健康と若さをとり戻した始皇帝が、次に望んだの が不死です。 こうして多くの研究者や術者が不死薬を求めて各国へ派遣され ました。初めて中国から日本へ来た人物とされる徐福も、始皇 帝の命を受けた一人です。もしも始皇帝が養生学の力を体験し ていなければ、何百人もの研究者を世界じゅうに送り出して不 老不死の秘訣を探すという当時の国家的プロジェクトもスター トしなかったと思います。 ★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★ 美しさは生まれつきではない (思の養生) 中国には「我命由我不由天(自分の運命は自分で決める。 天の決めることではない。)」という言葉があります。運命とは 最初から決まっているものではなく、道を選択することです。 どの道を選ぶかは、あなた自身の問題です。これは努力に よって大きな差が現れます。夢や理想に向かって、一生懸命 努力すれば夢は実現します。あまり努力しなかった人には、 たいした結果はついてきません。しかしいくら努力しても、 その手段を間違えてしまうと逆効果となります。 日本の若い女性はダイエットや美容に非常に熱心です。 中には思い余って美容整形手術をする人もいます。確かに手術 をすれば骨格を変えることは可能です。脂肪を吸引すれば外見 的には細く見えるでしょう。けれども生命に危険を及ぼす手術 をしなくても人は十分に美しくなれます。 生まれた時の赤ちゃんの顔は皆同じに見えます。ところが、 乳児の頃の顔のまま大人になる人はいません。遺伝子により親 の外見は引き継いでいますが、育った環境や意識が顔をつくり ます。やましいこと、悪いことばかりしている人は美しい顔に なれません。 ではどうすれば美しくなれるのでしょうか。いちばん簡単な のは恋愛をすることです。恋をすると美しくなるというのは 普遍的なものです。「忍ぶれど 色に出にけり 我が恋は・・」 という有名な和歌がありますが、恋愛は黙っていても肌、目、 表情で表現してしまうほどのエネルギーを出します。肌がきれい ということは内臓もきれいという証明です。愛情は心理的にプラ スに働き、内分泌生理や細胞の代謝を良くする最も原始的かつ 効果的健康法です。 恋愛が生命力を強くした現場を、この目で目撃した経験があ ります。90年代はじめ私が上海から黒龍江省の農村へ奉仕活動 に出ていたときの話です。中国が歴史的に変動した時代で、若い 数十万人の学生もやって来ていました。冬の気温は零下40度の 厳しい環境の農村で働く困難と苦しさは想像以上です。毎日のよ うに仲間が倒れていきました。そんな中、知り合いの一人で楊さ んという若い女性も急病となり、馬車で90!)以上離れた小さな 診療所へ運ばれ入院しました。そこには手術経験もない若い医師 が一人いるだけ。2ヵ月後退院した楊さんは誤診や手術ミスが原 因で髪は抜け落ち、目は落ち込み、声はしわがれた哀れな姿にな っていたのです。20歳の彼女はまるで老婆のように変わってしま い、毎日泣き暮れていました。食欲もなくなる悪循環で、今度は 体調だけでなく精神にも障害が出るようになり、再び入院してし まったのです。楊さんを誤診した医師は、自責の念と後悔にから れ彼女につきっきりで看病しました。はじめは責任感や同情心だ ったのですが、毎日彼女を散歩に連れ出したり、ほんを読んだり するうちに二人は自然と恋に落ちたのです。感情の変化と同時に 楊さんの状態も好転し1年後には無事退院。愛情という名の薬が 彼女の命を助けました。その後、二人は私たちの祝福を受けなが ら結婚しました。そして今、楊さんは黒龍江省歌劇団の振り付け 師として活躍しています。 恋愛感情はポジティブシンキング(積極思考)を与えます。 明日を楽しみにする力が生命にも伝わるのでしょう。恋愛する 相手がいないというなら友情でも家族への愛でもかまいません。 人に対する情熱が睡眠・食欲・血圧・心臓・肝臓などに好影響 を及ぼします。 日々の不満を抱いているだけでは何も生み出しません。 ★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★ 上手な睡眠が大切 私たちは人生の3分の一を眠っています。人生80年とすると 26年間も布団の中で過ごしている計算になります。それだけ に睡眠と健康・長寿の関係は密接であり、重視しなければな らないと思います。中国のことわざに「会吃不如会睡」(上手 なたべ方よりも、上手な睡眠方法が大切)というのがあります。 同じ様な言葉に「吃人参不如睡五更」(人参を食べて栄養 を取るよりも、深夜1時からの睡眠を守るほうが大切)というの もあります。 当然、養生学の一分野に睡眠養生が存在します。睡眠養 生の最も重要なポイントは睡眠の量ではなく質です。そのため には睡眠方法に注意します。 まず睡眠前の状態はリラックスしていなければなりません。心 にモヤモヤを抱えたまま寝てしまうと寝付けなくなり、眠れない とますます神経が高ぶる悪循環となります。出来るだけ1日の 悩みを捨てる週間をつけることが肝要です。とはいえ心配事が あれば眠れなくても当然です。そういう場合は、「いつまでクヨ クヨしていても仕方がない。問題は明日の朝起きてから考えよ う」というある種の開き直りも必要です。悩みを抱え続けると必 ず身体に弊害か現われます。 また入浴剤などを入れたお風呂に入るのも有効です。別に 高価な入浴剤でなくても、みかんの皮を浮かべるだけでも高 い効果があります。ただし、天然の果物を利用するときは、表 面にワックスが付いている場合がありますから、丁寧に洗って からのほうがいいと思います。 風呂から上がったら、両足を15回ずつマッサージしてむくみ を取ってください。更に牛乳を飲んで心身を安定させます。こ れは、「先睡心、後睡目」(目を閉じる前に心を閉じる)という 睡眠方法のひとつです。 さらに睡眠養生では寝具も細かく定めています。大きなポイ ントとなっているのが枕です。高さ、硬さだけでなく、季節や体 の状態によっては、枕の中に漢方薬を入れ調整する方法も あります。例えば、秋に菊花を入れると高血圧に、冬にたんぽ ぽ、沈香を入れると肥満症に効果が出ます。老若男女とも病 気予防として夏には緑豆の皮を入れるのが一般的です。あな たの心がいちばん落ち着くハーブなどを枕に忍ばせるのも、一 つの方法でしょう。 最後に睡眠時間と季節について。一般的に睡眠時間は季 節、年齢により違いがあります。春・夏は遅寝早起きでもかま いませんが、秋と冬は早寝遅起きをお勧めします。年齢が若 い方が睡眠時間が長い傾向になります。養生学では「子午眠 」が大切と説いています。「子」は午後11時〜午前1時。「午」 は午前11から午後1時。体内陽気の交代、発生の段階です から、この時間に睡眠をとれば身体に大変良いのです。 **************************************************************** 乱れた性生活は命とり (行の養生) 行の養生をおろそかにしてしまったために健康を害した例を紹介し ましょう。以前、弊所のS氏へある女性から電話がかかってきました。 それはとても悪い知らせだったのです。 S氏が彼女と知り合ったのはずいぶん前の春。マスコミ業界のある パーティで紹介されたのですが、彼女は当時20代後半、少し痩せて はいましたが、スタイルもよく、声も大きく、エネルギッシュで毎日が 楽しくて仕方がないという表情をしていました。そのパーティにも多くの 人々が彼女のまわりに集まり、常に主役にいるという華やかな雰囲気 を持っていました。 みんなといろいろな会話をしているうちに、S氏の能力に関する話題 となり、たくさんの質問をうけました。S氏は気功やチベットでの修行に ついて話をしましたが、誰かが「話を聞くよりも、実際にSさんに気功を 見せてもらおう」といいだし、思わぬところで気功を行なうことになりまし た。気功はショーや見せ物ではありませんのでできるだけ断るようにし ていたそうですが、気功や養生学に興味を持ってもらうためには、実際 に体験してもらうのが一番早い方法でもあります。その夜もいろいろな 気功を指導したのですが、今度は彼女が「私の将来はみえますか?」 と聞いてきました。 S氏「将来と言ってもいろいろあります」 彼女「それでは子供が何人生まれるか、どんな人と結婚しているかを 見て下さい」と言われたので、入静状態で彼女の「気」に侵入したそう です。 目を開けたS氏に彼女は「どうです?もうわかりましたか?」と早く教え てもらいたがっていました。 「その前に、今のあなたの体調ですが、陰陽のバランスが悪く、身体の 中で火が燃えすぎています。見た目は健康そうに見えますが、唾も出 にくいほど体内は乾燥しています。酒やタバコは控えたほうがいいで しょう。生活が不規則で食事のバランスも悪いですね。それを治さなけ れば結婚どころではありません」というS氏の話を、彼女と友人たちは 「それは当たっている。それも当たっているかも」とはやし立てていまし たが、「腰の病気が心配です。もしかするとそれが原因で子供が産めな くなるかもしれない」という話には「今まで腰痛になったことが一度もな いの」とはっきり否定。やがて別の話題に移り、S氏の気功はそこで 終わりました。 実は彼女の「気」を診たとき、S氏には気になることが見えていたのです。 それは彼女の乱れた性生活です。彼女は大勢の相手と経験を持ち、 屋外の普通ではない場所、神聖な場所での交渉を行い、邪悪な「気」が 体内に入り込んでいるように感じられたのです。他の人に言うべき問題 ではありませんから、S氏はパーティが終わったときに、彼女だけに告 げました。 S氏「もし間違っていたら申し訳ないのですが、最近こうゆう場所に行 きましたか? 彼女「ええ、行ったことがあります。」 S氏「しかも1回ではなく、少なくとも4〜5回はありますよね?」 彼女は少し顔色を変えて「Sさん、そこで私を見たんですか?」と問い 返しました。 S氏「いえ、行ったことはありませんが、さっき気で感じたものですから。 でも、もう二度と行かないほうがいいと思います。それからさっき子供 が産めなくなるという話をしましたが、あなたの場合はもっと深刻です。 今の生活を続ければ5年以内に半身不随になる可能性もあります。 もっと自分を大切にしてください」といって幾つかの養生方法をアド バイスしたのです。 それから5年後の彼女からの電話は「あのとき、腰が悪くなると言われ たのですが、本当にその通りになってしまいました」というものでした。 悪性のリウマチ性腰椎病で車椅子の生活をしているのだそうです。 気功で表現するならば悪い「気」が彼女の体内に侵入し、風湿性(外部 環境が原因で、水が身体に停滞する、内臓に水が溜まる)の腰痛になっ たというわけです。常に友達に囲まれていた人なのに、友達から逃げる ようにして東京を離れ、今は長崎で生活しているといいました。 彼女の病気の原因は5年前からわかっていました。食生活と睡眠不足、 そして乱れた性生活です。悪い「気」もそのときに入ったものだと思いま す。場所だけが原因ではなく不特定多数の男性との性関係も影響を及 ぼしていると思います。皮肉なことに、病気になって初めて彼女はS氏 にいろんな悩みを打ち明けました。たくさんの男性と関係を持ってしまっ たのも、孤独感を紛らわせる手段としてだったのでしょう。 けれども養生学では、不自然な性行為は天地の法則を無視しているも のであり、身体にも悪影響が出るとしています。性交に関しての書物も 多く存在し、その内容は、 ●性交と健康の関係・原理 ●正しい方法、姿勢、時期、相手の選択方法 ●病気の治療方法 ●関連漢方薬とその処方・製造法 の4分類にわけることができます。 養生学にも禁欲生活を勧める考えと、性交は有益とする流派が ありますが、男女の存在は陰陽の法則によるものであり、これら を理解した上での行為は、生命力にとっても意味があるものだと 思っています。 現在、性非行はどんどん低年齢化していますが、自分の生命力 を育てる時期に性交渉がプラスになることはありません。 不倫、売春などの乱れた性行為も、自然の法則に逆らっていると いうことを心にとめておいてもらいたいとおもいます。 ★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★ 軽に出来る健康法 〜毛髪 髪を使った健康法は毎日、朝、昼、晩に髪をとかすだけですが、効果 は広範囲にわたります。ざっと紹介するだけでも『頭部の血液の循環』 『気血の調整』『全身の経路の調整、調和』『内分泌バランスの調整』 『老化防止』『肝臓・肺機能の調整』『視力改善』『体内陰陽寒熱の調 整』『体力増強』などです。方法は手ぐしでもブラシでも何でもかまいま せん。前から後ろに。後ろから前に。左から右に。右から左に。という順 番に20回ずつ梳いてください。慣れてくれば100回ずつにまで増やしま す。頭に張りめぐらされた全身のツボを刺激させます。 ▽ 手軽に出来る健康法 〜耳〜 ▽ 耳はツボの集中地帯です。耳は聴覚器官ですが、それ以上に神聖な ものに見られることがあります。耳の形は腎臓とよく似ているために、養 生学では、『外腎』と呼びます。また胎児の形を表現していると指摘す る人もいます。いずれにせよ、耳は全身の状態を映し出す大切な器官 であることは間違いありません。 耳の中には内臓や全身の「経路」に対する反射ツボがたくさん存在す ることが確認されています。反射ツボへの鍼治療は、皮膚治療、慢性 病、薬アレルギー、老眼、胃腸機能失調、高・低血圧、肩こり、関節痛 などに効果があります。とはいえ自分で鍼を刺すことは出来ませんか ら、鍼灸院などへ足を運ばなければなりません。自宅で手軽に出来る 養生法はマッサージです。両手の親指を裏側に、人差し指と中指を表 側にあてて耳をつまみます。両面を左右同時に上下方向へマッサージ します。これを1日30回して下さい。全身の『経路』を刺激することにな りますから、自然と生命力が高まります。 もう一つ、古典的に有名なのが『鳴天鼓』で、これも有効です。両手で 耳を押さえ、指は後頭部に置きます。人差し指は中指の上に乗せ、人 差し指を滑らすように頭蓋骨をたたきます。そのときの振動音が身体に 影響を与えるという健康法です。これも毎日行うことにより運動促進、 耳膜老化防止、鼻・耳・口・のどの通りを良くし、脳の血流改善などに 効果があるといわれています。 他にも刺激を与えることで、反射作用で内臓の機能を回復することが 科学的に立証されているポイントが全身にあります。爪楊枝などで刺 激を与えたとき、心地よい痛みを感じるところが、あなたの弱った臓器と 繋がっています。今ではよく見られるようになった、手足の簡単な関連 臓器のポイントがわかるイラストなどがありますが、それをすべて覚える 必要はありません。身体にはこれだけたくさんの関連臓器のポイントが あるのだということを理解してもらうだけで充分です。そして自分が刺激 を与えたときにどこが異常なのか、複数の場所でチェックしてみて下さ い。足の裏を刺激したとき、手のひらを刺激したとき、全てのポイントが 同じ臓器と関連していれば弱っている可能性が高いでしょう。さあ、あな たはどうですか?さっそくチェックしてみて下さい。 **************************************************************** 正しい「呼吸」を行えば、 あらゆる病を治療させる力となります。 なぜなら、現代病の多くが、 細胞の酸素不足から生じているからです。 健康を保つには、毛細血管のすみずみまで、 酸素を行き渡らせることが重要となります。 ところが、現代人はストレスによって毛細血管を縮めて、 スムーズに酸素を運ぶことができずにいます。 また、不自然な姿勢をするため、血流を阻害し、 ストレスに対して弱くなっているのです。 健康を保つには、身体のすみずみまで 酸素を行き渡らせることのできる 全身呼吸「氣の呼吸法」が有効です。 氣の呼吸法は、神道のみそぎの呼吸法 「永世の伝」から来たものです。 氣の呼吸法の特徴は、心身統一して行う呼吸、 つまり自然体で行う自然な呼吸であることです。 毛細血管に至る身体のすみずみまで血流が良くなるので、 糖尿病の人は血糖値が下がり、冷え性や花粉症なども克服できます。 心が静まることで、自律神経失調症やうつなども克服できるのです。 ◆ 人間は天地自然と一体である 人間の始まりはいったい何だったのでしょうか。 人間のみならず、すべての物体の起源をたどれば、 何かがあった状態から生まれてきたと言うほかありません。 つまり、無限に小なるものから生じてきたということです。 その無限に小なるものの無限の集まりを総称して 「氣」と言いいます。 太陽も地球も草木も動物も、また人間の心も身体も皆、 この「氣」より生じたということになります。 この天地自然の本質である「氣」から、 さまざまな相互作用が起きて、 現在の天地自然が形成されたのです。 私たち自体、天地自然と一体であり、 私たちの生命は、天地自然の生命の一部なのです。 ◆ 氣は出せば入ってくる 氣は、私たちの中に実在する無尽のエネルギーです。 それを上手に活用することで、よりよい人生を築く鍵をなります。 真の「充実した人生」とは、 天地の氣が心身ともに充実している人生と言えます。 私たちは「天地自然の一部」なので、 自分の氣と天地自然の氣が常に交流しているのが 当たり前です。 「天地の氣」と「五体の氣が」よく交流していることを 「生きている」また「息をしている」と言います。 人間は氣を出すから、天地より新たな氣が入り、 天地の氣と五体の氣が交流するのです。 常に天地の氣と交流することにより、 人間の生命力は高まり健康になるのです。 天地自然は、生成流転して瞬時として止まることはありません。 天地は常に動いています。 ◆ 自分の心の状態を知る 氣の呼吸法を日々行うと、 呼吸が静まるとともに心が静まります。 心は波静まった水面の如く、すべてのものを明らかに映し出します。 心の状態は水面と同じで、不安や動揺、緊張などで 波立っているときは目の前のことを何も見えなくします。 水面が静まっていると、鏡のように、月は月として 鳥は鳥としてあるがまま映し出すのです。 一番大切なことは、私たち人間の本来の姿、 すなわち天地自然に生かされている事実に氣づくことです。 そうすることで、天地自然に対する感謝の心を 私たちに思い出させるのです。 ◆ 正しい姿勢が病や故障を未然に防ぐ 日常生活で常に正しい姿勢ができていれば、 誰でも心と身体が健康な生活を営むことができます。 病や故障を未然に防ぐことができるのです。 しかし、姿勢が悪いとその血流が阻害されるため、 あらゆる病氣の原因となります。 正しい姿勢とは、最も楽で、最も安定していて、 いつでも動くことができる姿勢です。 天地自然の理に合った最も自然な姿勢なのです。 ◆ 心身統一の四大原則 心身統一とは、「天地自然と一体になる」ということです。 天地自然の理に合わないことをすると、 天地自然からのメッセージとして、 自分や自分を取り巻く環境に何らかの不調を来たします。 心と身体は一つのものなので、 心身ともに、天地自然の理に合った使い方をすることが不可欠です。 心身統一を誰でもできるようにまとめたのが 「心身統一の四大原則」です。 この四大原則は天地自然と一体になるための具体的な方法です。 <心身統一の四大原則> 一. 臍下の一点に心をしずめ統一する 二. 全身の力を完全に抜く 三. 身体の総ての部分の重みを その最下部におく 四. 氣を出す ◆ 心を静める場所「臍下の一点」 私たちはいつでもどこでも、心を静めることが大切です。 その心を静める場所がすなわち「臍下(せいか)の一点」です。 古来、東洋では下腹部を「臍下丹田」と称して これを非常に重視しました。 人間の本当の力は、この臍下丹田から生ずると 考えられたのです。 下腹は肉体的な力をこめる所ではなく、心を静める所です。 臍下丹田と言うと、広く下腹部を指してしまいます。 下腹全体を意識していては力が入るのも当然です。 そのため、下腹の力の入らない無限小の一点を 「臍下の一点」と名づけたのです。 臍下三寸(へそしたさんすん)と言ったところです。 この無限小の一点に心を静めると、 肉体的な力が入ることなく強く安定した下腹ができます。 臍下の一点に心を静めることを、 「心を統一する」「心を集中する」というのです。 臍下の一点に心を静め、下腹が充実することで、 心に落ち着きが生まれます。 ◆ リラックスが最強の状態
人生においてリラックスすることは非常に大事なことです。 リラックスしているときは弱いと思われがちですが、 実際は、正しいリラックスは非常に強いのです。 リラックスというのは、 のびのびと自然の状態に任せることを言います。 重みを落ち着くべき所に落ち着けるからリラックスできるのです。 上体の重みの落ち着く所が、臍下の一点です。 臍下の一点という力の入らない一点を見つけて、 初めて全身の力を安心して抜き、 身体の各部の重みがそれぞれ落ち着くべき所に 落ち着くことができ、リラックスできるのです。 ◆ 人間は落ち着いているのが当たり前 物体の重みを落ち着くべき所 すなわち最下部におくことを落ち着きと言う 総ての物体の重みは、その最下部にあります。 人間も一個の物体なので、リラックスしたら、 身体の総ての部分の重みが、その最下部にあることは当然です。 そうすれば人間はリラックスしていたら、 いつも落ち着いていることになります。 自然に心の波も静まってきます。 ◆ 氣を出す 私たちの生命は天地自然の氣の一部です。 我が五体の氣が天地自然の氣と交流していることを 「生きている」と言います。 氣を出すから新しい氣が、 体内に入って来て流通がよくなります。 それならば人間は生きている間は、 氣が出ているのが自然の状態であると言うことができます。 氣が出ている状態とは、 天地自然の氣と交流しているということです。 それには、心を積極的に用いることが大切です。 「氣を出す」には、まず自分の心の中で 「氣が出ている」と決めて、 何事にも自分から氣を向けて行動を起こすことです。 臍下の一点を保持していれば、 自然に「氣が出ている」状態になっています。 自分という存在が天地自然の一部であることに氣がつくことで、 正しくリラックスできます。 ◆ 心身統一の状態で呼吸する 氣の呼吸法では、呼吸の方法より、 「心身統一した状態で呼吸する」ことが大切となります。 <氣の呼吸法の実践方法> 1. 心身統一した姿勢を確認する 正しい姿勢になるためには、まず肩を上下して、 一番楽に肩を上下しやすい位置を探ります。 上下したあと、手を太ももの上に軽く置きます。 2. 静かに吐く 息を吐くときには、出口の頭部の息から始まって、 胸・腰・脚・足先と順番に息が出ていくイメージを 持つと楽にできます。 3. 吐くに任せる 吐く息をそのままに任せておくと、 次第に少なくなって無限小に静まっていきます。 4. 吸うに任せる 天地自然の精氣を体内に吸収することです。 吸った息が足先から入って、脚、腰、胸、頭と徐々に 満たされるイメージを持つと楽に吸うことができます。 5. 出づるに任せ、入るに任す 吐く息、吸う息をくり返します。 心身統一した姿勢で息を吐けば、 吸う息は自然に入ってきます。 ◆ 生命力が高まる 氣の呼吸法を行えば、 全身に生命力がみなぎり、プラスの心と身体となります。 また、全身の息を入れ替えるばかりでなく、 氣の修練のうえで、大きな意義があります。 自分の吐く息が、目前で消えるのではなく、 天地自然の果てまで及ぶのだと思って吐く。 すなわち、氣を出して吐くのです。 そして、体内の氣を悉く体内に取り入れ、臍下の一点におさめる。 このとき、全身に、清新の氣が充満するのです。 自分が呼吸しているというよりも、 天地自然の氣と交流している感覚を持っています。 「我が天地か天地が我か 即ち 天地と一体となる至妙境に至る」 **************************************************************** あなたは本当に健康ですか?
バブル崩壊以来の不景気が長引くなか、売り上げが伸びている業界があります。それは健康食品や健康グッズなどの「健康産業」 です。人々が「健康」とか「元気」、「若さをとり戻す」などの広告に すぐ飛びついてしまうのは、それだけ健康や元気に自信が持てない からではないでしょうか。もしも健康に自信があるのなら見向きも しないはずです。 お医者さんに診てもらうほどの症状ではないけれど、なんとなく疲れ やすい。病気というほどではないけど、健康というにはもの足りない。 そんな未病状態の人は明らかに増えています。 多くの方が、世間話のついでに健康に関する相談を持ちかけて こられます。ほとんどの場合、何らかの問題を抱えた未病状態 です。「最近、酒に弱くなった」「精力が衰えた」「疲れやすくて」 とこぼす人は、それが身体の不調の自覚症状とは思っていません。 年齢的なものからくる身体の衰えくらいにしか考えていないよう ですが、未病とは、薬などの治療手段を用いなくても、食事や 睡眠といった日常生活を改善することで改められる段階を示す 東洋医学独特の考え方で、放っておけば将来必ず爆発する 病気の巣です。生命力が弱っているからこそ、未病となっている のです。 以前にもご案内しましたが、どんなに気を配っていても、人生の 中ではある段階にさしかかると、生命力が転換期を迎えるため 注意が必要な時期がやってきます。それを昔の人々はささまざまな 習わしやいい伝えにより残してきました。たとえば七五三のお祝い もその名残りだと思われます。乳児から幼児へ、そして児童へと成長 する過程において体力や能力そして生命力も変化していきます。 同じように厄年と呼ばれる年齢も養生学から見れば非常に大切 な時期です。女性の厄年は19歳と33歳ですが、昔の日本女性の 平均年齢、社会年齢から見れば19歳は出産を経験し身体に負担 がかかりやすい頃、またかつては結核が最も発生する年齢といわれ ていました。 33歳はそろそろ更年期にさしかかり、身体の変調をきたすことが 多い年頃です。事実、子宮ガンや乳ガンもこの時期に発病すること が多いといわれています。もちろん男性の厄年にもそれなりの説明が できます。男性の25歳は、成長期が終わり、成人病の芽が出はじ める時期です。大厄である42歳も注意が必要です。若い頃なら どんなに徹夜しても平気だったけれど、いつの間にか疲れが残るよう になった。酒に弱くなった。精力も弱くなってしまったという人が急に 増えるのが40歳前後なのです。働き盛りだけに、無理もしてしまう 年代です。そして60歳は、ガンが最も多発する年代の入り口です。 壮年から老年へと体力も落ちていきますから、用心するに越した ことはありません。厄年になったら、未病の状態に陥る可能性が 非常に高くなるのだと意識して、1年を通じて生活に注意を払うの は賢明なことだと思います。 『黄帝内経』という中国の書には、腎精は年齢と反比例して衰えて いくという一文があります。腎精とは、生命力の強さ、バロメーター といったところです。 男性は8の倍数ごとに、女性は7の倍数ごとに節目が訪れるので 注意せよと記されています。「女性は7歳で女の子らしくなり、14歳 で初潮を迎える。ピークは28歳で、49歳で閉経する」一方、「男性 のピークは32歳で、64歳で生殖能力を失う」とあります。 このほかにも、風習や迷信と呼ばれるものの中には、何らかの意味 があり信憑性があることも少なくありません。先人の経験と知恵に より継承されてきたこれらの戒めを再認識することも、生命力にとって は必要ではないでしょうか。 ★☆ 感情と臓器 (思の養生) パート1 ☆★
イライラする生活が続くと、ストレスが溜まり胃潰瘍などを引き起こす ことがありますが、このように感情と健康には密接な関係があります。 養生学では感情を七つに分類しています。 喜・怒・憂・思・悲・恐・驚 の七種類でこれを七情といいます。また、 人間の持つ基本的な六種類の欲望と併せて七情六欲と表現してい ます。 七情六欲とは道教思想の陰陽五行説が柱となっている考え方で、 人間の七情六欲が病気の発生原因であり、これらをコントロールでき れば、病気を治すことも予防することもできるといわれています。 養生学での六欲とは、眼・耳・鼻・舌・身・意の六種類。つまり、見た い、聞きたい、匂いを嗅ぎたい、食べたい、触りたい、行ないたいであ ると考えています。 これら欲望や感情はそれぞれ内臓へ影響を与え、それにより「気」 「血」「津液」のバランスも崩れていきます。 感情は顔だけでなく、全身で表現するものです。興奮したとき、 驚いたときは顔だけでなく、身体の筋肉や血液の流れ、手足の動き にもその反応が現れます。 全身で反応しているのですから、当然内臓にも影響があるはずです。 失恋すると食欲がなくなりますし、緊張したときは胃が痛むのは、 七情六欲の原則にあてはまっているのです。 感情と身体の関係を伝えるエピソードに「伍子胥過関一夜白頭」 という故事があります。 ↓ 『 中国の春秋時代、伍子胥(ごししょ)という将軍が戦いに敗れ逃げる途中、 閉じた城門にぶつかりました。後ろからは敵が追いかけてきます。 一晩中、試行錯誤を繰り返し、翌日何とか門を開けさせることができ、 国へ帰ることに成功しました。しかし帰国したとき、彼の髪は真っ白 になった 』という言い伝えです。 彼は七情の中の「思」を行ないすぎた為。胃腸の働きが低下。それ により内分泌の機能が調節不能となり白髪になったのです。また 突然の恐怖に襲われたとき、無意識のうちに大小便が出てしまう ことがあります。恐怖心や驚きが腎臓、胃腸に伝わり排便行為が 起きたと考えられます。七情と密接につながっているとされる内臓 の関係は次の通りです。 【七情と臓器の関係】 喜 ・・・・・ 心臓 怒 ・・・・・ 肝臓 憂 ・・・・・ 肺 思 ・・・・・ 胃腸 悲 ・・・・・ 脾臓(膵臓) 恐 ・・・・・ 胆のう 驚 ・・・・・ 腎臓 <喜 (喜傷心)> 喜は七情の中で唯一、人体に対してプラスの作用をする感情です。 しかし、過ぎれば身体に対して害にもなりかねます。かつて中国に 科挙という試験制度があった時代の話ですが、ある国の範進という 若者が科挙試験に臨みました。科挙試験は中国全土からエリートを 選抜する為の制度で、合格すれば自分の将来だけでなく一族まで 安泰が保証されると言われたほどの難関です。範進も一生懸命 勉強したのですが、結果は不合格。それでも夢を捨てきれずに 翌年も受験しましたが、またしても不合格。こうして年に一回上京 しては試験に落ちるという人生を送るようになったのです。 やがて月日は流れ範進は70歳の老人になっていました。もちろん 受験合格の悲願は捨てていません。発表当日、範進が合格発表を見 にでかけると、まさに自分の名前が掲示されているではありませんか。 それを見るなり範進は「う〜ん」とその場に倒れてしまいました。介抱 されて目を覚ました後も「受かった、受かった」といううわごとを繰り 返すばかり。結局、精神に障害をきたし、そのまま人生を終えてし まったといいます。 この故事から「範進中挙」という言葉が生まれました。「長期間の 苦労が実っても必ずしもよい結果とはならない」の意味です。 喜ぶという感情は、基本的には健康にはプラスですが、喜びすぎる と心臓に負担をかけてしまうことだってあるのです。 < 怒(怒傷肝) > 怒るという感情は肝臓と関連しています。文化大革命当時、中国 では意味もなくお金持ちや文化人芸術家たちが批判され、職を奪 われるなどの迫害を受けました。被害に遭った人々は、やり場の ない怒りを抑えることしかできませんでしたが、当時は自殺のほか に肝臓を壊してしまう人が非常に多かったといいます。これは「怒り」 という感情が肝臓に作用したという例でしょう。陰陽五行で見れば 肝臓の性質は「木」。非常に燃えやすい陽の「気」の固まりです。怒り が過ぎれば肝臓の機能もオーバーヒートしてしまうのです。逆に 言えば肝臓に不安があるという方は怒らないような努力が必要です。 **************************************************************** ★☆ 感情と臓器 (思の養生) パート2 ☆★ 【七情と臓器の関係】 喜 ・・・・・ 心臓 怒 ・・・・・ 肝臓 憂 ・・・・・ 肺 思 ・・・・・ 胃腸 悲 ・・・・・ 脾臓(膵臓) 恐 ・・・・・ 胆のう 驚 ・・・・・ 腎臓 今週は前号の続き、「憂」からお話します。 < 憂(憂傷肺) > 憂うという感情は肺と関係が深いとされています。肺は空気を取り 込み全身へ「気」を送る役目を負っています。「気」の流れを調節す る肺にとって心配性は大敵です。心配事を抱えた人は、弱々しい ため息をつきます。これは肺と意識の関連が強いことの証です。 人にやる気や前向きな気持ちがなくなると、肺も積極的に酸素を 送ることをやめてしまいます。さらに悩みが長期間にわたれば顔色 が悪くなり、声も小さく、心もどんどん後ろ向きになっていきますが、 これらもすべて肺の「気」が積極性を失ってしまった現象だといえる でしょう。 < 思(思傷胃) > 日本人が一番注意しなくてはいけないのが思という感情です。考 え事に熱中すると食欲も出てこないことがありますが、考えすぎ、思 いすぎは胃の消化力にマイナスとなります。医学的に見ても、脳の 活動が活発になるときは大量の酸素が必要となりますから、胃腸が 必要とする酸素まで手が回らなくなってしまいます。また考え事が 頭から離れないと、どんなにおいしい食事も味がわからなくなってし まいます。テレビで胃腸薬のCMが一年中オンエアされているのは、 それだけ日本人が悩みすぎ、考えすぎといってもいいのかもしれません。 < 悲(悲傷脾) > 悲しいという感情は脾臓(膵臓)とつながっています。膵臓は胃腸 と密接な関係をとり、膵液を分泌させ消化吸収の働きを助けています。 悲しい気分や落ち込んだときは気が抜けた状態となります。失恋し たときには、食欲がなくなるだけでなく、倦怠感に襲われ、肌や髪の 毛が荒れてしまうのも、膵臓の力が弱っているからだと考えられます。 悲しいという感情と、思い悩むという感情は非常に似通っています。 また怒りを通り越して憂鬱な気分になることもあります。感情が変化 するように内臓も互いに影響を与えたっているのです。 < 恐(恐傷胆) > 驚きに恐怖感をともなうのが怖いという感情です。恐いは胆のうと 結びついています。胆のうは、肝臓の「気」を調整する補佐的な役割 を果たしている臓器です。恐いという気持ちは身体や手足を震わせ てしまいますが、逆に胆のうが強い人は、勇気があるとも言います。 「肝っ玉が大きい」の肝っ玉とは胆のうのことなのです。 < 驚(驚傷腎) > 突然のショックや急な感情の変化を受けると小水を漏らす人がい ます。これは驚くという感情が腎臓と関連しているからです。腎臓の 働きは血液中の老廃物を濾しとり、尿に変えて体外に排出すること ですが、驚きの感情は、腎臓に刺激を与えてしまうのです。同じよう に驚いたときには冷や汗をかいたり、動機、血圧異常の経験がある という方も多いと思いますが、これは腎臓周辺の副腎皮質が刺激を 受けたからだと考えられています。 ★☆ 表情と臓器 (思の養生) ☆★ また、感情は表情と密接につながっています。表情はそのときの 心の動きだけでなく、内臓のようすまで映し出している鏡です。 表情が良くなれば内蔵機能も自然と改善されていきます。 「笑一笑十年少(一回笑うと十歳若返る)」ということわざもあれば、 「一回のため息が十日命を縮める」という言葉もあります。表情や 感情はそれほど、私たちの生命力に影響を与えているのです。長い 間につくられた表情は必ず健康にも関係してきますから、仕事柄 笑うことが少ないという方は、プライベートの時は表情をゆるめる 努力も必要です。 面相、手相はどんどん変わっています。泥棒の目つきや人相が 悪いのは、生まれつきではなく環境が原因です。見る人が見れば、 人間性や道徳性まで看破されてしまうものなのです。逆に言えば 「いい夢を持っている人。理想に向けて努力している人」はいい表 情をし、身体の調子もいいはずです。自分の人生や生命の変化 の方向は、ある程度自分で決めることができると思います。 ★☆ 行の養生 ☆★ 体内には生命循環の時刻表がある 感情が内臓に影響を与えたり、五感が生命力を強化するという話を 前に述べましたが、意識と内臓はどうつながっているのでしょうか? 漢方や道教の世界では、意識の存在を「気」であるととらえています。 脳や内臓、そして顔や手足は「経路」で結ばれています。 身体の中に縦横無尽に走っている「経路」を線路にたとえると、「気」 は電車になります。そして「気」が立ち寄る場所であるツボや臓器は 駅といったところです。 生命力という電車は常にこの線路を走っていますが、実は時刻表も 存在しているのです。いつ、どこの駅で変化が起こりやすいのでしょ うか?何時ごろ整備しやすくなるのでしょうか? 科学的に検証される以前から、気功などの養生法もこの時間に合わ せて行えば効果が高いことが伝えられてきました。『黄帝内経』には 「人与天地相参也、与日月相応也」(人と天地はつながっていて、 日と月とはお互いに影響しあっている)、「人以天地之気生、四時之 法也」(人は天地の「気」の中に生きていて、四季の法則にしたがっ て成長する)という記述があります。 それでは、養生学が発表している各駅の時刻表をみてみましょう。 人によって個人差はありますが、臓器別の変化が発生しやすい時 間帯は以下の通りです。 【臓器に変化が起きやすい時間帯】 臓器 時間帯 肺‥‥‥‥‥‥‥ 3〜5時 大腸‥‥‥‥‥‥5〜7時 胃‥‥‥‥‥‥‥7〜9時 膵臓(脾)‥‥‥‥9〜11時 心臓‥‥‥‥‥‥11〜13時 小腸‥‥‥‥‥‥13〜15時 膀胱‥‥‥‥‥‥15〜17時 腎臓‥‥‥‥‥‥17〜19時 前上半身‥‥‥‥19〜21時 後上半身‥‥‥‥21〜23時 胆のう‥‥‥‥‥23〜1時 肝臓‥‥‥‥‥‥1〜3時 変化が発生しやすい時間帯とは、外からの刺激の影響を受けやすい 時間でもあります。その人の体質だけでなく弱った部位を見極めて、 その臓器にプラスになる時間を考慮する必要があります。時間帯 によって効果が倍増することもあれば半減してしまうこともありので す。 薬を各臓器の時刻表に合わせて利用すればより高い効果が得られ ます。心臓病の方なら、お昼前後、胃腸薬を朝7〜9時ごろ服用す れば、他の時間帯よりも効き目が早く強いと言われています。 更に内臓が外からの刺激を受けやすいということは、マイナスの面 の変化も起きやすい時間帯にあります。だから、その時間は臓器に 極度の負担をかけないように注意する必要があります。例えば朝食 の時間帯にあたる7〜9時は胃に変化が起きやすいので、朝から暴 飲暴食は胃にダメージを与えています。 心臓の刺激を受けやすい時間は昼時ですから、激しい運動は避けた ほうがいいでしょう。胆のう・肝臓に変化が起きやすい23時以降は、 養生学では飲食をしないようにお勧めしています。 皆さんは、どうですか?日頃の心がけで違ってきます。ちょっと気に かけてみてください。 ★☆ 行の養生 ☆★ 体内には生命循環の時刻表がある ? 痛みや特定の症状も時間や季節と関係しています。中国では臓器の 異変による死因と死亡時間の関係も調査されています。どんな病気 が原因でなくなったのか、統計を取っていくと、下記のような一定の 規則が確認されているのです。 【身体の状態・症状と時間帯の関係】 分娩時間(出産が一番多い時間帯)‥‥‥‥‥‥‥‥3〜5時 失明時間(目の機能が低下する時間帯)‥‥‥‥‥‥2時 出錯時間(徹夜作業でミスが多発する時間帯)‥‥‥‥3〜4時 疲乏時間(血圧が一番低く、疲れがたまる時間帯)‥‥4〜5時 最旺盛時間(インシュリンの分泌が最多の時間帯)‥‥6〜8時 就医時間(皮下注射の反応が最も鋭くなる時間帯)‥‥9時 創造時間(脳の活動が最も活発な時間帯)‥‥‥‥‥10〜12時 消化時間(胃酸の分泌が最も活発な時間帯)‥‥‥‥13時 手工作時間(手指などの敏捷性が増す時間帯)‥‥‥15〜16時 成長時間(毛髪・爪などが最も成長する時間帯)‥‥‥16〜18時 感覚時間(味覚・聴覚など五感が最も敏感な時間帯)‥17〜19時 学習時間(記憶力が最も良くなる時間帯)‥‥‥‥‥‥18〜20時 美容時間(肌の新陳代謝が最も良くなる時間帯)‥‥‥20〜21時 夫妻時間(最も孤独感に襲われる時間帯)‥‥‥‥‥21〜22時 陰陽交代時間(陰陽が逆転する時間)‥‥‥‥‥‥‥23時 次に季節との関係を見ると、最も注意が必要なのが春先です。春の 季節にちなんだ言葉に「春先は病みやすい」「春温を病む」「春愁の 季」などがあります。体内に潜伏していた冬の寒邪(陰性の「気」) が、暖かくなると熱を伴い体内から出てきて陽気にあたるため病を 生じるのだといわれてきました。確かに、気圧、気温、日照時間とい った気象の変動が激しくなり、それに体内調整が追いつかなくなって 弊害が出やすくなる時期です。事実、早春の頃は寒い日と暖かい日 が続く、三寒四温の時期。更に春は昼と夜の温度差がありますから、 体調管理が一層厳しくなります。 では、臓器別に季節とのかかわりを見てみましょう。肝臓病は春が 一番危ない時期です。夏になると少し落ち着き、秋に再び発症しや すくなります。心臓病は冬が最も多く、夏も要注意の時期です。夏 から秋にかけては膵臓のトラブルに注意してください。肺は秋の発 生が一番多いので、他の病気であっても秋は肺炎などの合併症 に気をつけるべきでしょう。腎臓の注意時期は夏の終わりから初秋 と冬の2回。また、満月や新月は生理痛が重くなったり、出血をとも なう病気を起こしやすいともいわれています。 自然の変化によって、生命や健康の状態は変わってきますし、逆 に体の調子から自然の変化を観察することも出来ます。骨折した 傷がうずいたり、痛風の痛みがひどくなると天気が下り坂になるこ とがわかるのも、この理なのです。自然にはカレンダーがありませ んが、カレンダー通りに季節はめぐり、花が咲き、動物たちも活動し ます。自然からのメッセージや法則をもっと知れば、あるいはもっと 読むことが出来れば、生命にとってもプラスになることは間違いない と思います。 |