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循環器疾患


 1. 高血圧症

 高血圧の診断は、血圧測定で行うが、血圧値は種々の要因で変動しやすい。WHOは日を変えた少なくても二度の機械で、少なくても三回の血圧測定を行うことを推奨している。この三回の測定が三分間以内に繰り返して行い、その中で最も低い直を採用する。
 WHOは成人の高血圧の基準を次のように定めた。
 正常血圧 140/90mmhg以下
(最高、最低血圧共に上記値を超えない)
 高血圧 160/95mmhg以上
(最高、最低血圧が上記値を超える)
 境界域血圧 正常血圧と高血圧の間一方、日本では次の値を取るときに高血圧と判定するものが多い。
 40才以上 160/90mmhg以上
 40才未満 150/90mmhg以上

 血圧値による高血圧の分類
 高血圧症の約、9割は本態性高血圧症であり、厳密には、良性の拡張期型の本態性高血圧症に分類されるものである。つまり、最低血圧が正常より上昇していても高値というほどではなく、最高血圧と最低血圧が共に上昇している病体である。これに対し、最低血圧(拡張期血圧)が著明に持続的に高いタイプ(拡張期圧120〜130mmhg以上)を悪性高血圧という。悪性高血圧は頭痛などの自覚症状が非常に強く、腎機能が低下して尿蛋白が出現する。この場合は緊急に強力な降圧治療を施す必要がある
 高血圧の者の血圧測定では、最高、最低血圧共に上昇するのが普通だが、中には最高血圧のみ上昇していることがある。これを収縮期高血圧症と呼ぶ。収縮期高血圧症で最も多いのが、大動脈のアテローム硬化によるもので、老人性変化の一兆項として、捕らえられるので、これを老人性高血圧症ともいう。老人性高血圧症は、これまで降圧治療は必要としないといわれてきたが、最近ではある程度降圧を図る方がよいといわれるようになった。
 最高血圧は深層出量の増える疾患、例えば甲状腺機能亢進症、貧血、発熱、大動脈不全症で上昇する。この場合は、原疾患に対する治療が必要となる。

 高血圧症の分類で、臨床上最も重要となるのが原因による区分である。高血圧をもたらしている原因がはっきり認められるものを症候性高血圧症といい、原因の良く分からないものを本態性高血圧症とゆう。
 症候性高血圧症の多くは原疾患を治療することにより高血圧を治療せしめることが可能であり、本態性高血圧は、生涯に亘って降圧剤を服用せざるを得ないケースが多いという意味では治癒の困難な高血圧である。

 A. 症候性高血圧症

(1) 腎性高血圧症

 腎機能が悪くなり、水やナトリウムの排泄が傷害され、体液貯溜のために高血圧となるもの。急性糸球体腎炎、腎不全が代表である。慢性糸球体腎炎も腎性高血圧に分類されるが、高血圧となる原因は明らかでない。尿検査で高度蛋白尿を見る。腎実質制疾患の既歴がある場合には本症を疑う。

(2) 内分泌性高血圧症

 a 原発性アルトステロン症

 副腎皮質に腫瘍が出来、そこから大量のアルトステロンが排泄されて生ずる高血圧。

 b クッシング症候群

 副腎皮質のコルチゾール過剰分泌による。肥満、満月様顔貌、多毛

 c 褐色細胞腫

 副腎髄質のカテコールアミン酸性腫瘍。痩せ、振顫、変動しやすい発作性の高血圧、多飲多尿、尿糖。

(3) 心臓・血管性高血圧症

 a 反大動脈炎症候群

 大動脈の一部が狭くなっているため、それより体幹側の血圧は高く末梢側が低くなる。血圧値が左右の上肢で異なったり、下肢の血圧の低下を見たりする。本症を疑うためには、上肢の血圧を測定するだけでなく、下肢も測定する必要がある。(下肢の血圧は上肢に比べて最高血圧で10〜40mmhg高くなる。最低血圧は上肢とほぼ同じ。マンシェットは、上肢用のものを用いることが出来る。後脛骨動脈でコロトコフ音を徴集する。聴診器には、小児用のベル式を用いると良い。)

(4) 神経性高血圧症

 手足の痺れ、痛みなどが主訴で高血圧は副次的。脳神経学的検査で異常を認めるので診断は用意。

 B. 本態性高血圧症

 本態性高血圧は、35才以上に発症するのが普通である。小児や青年期の高血圧症は、症候性を疑う。若い女性の高血圧は、先ず腎血管性高血圧を疑う。老人でも急に血圧が高くなったのであれば症候性が疑われる。

 本態性高血圧は、長期間同じような血圧値を取る。最近急に高くなってきたのであれば症候性高血圧である、腎動脈狭窄性を疑う。また、本態性高血圧は、初期を除き高いなりに血圧は安定している。間欠的に上昇するのであれば褐色細胞腫を考える。

 本態性高血圧は、ある程度遺伝性がある。両親とも高血圧の場合は、子供の約、半数が高血圧、片親が高血圧の場合は、約、3分の1が高血圧、両親とも正常血圧であれば子供の20%足らずが高血圧であったという報告がある。

 高血圧と嗜好品

 高血圧と塩分摂取量は密接な関係がある。その理由は、体内にナトリウムが増えるため体液量が増加することと、血管壁のナトリウム含量が増えるために血管が収縮しやすくなることの二つが考えられている。日本人の一日の食塩摂取量は15〜25gといわれ、これは欧米人の2〜3倍である。食塩は一日10gいかに抑えるのが望ましい。脂肪の摂取量が多いと動脈硬化の即、新因子となる。これは高血圧と絡んで、冠状動脈を上昇させ虚血性心疾患を生ずる要因を作り、また、脳血管障害を起こりやすくする。食事の総カロリー過常は肥満を作り、高血圧ばかりでなくいわゆる成人病を形成する環境を作る。


2. 低血圧症

 最高血圧が100mmhg以下の場合を低血圧という。低血圧は臨床的立場から次のように分類するのが普通である。

 体質性低血圧 
 愁訴のない低血圧のものである。低血圧自体は血圧正常者に比べても長寿の傾向があるため、特に治療を必要としない。

 症候性低血圧症
 急性一過性低血圧症と慢性持続性低血圧症に分けられる。単に低血圧症という場合には、慢性持続性低血圧症を指す。

 A. 急性一過性低血圧症

 心拍質量の減少や末梢循環不全によって生ずる。前者の原因には急性心筋梗塞、発作性頻拍、鬱血性心不全などがあり、後者には急性出血、激しい下痢、嘔吐、火傷、急性熱性疾患、腸閉塞、諸種急性中毒などがある。
 急性のものは低血圧のゲインが明らかに推定できるので、症候性に属する。ショック症状などがある。

 B. 慢性持続性低血圧症

 慢性伝染病、癌などの悪液質や肝硬変、重度貧血、アジソン病(慢性副腎皮質不全症)、シモンズ病(下垂体性悪液質)、甲状腺機能低下など、

 C. 本態性低血圧症

 本態性低血圧の要因には遺伝体質、生活環境、そして自律神経系、ホルモン系の異常などがあられるが、真の原因は明らかではない。体質は無力性で、体型は細長型の長寿家系が多く、両親のいずれかに同様の症状を示すものが多い。本態性低血圧症のものは、多彩な症状を訴えることに特徴がある。
その症状としては、倦怠、肩こり、頭痛、頭重、耳鳴り、動悸、立ちくらみ、便秘、心窩部痛食思不振など。他に記憶力や作業能力の減退なども訴える。

 d. 起立性低血圧症

 臥位から立位又は座位に体位を変えたり、長時間起立していると血液は重力により下半身に集まり、心臓に向かう静脈の灌流は減少するが、通常は神経反射気候の働きで余り変化を受けない。健康なものではその収縮気圧は20mmhg、拡張期は5mmhg以内であり、心拍数は1分間27以内である。しかし、これに障害があると血圧は低下し、脳・心への血流が減少し、眩暈視力障害、嘔気が出現し時には失心することもある。
 本症には症候性と本態性がある。
症候性起立性低血圧を生ずる疾患は各種中枢性疾患や糖尿病をはじめとする内分泌疾患などでその数も多い。代表的なものには脳血管障害、糖尿病、梅毒がある。高血圧患者で血圧降下剤特に自律神経遮断剤を服用しているときも本症になることがある。
本態性の起立性低血圧症は、特別の器質疾患はなく、自律神経失調特に末梢血管運動神経失調のために循環調節障害を起こす状態である。その症状としては、顔色不良、食欲不振、疲れやすい、頭痛、乗物酔いなどの他に、下肢痛、睡眠障害、学業成績低下などを伴うこともある。