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膝関節は大腿骨、脛骨、膝蓋骨で形成され、大腿脛骨関節と膝蓋大腿関節の二つの関節がある。それぞれの関節面は、軟骨になっているが、大腿脛骨関節には更に半月板が存在し、屈伸運動をスムースにさせている。また、膝蓋大腿関節では、膝の屈伸に際して、膝蓋骨が活動運動を行う。膝は運動のストレス、身体支持のストレス(体重付加)が頻繁に加わ部であるわりに、骨の構造は不安定で、安定性は側副靱帯、十字靱帯などの支持と、大腿四頭筋などの筋肉の機構に遺存している。その為障害を受けやすく、痛みや機能障害が起きやすい。
本症は関節軟骨の退行性変化と、それについで起こる軟骨・骨の増殖性変化によって関節の変形の機能障害を来す疾患で、西洋医学的には、レントゲン所見において骨棘や骨硬化、関節口狭少などの変化を認めるものといわれる。これには、いわゆる老化現象として特にはっきりした原因が無く起こる一次性のものと、他の疾患があって続発的に起こる二次性のものとがあり、鍼灸臨床においてはほとんどが一次性のものと推定される。二次性の変形性膝関節症の原因としては、半月板や側副靱帯・十字靱帯の損傷、骨折などの外傷が多く、習慣性膝蓋骨脱臼、離断性骨軟骨炎、内反(O脚)、外反(X脚)などの変形を引き起こす原因となる。また、一次性といわれるものの発症にも、半月板・靱帯・骨などの因子が複雑に関与し、特に半月障害は変形性膝関節症の発生と深く関わりがあるとするものもある。
変形性膝関節症
変形性膝関節症の病体は、関節軟骨の変成を基盤として半月板、関節包、滑膜、靱帯、筋肉、骨へと進む変性、炎症、萎縮などの因子が様々な程度でお互いに関与しながら作り出された複合障害である。
膝関節痛の40%を呈し、発症年齢は50才〜60才代に多く、男女比では女性の方が3〜4倍も多い。臨床症状としては、膝の疼痛や機能障害を訴えるものが多く、正座、階段昇降、動作開始時の疼痛が特徴的である。また、多角的な所見としては、大腿四頭筋の萎縮、腫脹(関節水腫)、可動域制限、変形などが認められる。
最近はテニス人口の増加に伴い、肘を痛めて病院のスポーツ外来に来院する患者が増えている。骨折や、断裂は別として、いわゆる「使い痛み」と言われる症状に対して鍼灸治療が奏効する。
そこでここでは、テニス肘に代ひょされる習慣性疾患を説明する。
疾患の概要
上腕骨外踝炎(テニス肘)
この疾患について初めて記述したのは、ルンケである(1873年)。テニス肘の名称は、医学雑誌に(1883年)で発表した中に初めて使われている。
病体については、色々な節があるが、1936年にシリアックスは代表的なものとして次の項目をあげている。
骨膜炎、滑液包炎、輪状靱帯の炎症、橈骨神経枝の絞扼性神経障害、伸筋腱の炎症等である。これらにより比較的安静で治癒する外踝園は外傷性刺激による腱端炎や、滑膜炎と考えられる。難治例は、輪状靱帯の硝子様変性や共動伸筋腱の部分断裂と考えられる。
痛みの発症年齢は、30才から50才の女性に多く見られ、スポーツではテニス以外にゴルフ、ボーリングなども含まれる。この疾病はスポーツ以外の人々にも発症するのが特徴で、日常、手や手首に負担をかける農業従事者、、大工さん、工場労働者、縫製業従事者、主婦などである。痛みの部位は、上腕骨外側上顆部を中心に前腕橈側や、いくらか上腕側にも及ぶ。触診すると上顆伸筋共動腱部にかなり強い圧痛があり、橈側手根伸筋腱膜に把握通が見られる。その他、上腕骨橈骨関節裂隙や尺側手根伸筋上にも、圧痛が認められる。
痛みの発生は徐々に起こるが、時に急激に起こることもある。手関節の背屈、回外、回内運動で起こる。例えば、肘関節伸展位で手関節を抵抗化に背屈させると上腕骨外側上顆部に激痛を生じたり(テニス肘テスト)、中指の抵抗過伸展(中指伸展テスト)や前腕を回内、肘を進展して、椅子を持ち上げても痛みを誘発する(チェアーテスト)。軽症例では、上肢全体や肩やての疲労感、こり感、鈍痛、程度だが、重症では不眠を来すほどの自発痛や肘・手関節の伸展障害を伴う。早朝に痛みがあっても、昼間気温の上昇と共に軽減することもある。また、機能的な握力低下が見られる。
テニス選手には、バックハンドテニス肘の方が、フォアハンドテニス肘より多く発症する。
手の関節の痛みで多いのが、腱鞘炎がある。ここでは橈骨茎状突起部の腱鞘炎である、デケルバイン病を説明する。
疾患の概要
デケルバイン病(狭窄性腱鞘炎)
腱及び腱鞘の疾患には、細菌性の炎症によるもの(化膿性、結核性)の他、慣れない手仕事を長時間行ったり、職業的に毎日同じ運動を長時間繰り返すことにより、腱と腱鞘の間に炎症性反応を起こし、通過障害を起こす狭窄性腱鞘炎がある。特に橈骨茎状突起部の腱鞘炎を、1895年以降、発表者の名前を付けて、デケルバイン病と呼んでいる。
運動時に「ギシギシ」という軋轢音を伴う場合もあるので、別名、軋轢制腱周囲炎とも呼ばれる。これは伸筋腱の中で最も頻度が高く、中高年の女性に多い。長母指外転筋腱及び短拇指、伸筋腱は手関節や拇指の運動に際し、橈骨茎状突起末端部に置いて急角度で方向を変えることになり、摩擦が大きくなる。その結果、腱鞘の肥厚、瘢痕化、狭窄、腱と腱鞘感の癒着等を来すことになる。その他、狭窄性腱鞘炎は、長母指伸筋腱、橈側手根伸筋腱及び屈筋腱にも発生する。
(注) バネ現象
別名、弾撥指とも呼ばれる。1850年にノッタが発表した手関節運動機能障害である。原因は、2指屈筋腱鞘有効部の肥厚の、それによる絞扼である。
痛みと時間の関係
狭窄性腱鞘炎は、早朝や夜間に痛む。一般に夜間痛を示す疾患には、慢性炎症性骨疾患、骨軟、慢性骨髄炎、強直性脊椎炎など、悪性のものが多く注意が必要である。
橈骨手根関節に起因する場合は、主に疼痛が手関節の掌・背屈運動時に起こることが多く、遠位橈尺関節の起因する場合は、前腕の回内・回外運動や手関節尺屈時に起こるコとが多い。
股関節の疾患としては、最も多いのが変形性股関節症である。
変形性股関節症
初老期以後に退行変性を主因として、発症する一次性変形性股関節症の、先天性股関節脱臼、先天性臼蓋形成不全、化膿性股関節炎、慢性関節リュウマチ、ペルテス病、特発性大腿骨頭壊死などの疾患に続発する二次性変形性股関節病がある。我が国では先天性股関節脱臼や臼蓋形成不全に由来するものが、70%〜8%をしめるとされている。
変形の進行状態(前股関節症、初期股関節症、進行期・末期股関節症)によって異なる。一般的には、歩行時や運動動作時の疼痛を訴え、日常生活動作全般で障害を訴える場合が少なくない。疼痛は股関節周囲のみ限局せず、殿部、大腿部、膝状部などにも訴えられ、時には診断に困る場合もある。しかし、進行するに連れて股関節周囲の疼痛を訴え、更には動作開始時痛(スターティンブペイン)、疲労時の疼痛、跛行などが出現し、更に進行すると歩行の際に杖を必要とする、日常生活に著しい不自由を来す。
二次性の変形性股関節症の場合には、既往歴、外傷歴、スポーツ歴、もしくは、若いときから運動後の股関節部の違和感を自覚している場合が多い。
足関節の疼痛を引き起こす疾患には、骨折、脱臼、捻挫、打撲などの他、先天性の疾患、悪性腫瘍によるもの、変形性関節症、関節リュウマチ、感染症、更に痛風などの疾患があげられる。また、足根間症候群や足底筋膜炎、アキレス腱痛など、軟部組織の異常を訴える場合も多い。
A 変形性足関節賞
加齢、外傷後の不安定性、関節炎の後遺症などが誘引となって、退行性変成による関節の変形を来したもので、加重関節のために日常生活に支障を来しやすい。
歩行時痛、運動時通、関節の運動制限などを訴える。変形が高度になると階段昇降や正座などが困難になる。
B アキレス腱痛(周囲炎)
アキレス腱の痛みは、腱付着部の慢性滑液包炎(アキレス腱口渇液胞、漿液滑液包など)、腱炎・腱周囲炎(アキレス腱を囲んでいるパラテノンの炎症)、腱停止部の仮骨形成などによって起こる。過渡のスポーツやストレスが原因となり、また、きつい靴の踵部分での摩擦によって発症することもある。
歩行、跳躍、同部への負荷がかかる運動動作によって疼痛が起こる。
C 足根間症候群
内踝窩縁と屈筋支帯、踵骨、距骨によって構成される間隙を、足根間(トンネル)と呼ぶ。このトンネル内を長指屈筋、長母指屈筋、後脛骨動静脈、脛骨神経が通過する。打撲、捻挫などによって腫脹や炎症が起こるとトンネル内で脛骨神経を圧迫して種々の症状を起こすことになる。
足指、足底の疼痛、灼熱感を訴え、夜間痛を生じることもある。進行すると脛骨神経の知覚異常や足底筋の運動障害が生じる。
D 足関節捻挫
足関節が転倒などの際に外力を受けて、生理的範囲を超えた運動を強制された結果、靱帯、関節包などの組織の損傷を来した状態をいう。捻挫は足の内反によるものが多く、従って外踝周囲の前距腓靱帯、少子靱帯、後距腓靱帯の断裂を生じやすい。捻挫は組織の損傷の程度とそれに応じた適切な処置の有無によって、効果が左右される。
E 足底筋膜炎
長時間の立位での仕事や歩行によって、足底筋膜の炎症を起こし、足底部の疼痛を来すものをいう。痛みは、筋膜付着部の下での踵骨内滑液嚢炎、外傷性の骨膜炎または骨に付着している繊維の一部の断裂によることもある。
足底部の疼痛、歩行時痛、圧痛が見られる。また、長時間の立位によって徐々に疼痛が出現する場合もある。
足底部に限局した圧痛があれば本症を疑う。
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