槍ヶ岳 《My山行Memo1998年に戻る》

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槍ヶ岳



山行日   5月2日(土)〜5月5日(火)
山行先   槍ヶ岳(山域 北アルプス)
天 候   5月2日(土) 晴れ後曇り雨 5月3日 大雨後快晴 5月4
日 快晴

行 程

 5月2日(土)

 新宿(アルプス夜行‥11:50発)→松本(4:10着・4:22発)→
新島々(4:40着・4:57発バス)→上高地(5:51着・6:50発)
→明神小屋(7:47着・8:00発)→徳沢小屋8:45着・9:00発)
→横尾山荘(10:13着・10:37発)→一ノ俣(11:32着・12:
08発)→槍沢ロッジ(13:00着) 宿泊

 5月3日(日)

 大雨のために1日ロッジで停滞する。

 5月4日(月)

槍沢ロッジ (2:40)→ババ平 (3:35・3:50)→大曲(おおまがり)(4:35)→モレ
ーン上 (5:10・5:50)→殺生ヒュッテ (6:50・7:20) →槍ヶ岳山荘
(8:04・8:35)→槍ヶ岳山頂 (9:00・9:30)→槍ヶ岳山荘 (10:05・10:30)→
槍沢ロッジ (13:22・14:10)→横尾山荘 (15:40・15:50)→徳沢小屋
(16:39)→明神小屋(17:17)→かっぱ橋 (17:50・6:40)―
タクシー→松本(19:20・12:37 急行アルプス)→三鷹


感 想

 今年の5月のゴールデンウィークの雪山シリーズは、槍ヶ岳山行である。
六つ星山の会総勢14名、その内全盲の方が2名、弱視者が2名、後の10名
は晴眼者で男性11名、女性3名の大部隊である。その内後発隊の11名が早
朝上高地に到着した。 スピーカーから登山届けの提出を盛んに呼びかけてい
る。毎年このゴールデンウィークには遭難者がでるが、今年はそんな悲しい出
来事の無いように祈るばかりである。しかし、上高地のバスターミナルは登山
者で混雑していて相変わらずゴールデンウィークの賑やかさを見せている。夜
行で来たのであるがどこか眠気はすっ飛んで、これからの槍ヶ岳山行に心も体
も燃えている感じで、2年ぶりの上高地の朝の空気を吸ってこれから始まる槍
ヶ岳のドラマに気合いは十分に入って些か興奮気味である。朝食を十分に食べ
てサア、これから出発である。新しくなった河童橋を一寸渡って、遠くに白く
輝く穂高岳の連峰を見て、改めて上高地に来た感触を感じ、梓川に沿ってまず
は明神小屋に向かった。

 それにしても雪が全くない。これでは夏の上高地と変わり無くその時の季節
によって随分と違うもので、初めて5月の上高地に来たときには一面行きに覆
われていて、新緑とマッチしてとても良かったが今年はそのコントラストが見
られないのは残念である。みんなザックザックと靴音も軽快に、いい顔をして
話をしながら少しもやっている朝の上高地を歩いている。ニリン草がびっしり
と群生して可憐な花をつけて私達を歓迎しているようである。梢ではヒガラが
気持ちよさそうに鳴いている。梓川の流れは雪解けの水をたたえているのか水
量も多くキラキラと朝日に輝いて光って見える。他の登山者も皆、意気揚々で
穂高、槍ヶ岳とそれぞれに思いを馳せて和気藹々で歩いている。そうこうして
いるうちに明神小屋に到着した。ここで一本建てて徳沢小屋に向かう。途中で
むせんで先発隊の3名と話をする。この3名は5月1日に一足先に上高地に着
いて、上高地散策を楽しんでいて、徳沢小屋で落ち合うようにあらかじめ決め
ていたのである。しかし、この上高地歩きは行きは何てことはないが帰りは疲
れて上高地のバス停までが長く感じて疲れた体には堪えるアプローチである。
徳沢小屋に着くと3名が手を振って迎えてくれた。サア、ここから14名一団
となって一路横尾山荘に歩を進める。

 14名も仲間がいると、いろんな人がいるものでザックが重くてフラフラし
ている人、ここでフラフラしていたのではこの先心配であるのだが・・・
(^^;)  腰を痛めて動作がぎごちない人、この方は良く腰を痛める人で、朝日
連峰の縦走の時に狐穴小屋でギックリ腰になって、散々なおもいで下山した苦
い経験があるが、それ以来腰の調子が今一悪いようである。横尾山荘を過ぎて
一ノ俣で昼食をとって沢沿いにやり沢ロッジに向かう。登山道の脇にミヤマキ
スミレが可憐な花を咲かせて眼を楽しませてくれる。二の俣の吊り橋を渡ると
程なくやり沢ロッジに到着した。今夜はここで宿泊して、いよいよ明日は槍ヶ
岳を目指して登山をすることになるのであるが天気がどうも下り坂で到着して
間もなくポツポツと雨が降ってきた。 (^^;)

 ロッジに入り早速宴会モードでワイン、焼酎、ビールとお酒のオンパレード
で皆、気持ちよさそうに飲んだり、おつまみを摘んだりして話をしている。外
は雨が一段と強く降ってきて明日が思いやられる天気になってきた。スッカリ
酒も回ってきたので一寝入りするとすぐに夕食になって早いとこフトンに入っ
て寝てしまった。夜中になると雨と風がものすごく降ってきて槍ヶ岳の登頂を
拒むかの如く盛んに降っている。その雨が朝になっても止まず、益々風雨は強
くなるばかりでこの最悪の中を突っ込んで行くのは無謀に近いので躊躇をして
いたが、 槍ヶ岳からの下山者の言葉で行動は決定した。 下山した登山者の曰
く。登山道が雨のために濁流となって深い所は腰まで水があるとのことで高巻
きも危険だとのこと、それを聞いて皆、停滞に納得してもう一晩ロッジに泊ま
ることにした。

 4日は2時40分にロッジを出発し、これからピストンで槍ヶ岳登頂して戻
ってこようという計画で、夜空に大きな星々が輝く中を14名、歩を山頂へと
進める。ババ平に着くとテントが張って在って、明かりがそこから漏れて夜の
闇にポッカリと浮かんでとてもきれいである。ここからアイゼンを着けて沢沿
いに雪渓の上を進んでいく。当たりは白々としてきて荘厳な夜明のシンフォニ
ーを奏でているようで、山の霊気と相まって雪の白と青空のコントラストの光
景の見事さに、暫し簡単の声を上げる。

 途中でモレーンの所で朝食をとって、そこから雄姿を見せる槍の穂先を望ん
で改めて槍ヶ岳の山容の見事なのに感動し、更に急とな雪渓の上を一歩、一歩
進んで殺生ヒュッテに着いてそこでトイレを借り、サッパリしたところで後一
踏ん張り、槍ヶ岳山荘目指して最後の急登に息を乱しながら歩く。30度は在
るだろうか。見上げるとものすごく斜度を感じる。もう槍の穂先は眼前に迫っ
てきた。ようやく槍ヶ岳山荘に到着した。これからイヨイヨ槍の穂先にとりつ
いてまさにテッペンに登ってアルプス一万尺、アルペン踊りでもしようかいと
いう気分で槍の穂先の岩稜に挑む。しかし、実際は返って視障者にとって両手
両足が効く、岩稜の歩きの方が3点確保で歩けるので人が思うより視障者は案
外平気なものである。二人の全盲の方もサポーターの誘導に従って軽妙にピッ
チを上げて山頂へ、山頂へと鉄梯子やクサリを難なくクリアして登っていく。
「着いた、 着いた、 着いた槍ヶ岳のテッペンに・・・!!  \(^O^)/ 」
先に登っていた登山者の温かい声援と拍手に迎えられて5月の槍ヶ岳山頂に到
達したのだ。 全盲のIさんも3角点を触りながら泣いている。暫し声も出な
いようである。彼の脳裡に去来するものは何であろうか。唇をかみしめながら
感動に打ちふるえているのであろう。
まさに360度遮るもののない展望に今までの苦労が吹っ飛んでいく感じで穂
高連峰、笠ヶ岳、白山、蝶 ケ 岳、 常念岳等々アルプスの峰々がキラキラと輝
いて見える。まさに天井の一大スペクトル天に向かってそそり立つ槍ヶ岳山頂
の光景である。

 槍ヶ岳山荘の前で冷えたビールで一同乾杯して、今日の槍ヶ岳登頂を祝う。
下山は早いもので雪渓の上をアイゼンを効かしてドンドンと下っていく。途中
でシリセードで一気に下っていく。アッという間にテント場のババ平に到着し
た。そして槍沢ロッジに意外と早く着いたので、今日の夜行で東京に戻ること
にした。横尾山荘に着いて小屋の人に聞くと、6時30分にカマトンネルのゲ
ートが閉まるので早く行きなさいと言われたので、時間はすでに3時50分に
なっていたので皆、急いで上高地目指して歩きに歩いた。途中でタクシーを徳
沢小屋で予約して置いたので、上高地についてもバスやタクシーを待つ行列に
悠然として、タクシーに乗り込んで松本に向かった。しかし、4日は朝から夜
まで15時間良く本当に歩いたものだ。 オシマイ