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更年期障害 こうねんきしょうがい Climacteric Disturbance 女性が性成熟期から老年期へ移行する時期を更年期といい、閉経期前後の45〜55歳である。この時期に多くみられるさまざまな不定愁訴症候群をいう。更年期になると、卵巣の老化にともない、卵巣ホルモン(エストロゲン:→ 女性ホルモン)の分泌が減少するなどして自律神経系の働きがみだれ、さまざまな失調症状が出てくる。そして、平均50歳で生殖機能を消失する閉経をむかえたあとも、数年間つづくことが多い。一方、この年代は、子供の成長や親の死などといった家庭環境の変化、夫婦間のトラブル、体力の減退、老後に対する不安などからくるストレスや悩みも多く、このような心理的背景が更年期障害の誘因になることも少なくない。

  不定愁訴

不定愁訴としては、ホットフラッシュ(突然顔や上半身が熱くくなり、顔が真っ赤になったり、汗がダラダラと出てきて、動悸がし、その反面下肢が冷えたりする。)、発汗、熱感(ほてり)、冷え症、のぼせ、動悸(どうき)などの血管運動神経障害、頭痛、頭重感、めまい、不眠、憂うつなどの精神神経障害、しびれ感、神経過敏などの知覚系障害、頻尿、排尿痛などの泌尿器系障害、腰痛、関節痛、肩こりなどの運動器系障害など、多岐にわたる。いずれも自覚症状のみで、検査では異常がみとめられないのがふつうである。このため更年期症状の診断には、もっとも訴えの多い11の自覚症状を数値的に表現したクッパーマン指数(更年期指数)がつかわれることもある。これらの不定愁訴は、更年期の女性のほとんどにあらわれるが、感じ方や症状の程度は個人差が大きい。

男性更年期

女性と同様に、男性でも、加齢による男性ホルモンの低下から更年期がおこるという説がある。うつ状態、性欲低下などの症状がみられ、男性ホルモン補充療法もこころみられている。しかし、男性では、女性のように一律に性ホルモンの低下がみられるわけではなく、個人差が大きい。このため男性更年期という呼称をめぐっては賛否両論がある。




冷え症とは、身体のある部分が他に比べて冷たく感じる状態をいう。冷えを訴える部は、腰、下腹、下肢、足などが多い。多くの場合、冷えを感ずる部に一致した表面皮膚温の低下を見る。

 A. 内分泌と解剖学的構造からの冷え

 女性の冷え性は、腰から下が冷えるという訴え方をする場合が多い。一説によると、女性の60〜7%に冷え症が存在するといわれる。女性はこの冷え症を含め健常者でも肩こり、生理痛、頭痛、疲労などの不定愁訴を持つものが多い。この理由は、内分泌系の女性特有の解剖学的構造が原因として考えられている。思春期、分娩後、妊娠中絶後、更年期に冷え症の出現することが多く、又、卵巣機能不全の状態を呈すれば中年期にも見られ、それぞれの内部環境の変化が内分泌に影響を与える。一般的には、内分泌変動に基づく自律神経機能が主因に上げられる。又、骨盤部では、左総腸骨静脈を右の総腸骨動脈が分岐部で交差し圧迫する形を取るが、女性では、妊娠、分娩により骨盤内部に鬱血を生じやすくなり、月経前にも血流が内性器に集まるので鬱血が起こりやすいという問題がある。

 女性の冷え性の多くは機能性のものであるが、骨盤内鬱血状態は子宮発育不全、稀発月経、子宮内膜症の原因を作る。婦人科の器質的疾患で冷えを生じやすい疾患には、慢性子宮内膜炎、慢性卵巣炎、慢性卵管炎、子宮筋腫、子宮発育不全などがあることにも留意する。

 B. 自律神経失調症の心因性の冷え症

 自律神経機能の失調は、血管運動機能を障害する結果、冷え症を生じやすくなる。この場合は局部を皮膚温の低下を示すことが多い。一方、自律神経機能に異常が無く、基礎疾患も認められないときには心因の冷え症を考慮する。心因性のものでは、患者は症状に頑固に固執する傾向がある。

 C. 知覚神経過敏としての冷え症

 身体の末端の知覚神経が興奮していると、特に寒冷に対して過敏になるという節がある。神経痛、心臓病、婦人病などで生ずる神経炎に由来するとされている。

 D. その他

 内分泌疾患では粘液水腫、アジソン病(慢性副腎皮質不全症)で冷えが生ずる。低血圧、貧血では当然ながら冷え症になりやすい。また、バーちゃー病(閉塞性血栓血管炎)や間欠性跛行症の初期でも冷えの見られることがある。脳卒中後遺症では麻痺側に冷えを生ずる。糖尿病性神経障害では下肢の知覚異常と共に冷えを生ずることが多い。

 また、漢方医学の理論では、血液の流れが悪いと新陳代謝が阻害され自然に澱んできて、悪血となり、そのために悪血症として、冷えを生じたり、痛みやしびれ、圧迫感、精神的な不安等々の様々な症状を現す。





 生理的な月経とは、Menstruation ヒトなどの哺乳類で周期的におこる現象で、女性が妊娠をするための準備の一部。血液や、子宮内膜からはがれおちた細胞などが膣から体外にだされる(→ 生殖器系)。通常は10〜16歳の思春期にはじまり(初潮:初経)、45〜50歳の閉経期におわる。子宮の内膜は毎月厚くなり、妊娠しないと内膜はこわれて体外にでる。月経は3〜7日つづくがこの期間を月経期とよぶ。

月経異常

 月経前に不快感をあじわう女性は多い。月経期がはじまる1〜7日前に乳房が敏感になったり、むくんだりすることがよくある。はっきりした理由がないのに、頭痛、いらいら、神経過敏、疲労感、抑うつなどをおこす月経前緊張(月経前症候群)を経験する女性もいる。

また、月経期に下腹痛や腰痛、腹部膨満感などのいわゆる月経痛があらわれる月経困難症のひともいる。とくに初日や初めの2日間におきることが多い。月経前症候群や月経中の不快感は、かつては心理的なものが原因とされたが、ホルモンバランスの変化や子宮内膜症などが原因であることが調査の結果わかっている。




 瘍(しゅよう)。エストロゲン(→ 女性ホルモン)という卵巣ホルモンの働きが筋腫の発生・増殖に深くかかわっていると考えられているが、原因はまだよくわかっていない。筋腫の大きさは小豆大からフットボール大のものまで大小さまざまで、数も1個だけのときもあれば、数個から数十個できることもある。発生する部位は、子宮筋肉の中にできるもの(壁内筋腫)、子宮の外側にある子宮漿膜(しょうまく)にむかってできるもの(漿膜下筋腫)、子宮の内側にある子宮内膜にむかってできるもの(粘膜下筋腫)などがある。

筋腫が小さいうちは症状はあまりあらわれないが、ある程度大きくなると、過多月経や不正性器出血、月経痛などがみられる(→ 月経)。また、過多月経による貧血や、筋腫が周囲の臓器を圧迫して便秘や頻尿がおこることもある。不妊症や流産の原因にもなりやすい。

症状が重いときは、手術が必要となる。子宮全部をとる子宮全摘出術と、筋腫のみを摘出する子宮筋腫核出術とがある。後者は、若い女性などで妊娠の可能性をのこしておきたいときなどにおこなわれる。