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晴天の五竜岳山頂に立つ


 計画の当初は5名のパーティで山行をする予定であったが、山行直前になって2名が参加できなくなり結局、私たち夫婦とまだ新婚の湯気が立っているSさんとの3人のパーティで五竜岳の山行を実施することになった。

 私たち夫婦は以前にも同じゴールデンウィークに今回と全く同じルートで五竜岳の山行を実施したが、五竜岳山頂の直下で強風のために撤退した苦い経験がある。今回は久しぶりのリッベンジの山行である。

 山行日   2002年5月4日(土)〜5日(日)〜6日(月)
 山行先   五竜岳(2814,1M)〜唐松岳(山域 北アルプス)
 天 候   4日 雨 5日 雨のち晴天 6日 快晴


5月3日〜4日

【行程】

新宿(11:50・アルプス号)→神城(5:31着・朝食)―徒歩→テレキャビン駅(6:30〜8:15)―テレキャビン→アルプス平(8:50発)→地蔵の頭(9:15)→小遠見山((10:40)→中遠見山(11:20)→五竜岳山荘(15:00) 宿泊  (-.-)Zzz

【感想】

 1時間も待ってテレキャビンに載りアルプス平に降り立った。ここで雨具、ロングスパッツ、アイゼンなどを着用して、これから長い遠見尾根の登山の開始である。雨は大降りではないものの間断なく降り続いている。私は元来晴れ男なのだが今日はあいにくとスタート地点から雨になってしまった。それにしても今年は雪が少なくテレキャビンの車窓から見ると途中の斜面は黒い土の箇所が目立っていた。

 緩い登りを時たまスキーヤーが横切る箇所を地蔵の頭に向かうって歩を進める。本当に久しぶりのビックな山行なので気分も高揚して今年は絶対に五竜岳の山頂に立ってやるぞと歩く足取りも自然と力が入ってしまう。20分も歩いただろうか、地蔵の頭にほどなく到着した。何と名前の通りにお地蔵さんが鎮座しているではないか。これからの山行の無事を願いまた、歩を進めていくと何だかお線香の香りがしてきた。おかしいなと辺りを見渡すと7,8人の男女が無心に祈っているではないか。きっとこの冬山で誰か身内の方が遭難をして、この連休に一般の方でも登れるところまで来て、遭難者の御霊に祈りを捧げているのであろう。一寸しんみりとした気分になってしまったが、私達はソンなことにならないようにとお互いに話ながら段々と斜度がきつくなってきた雪道を靴の音をザックザックとたてながら快適に登っていく。

 小遠見山を中心とした遠見尾根は、とにかく長くて登りもきつく辛いコースである。最初の足取りから比べると段々と軽快さが無くなり、踏み出す足も心なし重くなってきた。雨はここら当たりに来るとかなりの大降りになってきて、身体は汗と雨とでもう、すっかりとびしょぬれの状態で、これで風でも強かったら本当に最悪であるが幸にも風は穏やかで春風が優しく頬をなでていく程度である。

 視界は無くガスにもやった空、そして白銀の白一色の山道をザックの重さを感じながら上へ、上へと歩を薦めて行く。ここら当たりから段々とSさんの足取りが遅くなってきて、私達二人との間が開いてきてしまった。それにしても和美は本当に健脚である。私も和美について行くのがやっとで負けてなるかと懸命に離れてはなるかとついて行くもののむなしい抵抗で3メートルぐらいは離れていってしまう。

 そんな小遠見山、中遠見山を何とかクリアをして、ジャーンジャーン、今日のメインイベント、白岳の急登にさしかかってきた。前回来たときには確かトラバースをして五竜岳山荘に飛び出たのだが、今回はピークを踏んでの急登となり、ピッケルを持つ手にも力が自然と入ってしまう。かなりのきつい斜度でアイゼンの前爪をがーんとけり込んで、ピッケルもエイヤーッと勢いよく雪面に突き立てないと登のがなかなか登れない。Sさんを見てあれば遙か彼方をよろよろと登って来るではないか。これらの長いコースを考えると少々心配になってきた。雨は大粒となり急登との悪戦苦闘の連続で足が疲れてきて棒のようになって、息も乱れてまさにここが正念場のクライマックスの所である。Sさんの姿形は全く見えなくなってしまった。正直、いらいら半分、心配半分で不安になってきて、大声で「おーい、おーい、Sさん」と叫ぶが声は帰ってこない。
まさか私達もこの斜面を降りて迎えに行くことも出来ずに心配しながら20分も待っていただろうか。ガスに煙った中からSさんが見え始めた。これで私達も安心して彼を待って、後一登りしてようやく今日の宿泊場所の五竜岳山荘に到着した。

 五竜岳山荘のドアをよろよろしながら開けるとすかさず「金川さん」と威勢の良い声が出迎えてくれたではないか。それは何と既に顔を赤らめている京極さんであった。京極さんはスポニチ登山学校の同期の方々と19名で唐松岳から五竜岳へと私達とは全く逆のコースを縦走してきたのだそうである。既に五竜岳山頂も踏んで余裕綽々で大勢の仲間達と雑談をしていた。しかし、計画はお互いに知っていたが、改めて山での再会は本当に感激ものである。

 それからスポニチ軍談と一緒に飲んだり、歴史探訪雑話、山の話等々に話が盛り上がり、私もすっかり良い気持ちになって楽しい一時を過ごさせてもらった。やがて夕食のカレーを食べて何だか疲れと酒とで瞼が自然と閉じてきて8時30分頃であろうか、早々に寝床に入ってしまった。

5月5日

《行程》

五竜岳山荘(13:00)→五竜岳山頂(14:15)→五竜岳山荘(15:25)

【感想】

 夜中のとんだハプニングなどの珍事件があったりして、5日の朝を迎えた。夜中からものすごい風の音がして、今日は外は猛烈な風が吹いている。おまけに雨も結構降っていて最悪のお天気だ。これでは五竜岳山頂を登って唐松岳山荘に今日は行く予定だが、どうもこの強風ではまた、五竜岳の登頂は難しい漢字である。「ぴゆー、ぴゆ、ーぴゆー」ととにかく風のコーラスがものすごい音でこれからの私達の行動を牽制しているかのようである。今回の目的は唐松岳の登頂であらず、あくまでも五竜岳登頂であるから何としてでも山頂を踏んでみたいものである。

 和美の決断で五竜岳山荘に連泊してこれからの天気の様子を見ることにして、小屋の方に天気の様子を聞いてみると今、前線が南下しているので荒れているが午後からは急速に回復するのではないかとの答えだったので、すっかりと腰を落ち着けて午後から天気が良くなったらとりあえず五竜岳に行くことにして、先ずはこれから下山をする京極さん達スポニチの面々を見送ることにした。

 スポニチ軍談の19名の出発となるとそれぞれ支度も大変で思い思いに雨具をつけたり、アイゼンをつけたりして下山の支度に取りかかっている。何でもトラバースコースを下山するのだそうである。京極さんと固い握手をして見送った後でどうせ今日は一日停滞するのだからとワインを早くも飲んで良いご機嫌になって、外を見ると相変わらず風は強いものの雨はほとんど止んできた。これなら午後から五竜岳に行けるかも知れないと望みがわいてきた。

 出発を午後1時として小一時間ばかりアルコールを抜くために昼寝をすることにした。一寝入りして起きてみるとななな何と日が射しているではないか。が小躍りして早速支度に取りかかって小屋の外に飛び出た。風はまだかなり強いもののさんさんと日が射しており絶好の登山日和になってきた。今年は本当に雪が無く全くの夏道でアイゼンも雪壁の所だけで良いのではないかと思われる。

 途中の風の通路になっているところはさすがにものすごい風で身体が押し倒されそうになるが、脊をかがめて急ぎ足で通過する。そんな風との戦をしながら岩稜帯を通過し、いよいよ今日のハイライト、20メートルの雪壁に到着した。やはり、迫力がどーんとおおいかぶさって来るようで思わず緊張して、ピッケル持つ手にも力が入る。正直、雪山でのこんな雪壁の登りは初めてであるから、自然と身体にも力がわいてきて「よし、やってやるぞ。」と闘志をみなぎらせてピッケルを根元まで入れてアイゼンのデッパを思い切りけり込む、そんな繰り返しで高度をかせいで登っていく

 そんな繰り返しをしながらどーんと山頂に突き出た。本当に待った会があって空は快晴で北アルプスの山々鹿島槍ヶ岳、槍ヶ岳、奥穂高岳、網干さん達が多分登っているだろう、北穂高岳、こちらを見れば唐松岳、白馬三山等々の山々が四顧の間に白銀に輝いて見えるではないか。本当に360°の素晴らしい展望である。まさに神々の住んでいるようなこの神秘なたたずまいと荘厳な感じは自然のまさに神秘とも言えるのではないか。

そんないつまでも見ていても飽きない風景であるが、記念写真を撮ってから山頂に別れを告げて、今度は今来た雪壁の下山である。一応ザイルは持ってきたが使わずに降りられそうなので、慎重に一歩、一歩下っていくことにしたが、どうも私は視力がないためか前向きでは怖い感じが先に立ってしまって前から下ることが出来ないので、クライムダウンで降りることとした。これなら少しも怖くなく且つ早く降りられるので安心である。Sさんは後からやはり、怖いのか何とも言えないような感じでビクビクしながら降りてくる。

 そんな雪壁の下りも終わり意気揚々で小屋に帰ってきた。早速ビールで乾杯をして、満足感にお互いに浸りながら窓外の景色をサカナにビールの喉ごしの冷たさに至福の時を十分に味わった。

 5月6日

《行程》
五竜岳山荘(6:40)→唐松山荘(10:10〜10:35)→八方池(12:35)→八方池山荘(13:20)→リフト→ゴンドラ→山麓駅→白馬八方温泉→白馬駅(17:10・スーパーあずさ号)→三鷹

【感想】

 今日は朝から穏やかな日がさんさんと辺りの山々を照らしながら優しく私達の下山に何だか心配りをしてくれているようである。振り向けば五竜岳の雄志がどーんと空に向かって突き出ている。五竜岳よ。今日でお別れだ。今度はいつ来れるだろう。おそらく体力も無くなってきているから、もう来れないかも知れない。そんな淋しい考えにとらわれて疲れた足に活を入れて歩いているが、どうも今日は息が切れてしょうがない。少し登ってははーはーハート
荒い呼吸になってしまう。今日はどうも体調が悪くて、昨日思うように睡眠が取れなかったので体がだるくて活力が沸いてこない。

 それにしても全くの夏道でアイゼンは全く必要ない状態である。空ではイワヒバリが別れの挨拶をして無事で下っていけよとばかりに盛んに鳴いている。
 クサリ場の連続の牛首尾根もどうやら無事に通過して、ようやく唐松小屋の前に出た。ここで昼食をとってから下山をすることとした。唐松岳は温泉にゆっくり入るためには時間的にも無理なので今回はパスをして一気に下山をすることとした。途中は雪の大平原という感じでドンドント下って行く。八方池は雪が積もっており見えないがその代わりに白馬岳の勇姿や鹿島槍ヶ岳の双耳峰が見事なコントラストで澄んだ空に白銀に輝いて見える。

 何年前か3月の雪の時に網干さん達と来た八方池山荘の前を通って、リフトに2回乗り継いでゴンドラで山麓駅に降り立ちお目当ての白馬八方温泉で汗を流して、駅前の食堂でビールで乾杯してご機嫌であずさに載り3日間の充実した山行に満足して帰途に着いた。  オシマイ  (#^.^#)